独立は興味を持った複数のテーマに取り組むための手段:高木新平さん

「既存の枠組みに囚われず、独自の視点でテーマに取り組む」手段としての独立

「人々のライフスタイルをどのようにデザインするか」に興味があり、学生の頃は服作りをやっていましたが、自分はアーティストではなくプロデューサー気質であることに気がつき、社会に対して様々な領域から提案できるコミュニケーションに興味を持ち、新卒で広告会社に入社しました。

ところが、入社した頃からtwitter、Facebookが浸透し始め、個を中心とした情報の流通インフラが整う中で、生活におけるコミュニケーションの在り方の変化を肌で感じました。急激な環境変化と現状の代理店業務のギャップに悩みながらも、新規事業の提案や社外プロジェクトへの挑戦など自分なりに試行錯誤していました。それでも自分が一生活者として感じるワクワクするライフスタイルと、いわゆるマスメディアが前提にするそれとの間で気持ち悪さは増していくばかりでした。

そんな中で起こった3.11の震災。「お前はこれからどう生きていくのか?」を強く問われている気がしました。震災から1ヶ月ほどして退社することを決め、その準備として生活コストを下げながらも、定期的に様々な人と交流できる場となり得るシェアハウス「トーキョーよるヒルズ」を構想し、実行しました。

シェアハウスを始めてから2ヶ月後に会社を辞めました。次にやる明確な仕事があって、独立したわけではありません。僕は自分の中に多様な価値観があることを認めており、自分が興味を持ったテーマにジャンルや既存の枠組みに捉われずに取り組んでいきたい。それを実現する手段として、会社員ではなくフリーランスという立ち位置の方が今は望ましいのではないかと考えた結果です。リスクを取れる若いうちに、後悔ないように自分の直感を信じた挑戦をしていきたいと考えています。

枠組みから脱却した文脈起点の思考で新しいスタンダードを創りたい

今取り組んでいる主な活動は、僕が住んでいる「トーキョーよるヒルズ」の編集長として、家をコミュニティ型メディアにするという実験をしており、最近では独自の方法論で未来を切り拓いている20名を集め、「よるヒル超会議」という名のもと、ライフスタイル革命を語るイベント型の企画をプロデュースしました。

他にも、Livertyという自由な働き方を実践する組織の骨子づくり・立ち上げや、One VoiceCampaignというインターネット選挙運動解禁に向けた社会運動などを展開しています。世の中に新たなライフスタイルを提示したいという軸でこの3つは共通していますが、ジャンルは全く異なります。自分が興味を持ったことに対して、複数のプロジェクトに同時並行で取り組めるのはフリーランスの利点だと思います。この3つの活動は自らの収益性などを気にせず、想いのままに取り組んでいます。

実際にお金を稼いでいる仕事は、サービスや企業、人のブランディングです。何の為にこの世に存在し、どのような価値を生み出していくのか。そこに紐づく過去や現在、未来への想い、または関係者の気持ちを整理して、コンテクスト(文脈)を紡ぎ、イメージを構築していく。その役割を「コンテクストデザイナー」と定義し、その肩書きを僕は名乗っています。

文脈を起点に志向を重ねることで、枠組みに縛られた発想ではない独自性のある発想ができると考えています。真似できない独自のコンテクストを生み出す人が新たなスタンダードを作れると信じていますし、それは僕の全ての活動に共通している基本的な考え方です。

面白くて一緒に仕事したいと思ってもらえるような人になりたい

僕はいま、コンテクストデザインを思考の中心において様々な活動をしていますが、貪欲に自分の領域を開拓し続けたいと思います。フリーランスとして生きる理由は、自由な時間が欲しい訳でも、会社の一員でいることが嫌な訳でもなく、自分が興味を持ったテーマに、枠組みや稼ぎを気にすることなく、自分で選択し、取り組み続けたいからです。

その一方で、独立してから悩むことは増えました。例えば、会社で働いていたときのほうが自分で意思決定する領域が狭く、自分が考えなくても毎日は進んでいました。個人になってからは、無限の可能性があるカレンダーを1つ1つ埋めるところから考えなければならず、自分としての意思決定の数がかなり増えたと思います。

ただ、その領域の広さがフリーランスの魅力の一つではあると思います。意思決定には責任が伴いますが、「自分がやっていることだ」と全身を張って取り組めるので、日々生きている実感があります。逃げることができないからこそ、自分と向き合って、前を突き進んでいけると思っています。

まだまだ知識も経験も未熟ではありますが、自分という人間を面白いと思ってもらい、「一緒に仕事しないか」と声をかけられるような存在を目指します。そして、自分にしかない価値提供を1つでも多く創り出していけたらいいなと今日も頑張っています。