ライターとしての収入が年に800万円を超えるというmega3さん。
全くの初心者でライティングの仕事を始めて5年目にして、なぜそれほどの収入を得られるようになったのか。そこには、夫が突然、病気で倒れ、自身が大黒柱になる、という予想外の出来事もありました。
夫の病気で突然自分が大黒柱に…
―ご夫婦2人暮らしで、今はmega3さんが大黒柱で働かれているそうですね。
そうなんですよ。夫が37歳の若さで突然、心筋梗塞になってしまって…。
手術や入院をして、幸い大事には至らなかったんですが、退院後も慢性心不全という病気が残ってしまいました。それで仕事ができなくなってしまったので、代わりに私が働いて、というところです。
―びっくりですね…。
ほんとに、こんなことあるのか、って感じで。全くの予想外でした。
―mega3さんはライターということですが、どのようなお仕事をされているのですか?
ライティングの仕事はクラウドソーシングをきっかけに始め、5年目になります。
今は直接契約と、クラウドソーシングの併用で年に800万円ほど稼いでいます。
内容としては美容系が多いです。化粧品のランディングページの文章を書いたりなどでしょうか。
ほかにも、お客さまへのサンクスメールを書く仕事とか、ランディングページに掲載する漫画のネーム(絵コンテ)を書くような仕事もやっています。
―そんなお仕事もあるんですね。
子どものころ、なりたかった漫画家さんに、こんな形で近づけるとは自分でも驚きです。
商品を売るためのランディングページなので、普通の漫画家さんより、セールスライティングの知識がある私の方がクライアントさんにとってはいいみたいです。
―旦那さんが倒れるなんて大変だったと思いますが、収入を得る手段があったのは良かったですね。
本当に。専業主婦だったり、扶養の範囲内で、という働き方をしていたりしたら、今ごろどうなっていたんだろう、って思います。
夫が倒れる前は、私だけの収入でだいたい月に30万円ぐらいでした。何とか夫婦2人でもやっていけそうなぐらいは稼いでいたのですが、不安定な仕事なので、やっぱり心配もあって。
でも、夫が働けない分、私が仕事しなきゃ、って覚悟を決めたら、どんどん仕事が増えて自然と月に50万、60万ぐらいは稼げるように。
そのうち月の収入がコンスタントに70万円ほどになったので、今は年収で800万円を超えるぐらいになりました。
クラウドソーシングと直接契約、両方のメリットを生かして
―それにしても、800万円ってすごいですね。
頑張ったんですよ(笑)
―SNSなどで収入の高いライターさんのつぶやきなどを見ていると、“都市伝説”かと思っていました…。
ですよねー。私もクラウドソーシングを始めたころ、年収800万円のフリーライターさんの存在を知って「本当かなー?」と思っていたんですけれど、意外に夢じゃなかった、という感じです。
―収入の内訳って、どういう感じですか?
クラウドソーシングでは月10~20万円程度ですが、自分で営業して、直接契約した仕事の収入が月60~70万円という感じですね。
クラウドソーシングでは「文字単価4円以上」としていて、ほかのライターさんに比べると高い金額を提示していると思います。
でも、高い品質でその金額なので、結果的にクライアントさんの収益につながっているようで喜んでいただいています。
―直接契約の仕事をし始めたきっかけは?
クラウドソーシングでライティングの仕事を始めて2年半ぐらいしたころ、ある程度、稼げるようになったのですが、ふと、私ってライターとして一人前と言えるのかな、と急に不安になったんです。
クラウドソーシングって自分で営業をしなくても仕事を見つけられるし、見積書や請求書といった書類のやりとりもないし、何か困ったときがあれば相談できるし、守られている部分が大きいと思うんですよ。
そのおかげで、初心者だった私でも仕事をしてこられたのですが、自分のスキルがクラウドソーシング以外でも通用するのかは分からなくて。
それでお試しのつもりで、ライターを募集している会社を見つけてメールすることから始め、直接契約のお仕事を増やしていきました。
―なるほど。クラウドソーシングと直接契約、両方を経験した立場として、それぞれのメリットやデメリットってありますか?
クラウドソーシングだと手数料が引かれるので、同じ仕事をしたとしても、手取りの金額が少なくなります。なので単純に考えれば、直接契約の方が稼げることになります。
でも直接契約だと書類のやりとりなど事務的な作業をやらなければいけないし、急に発注者と連絡が取れなくなった、などトラブルが発生しても自分で何とかするしかありません。
そのための手数料だと考えれば、どちらにもメリット、デメリットがある、という感じですよね。 あと直接契約を結んで、対面での打ち合わせとなると、私の場合は東京近辺の会社で日中に会いましょう、となります。
その点、クラウドソーシングを使えば24時間いつでも、日本全国の会社が募集している仕事に応募できるのは便利ですね。
ちょっと手が空いたときに、ササっとタスク形式の仕事をこなすこともできるので、今もクラウドソーシングは併用して続けています。
参考にできるものは何でも読みあさった
―クラウドソーシングでライティングの仕事を始めたころのお話を教えてください。
最初は信用金庫で勤めていたのですが、結婚後に退職。
それで接客などのアルバイトをしながら、空いた時間に何かお小遣い稼ぎをしよう、ぐらいの感覚でクラウドソーシングのサイトに登録しました。
文章を書くのが特別、得意だったわけでもないのですが、使った商品の口コミや、食べたもののレビューを投稿するぐらいなら自分でもできるかな、って。
そんな感じだったので、始めたころは3カ月で1万円ほどの収入だったと思います。
でも半年ぐらいたったら、月に5000円、1万円…と、収入が右肩上がりに増えていったんです。
だったら在宅でできるライティングの仕事一本でいこうと思い、アルバイトは辞めました。
―そのころ、なぜ収入が増えていったと思いますか?
最初の3カ月間ぐらいは、とにかくタスク形式の案件を山のようにやっていました。
タスク形式の仕事って、作業を開始したら、制限時間以内に書き上げなければいけないルールなので、時間内に何とか終わらせようと頑張っていたと思います。
その結果、的確な内容や構成の文章をスピーディーに仕上げるというスキルが身についたかもしれないですね。
数をこなしていくうちに、クライアントさんが求めていることや、ジャンルの違いによる書き分け方法などがつかめた気がします。
―ではその後、プロジェクト形式の仕事にチャレンジを?
タスク形式で何となくライティングのお仕事の感覚がつかめてきたので、じゃあ、実績が残るプロジェクト形式の仕事にチャレンジしてみようかな、って。
あとプロジェクト形式の案件だと、レギュレーションがしっかり決まっているので、作業前には記事の書き方やルールについて資料をいただけるんです。
そこにはライティングの基礎的なことが書かれているので、読み比べたら勉強になりました。
なので、最初のころは新規の単発案件を狙って、案件ごとに資料やレギュレーションを読みあさり、クライアントさんの意図すること、媒体によるニーズの違いなどを勝手に研究していました。
比べていると「なるほど、スマホで読むことを想定しているからこの文字数なんだ」とか、いろいろ見えてくるものがあったんですよ。
―研究熱心ですね。
気持ち悪いと思われるかもしれませんが(笑)、クラウドソーシングのサイトに登録されているライターさんやデザイナーさんのプロフィールを全員分、上から順に見るようなこともしていました…。
―ええっ!!どうしてですか??
変な人と思わないでくださいね(笑) プロフィールを読んでいくと、結構、知らない単語が書かれていたんですよ。
例えば、文字起こしをしている方だったら「ケバ取りします」って書かれていて、「ケバ取りって何?」みたいな。
ライターだったら「サテライトページ記入の経験があります」とか「ランディングページはできません」とか書かれていて、「サテライトページと、ランディングページの違いは何?」と思って調べる、みたいなことの繰り返しです。
そうやってたくさんの人のプロフィールを見ているうちに、知らなかった業界用語や求められているニーズみたいなものが、だんだん分かってくるようになったんです。
―そういう意味では独学で道を切り開いていかれたんですね。ちなみに、お手持ちの本は、『記者ハンドブック』ですね。私も新聞社に入社後、まずこれを渡されました(笑) やはり、いろいろな面で役に立ちますか?
はい。誰かのプロフィールに『記者ハンドブック』について書かれていて、それで真似して買ってみたんです。
一応、一つの目安となる書き方のルールがまとめられていて、漢字表記にするか・しないか、など参考になることがたくさんあります。
―そうですよね。私もいまだに使っています。ほかに、このテキストは何ですか?
これは美容系のお仕事が増えてきたので「スキンケアマイスター」の資格を取ろうと思い、勉強に使ったテキストです。
ネットで調べた知識だと偏りもあるし、信ぴょう性も疑わしいので、公平な目で化粧品成分についての正しい知識や、法律の知識も身につけたいなと勉強しました。
―その資格はお仕事の役に立ちましたか?
はい。民間資格ですが、資格を持っていることでクライアントさんからの信頼感は高まったと感じています。やはり美容系の記事や広告においては、薬機法(旧薬事法)や景品表示法などについて、しっかり理解していることが求められていますから。
“こたつデスク”で快適な毎日
―今、ライティングのお仕事だけで高い収入を得ている背景には、案件の数を相当こなしている、ということもあるのでしょうか?
はい、一日中、仕事はやっているかもしれないですね。
うちはリハビリを兼ねて、夫が家事や買い物など家のことをやってくれるので、私はひたすら仕事に没頭できるんです。
まあ、たまに動画を見たり、夫と一緒に“マインクラフト”のゲームををしたりしていますし、毎日8時間は寝ていますが。仕事をするのは自宅の“こたつデスク”で快適!というのもありますね(笑)
―“こたつデスク”!
最高ですよー。こたつの上にデュアルモニターを並べて、使うものは全部、立ち上がらなくても届く範囲に置いています(笑)
コーヒーを飲みたくなったら、バリスタのスイッチをポチッと押して。
“こたつデスク”で私の世界が完成されているので、全然、カフェで仕事をする“ノマド”には興味がないんです(笑)。
―ずっとやっていて、考えが煮詰まりませんか?
私の場合、いくつかの案件を並行して受けているので、煮詰まってきたな、と思ったら、別の仕事をして気分を変えるようにしています。
やればやるほど収入につながる、というのもあって、ほかのことをやるより、仕事の内容を変えて気分転換している感じですね。
自分にしかできない仕事をする
―ライターさんって本当にたくさんいて、その多くはどうやって安定的な収入を得ていくのか、模索していると思うんです。何かアドバイスみたいなものはありますか?
誰にでもできる仕事だと、それなりの単価になるのは仕方ないですよね。
やっぱり、誰にでもできるわけではない仕事をするから、収入も増えていくのかなって思います。
―誰にでもできるわけではない仕事って、具体的にどういうことだとお考えですか?
ライティングスキルが高い、というのはありますが、納期を守るとか、体調が悪くて進行に支障が出そうなときは早めに連絡して相談するとか、社会人の常識、みたいなことができていない人も意外に多いようなんですよね。
当たり前のことを当たり前にするだけで、確実に一つの評価につながる気がします。 あとは私の場合、自分から提案をしっかりするようにしています。
これまで、いろいろな案件をやってきているので、クライアントさんのニーズに沿った記事の内容や、はやっている記事の傾向などを提案できるんです。
そういう提案や意見交換がありがたい、と言ってくださるクライアントさんは多いですね。
―普通だと、レギュレーション通りの内容で原稿を納品したらそれで完了じゃないですか。それ以上のことをするのはどうしてですか?
そうなんですよね。ライターの立場だと、記事を納品したら終わり。
でも、クライアントさんにとっては、収益を出せるか、PVが上がるか、など成果が問われるのは記事を公開してからなんです。
だからこそ、ちゃんと結果を出すためには、ライターの側から意見したり、提案したりするのも必要なコミュニケーションだと思っています。
もともと信用金庫やアルバイトで接客業をしていた経験が、お客さんのことを第一に考えて仕事をする、というのに役立っているかもしれません。
―初心者でもmega3さんみたいになれますかね?
なれますよ!それだけは知ってもらいたいです。仕事を始めて5年目で年収が800万円になるって、結構すごいことだと思うんです。
今は依頼があふれかえっていて、断っているぐらいなので、まだまだライティングはニーズのある仕事だと思います!
取材・文:吉岡名保恵
信用金庫で勤務したのち、結婚を機に退職。アルバイトと並行してクラウドソーシングを始め、ライティングの仕事をこなす。今はライティングに専念し、直接契約の仕事も含め年収800万円を実現している。得意分野は美容系記事で、スキンケアマイスターの資格を所持。プライベートでは夫と2人暮らし。病気で働けなくなった夫の代わりとして、家計を支える存在。