Xリーグの広報担当、元アメフト選手のフリーランスが語るライフワークとは

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フリーランスとして写真や動画の撮影・編集、web制作やSNS管理などを手がける中野貴裕さん。仕事の傍ら、ライフワークとして続けているのは、日本社会人アメリカンフットボール協会の広報活動です。アメフトへの熱い想い、そして仕事のこれからについて、お話をお伺いしました。

 

選手たちの頑張りを伝えたい

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フリーランスとして映像やwebまわりのお仕事をしながら、スポーツ団体の運営もお手伝いされているそうですね。 

はい。日本社会人アメリカンフットボール協会(以下、社会人アメフト協会)の事業部に所属し、広報関係を主に担当しています。

 

―アメフトとの関わりはいつからですか?

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アメフトは高校生のときに始めて大学、社会人チームでプレーを続けてきましたが、28歳のときに怪我などが理由で現役を退きました。その後は社会人チームのコーチになり、仕事で名古屋に引っ越してからは「キリックス豊田ブルファイターズ」で指導していました。

 

社会人アメフト協会でのお手伝いとは?

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「キリックス豊田ブルファイターズ」ではヘッドコーチをしていたので、監督の代わりに社会人アメフト協会の会議などに出るようになりました。そのうち社会人アメフト協会の人たちと顔見知りになり、協会の運営もボランティアで手伝うようになったんです。その後、コーチは辞めて去年からはどこのチームにも属さず、社会人アメフト協会の仕事だけを手伝っています。

 

社会人アメフト協会のお手伝いは、どのようなことをされているんですか。

広報関係では「Xリーグ」というトップリーグのプロモーションをお手伝いしていて、HPやSNSで試合予定のお知らせをしたり、結果速報を流したりしています。プロモーション映像や販促物を作ることもあります。

 

活動はボランティアですか? 

所属する社会人アメフト協会の事業部は、アメフトを観戦型のスポーツに変えていこう、ということで2年前に立ち上がったばかりです。自分はフリーランスで平日でも時間を調整できるので、広報以外にもスポンサーを取るために営業したり、飲食屋台の出店打合せ、テレビやネット中継などの打ち合わせに行ったりしていますが、基本的にはボランティアで動いています。

 

ただ昨年からは、プロモーション映像など社会人アメフト協会の依頼で制作をしたものに関しては報酬をいただけるようになりました。

 

悩みどころと思うのですが、自分の時間を使って本業と重なる作業をボランティアでするのって、大変じゃないですか?

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僕も当初は、ボランティアでプロモーション映像を作っていたのですが、それなりの時間を使うので仕事との線引きが難しく、ストレスに感じることもあったというのが正直なところです。「アメフトのためにいいものを作りたい」という想いはあっても、ボランティアには限界がありますから。

 

ボランティアで始めたにも関わらず報酬がもらえるのは、ありがたいですね。

社会人アメフト協会内で目上の方からは、ボランティアで成果を出すことを求めるのではなく、お金は払うから「お前が倒れていなくなっても、ほかの人が続けられる仕組みを作っておけ」と言ってくださることが多かったので本当にありがたかったですね。

 

とはいえ、お仕事と両立させていくのは大変な面もあるかと思いますが、ボランティアを続ける理由は何なのでしょうか? 

自分自身がアメフトを通じて良い経験をさせてもらったので、もっとメジャーなスポーツにしたいと考えています。愛好者だけが盛り上がるのではなく、たくさんのお客さんが試合会場へ足を運び、楽しんで観戦できるスポーツにしたい。たとえば動画やチラシなど成果物を作るのはいいけれど、作って終わりではなくて、もっと一般の人の目に触れてほしいんです。ファンしか見ない、というものではなくて。

 

そのために中野さんが得意なことを活かして、アメフトに貢献したい、と。

選手たちの頑張りを伝えたくて、生い立ちからクローズアップするようなドキュメンタリー風の動画を撮ったこともあります。去年は選手たちに特撮ヒーローに扮してもらった動画を作りました。今までなら、特撮ヒーロー風の動画を作るなんて、あり得なかったですけれどね。

 

夢叶う Xリーグ(ドキュメンタリー風)


スペシャルムービー「夢叶う~竹内編~」

 

週末ヒーロー WEEKEND X(ヒーロー物)


X劇場 外伝 ~Weekend X SUPER WEST篇~

 

あとtwitterもアカウントを開設したまま、ほったらかしだったんです。それを僕が去年から更新をするようになって、試合の速報をつぶやいたり、ダイジェスト動画を流したりしました。いろいろな形でファンを増やし、喜んでもらえるよう試行錯誤しています。

 

予算の範囲内という制約はあるので、やりたいことを全部やれるわけはないのですが、取捨選択しながら優先順位をつけて、一つ一つ実行しています。

 

社会人アメフト協会の活動は、ライフワークみたいなものでしょうか。

社会人アメフト協会全体の広報を担当するようになって、チームの分け隔てなくフラットな関係で選手たちのことを見られるようになりました。選手たちは、みんな仕事をしながらリーグ戦に参加していて、本当に頑張っているし、”十人十色”それぞれドラマを持っています。そういった選手のためにも、もっとアメフトの人気が出てほしいです。そのためなら、僕はこれからもできる限りの力を尽くしていくつもりです。

 

独学で自分のECショップを作ることからスタート

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フリーランスで動画やweb制作を手がけるようになった、きっかけや経緯を教えてもらえますか。

いろいろ変遷があるんです(笑) 大学は京都だったんですが、卒業後は東京に行き、損害保険の会社で勤めていました。会社員になったけれど、そのうち「自分で何かやりたい」という想いは、このころからあったと思います。金融業界で働いておけば、いずれ独立するときに何かメリットがあるかな、と考えて就職先を選びました。

 

結局「自分で何かしたい」という想いはずっと消えず、26歳のときに脱サラしました。この頃はちょうど「会社法」で最低資本金規制が撤廃され、起業ブームだったんです。

 

そうだったんですね。どのような形で独立を?

食品輸入の商社を知人と立ち上げました。ただ、これまでとは全く畑違いで、金融業界の常識が通用せず…。貿易のことは素人だし、語学も苦手だったので、海外から電話がかかってきても話ができませんでした。辛い思いをしたので「修行が必要だ」と思いました。それで、その会社を離れて、名古屋にある知り合いの会社に就職させてもらい、貿易のイロハを教えてもらうことにしました。

 

その会社では海外出張を何度もさせてもらい、専門用語も含めて英語での会話に不自由しなくなりました。それで満を持して32歳のころに再び独立しました。今度はフードコーディネーターの資格を取って、輸入食品の卸(おろし)や通信販売などを手がけました。

 

ではなぜ、動画やweb制作のお仕事に転換を?

あるとき、自分の会社でECショップを持つことになったんです。ところがwebサイトの構築を頼んだら、ものすごいお金がかかるんです。写真1枚を撮ってもらうのにも、それなりにお金がかかるし、バナー1つ自分で変更できないことにストレスを感じていました。そこで、「じゃあ、自分がやった方がいいんじゃない?」と思って勉強を始めたのが、きっかけです。

 

web制作のスキルはどうやって積んだのですか?

だれかに教わったわけでもないし、学校などに通っていません。ただ自社サイトを見よう見まねで自分で触っているうちに自然と覚えていったんです。

 

そのうち、web制作もお仕事にしてしまおう、と考えたのですか?

その通りです。あるとき、思ったんですよ。食品は賞味期限があるので、不良在庫になってしまうことがよくあるけれど、web制作はそういうことがない。仕入れもないから、利益率100%の世界でしょ? 食品を扱う仕事より、だれかのHP を作るお手伝いをした方が割はいいし、お金になると思ったので徐々にweb制作の仕事にシフトしていったんです。

 

web関係のお仕事でやっていける見込みがあったんでしょうか。

人脈があったので、知り合いから声をかけてもらって、ほかの会社のHPを作ったり、画像やバナーなどの素材を提供したりしていました。それなりに仕事が回り始めたので、37歳ぐらいのときに食品会社は畳んで、動画やweb制作の仕事に絞りました。当時は不景気で、高級品と言われる輸入食品ではあまり売り上げも上がりませんでしたし。ただ、フードコーディネーターの資格は持っているので、食に関するお仕事は、今でもたまにやっています。

 

動画を作るようになったのはどうしてですか?

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アメフトのチームでヘッドコーチをしていたとき、ほかにスタッフもいなかったので、チームのPRのために写真を撮ったり、HPを作ったりしていたんです。そのうち、試合のダイジェストを動画でまとめたら面白いだろうと思って、自分で作り始めました。今思えば、編集にめちゃくちゃ時間もかかっていたし、へたくそでしたけれどね(笑)

 

なるほど。では、お仕事として動画撮影や編集を始めたのはどうしてですか?

何もかも独学でやってきたので、自信をつけて視野を広げようと、クラウドワークスに登録したことがきっかけでした。最初はランディングページの制作や、ECショップに掲載する商品データの登録、写真のレタッチなどを請けていたんですが、だんだん動画のお仕事にも挑戦するようになりました。

 

具体的にはどのようなお仕事を?

最初に受けた仕事は、ウェディング関連の動画編集でした。このころは1から動画を構築するスキルはなかったのですが、テンプレートをいじって写真や音楽を入れていく、という編集作業で仕事を受けていました。それから動画についていろいろ勉強して、自分で撮影もするようになり、実績が広がっていった感じですね。

 

これからはマネジメントの道も模索 

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今のご自身のお仕事には、満足されていますか?

うーん、分からないですね。サラリーマンをやっていたときよりは精神衛生上、楽しくできていますが。まだ満足はしていないと思います。

 

今のお仕事の、どういう点が楽しいですか?

全部、自分の裁量で決められるところですね。性格的なものもあるだろうけれど、自分で主導権を取っていける方がやりやすいです。

 

フリーランスで働いていると、40歳限界説など年齢的な難しさについて言われることがありますよね。ご自身の年齢について意識されたことはありますか。 

今45歳なんですが、仕事でお付き合いのあるのは、ほとんど年齢が下の方々です。もしかしたら、自分の年齢が上がるにつれて、年上には発注しにくい、とか、修正をお願いしにくい、など思われるかもしれません。そういう意味では、年齢的な限界説が当たっているなぁと感じることはあります。だからこそ、できるだけ若くいよう、と思っているんですけれどね(笑)

 

定年という概念はありませんか? 

60歳という年齢にこだわりはないですが、定年や引退の線引きはあると思っています。だからこそ若い人を仲間に引き入れて、将来的に自分はマネージャーみたいなポジションになった方がいいだろう、と思っています。自分で手を動かすよりは、マネジメントするような方が向いていると思うんですよね。

 

今までの経験から、若い方に伝えたいメッセージとかありますか?

今って、何でもやれる時代じゃないですか。だれが何をやってもいいと思うので、とにかく挑戦してみてほしいです。

 

ただ会社を辞めて独立する、というのは慎重に考えた方がいいとアドバイスはしたいですね。“辞めどき”ってあるので、しっかり独立する時期を見極めた方がいいと思います。でも会社に勤めながら複業するのなら、どんどんやった方がいいと思います。

 

独立は、そんなに甘いものじゃない、と。

挑戦するのはいいことなんですが、軽率なことはしちゃダメです。独立して自分の力でやっていく中では、やはり泥水をすするようなこともあるわけですよ。そういう覚悟はしておかないと、生半可な気持ちじゃできません。

 

あとはサラリーマンのうちにしっかりお金を貯めておいて、ローンを組むなら辞める前。大きな買い物はサラリーマンのうちにしましょう(笑)

 

ご自身の今後の目標はありますか?

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これまで、たくさんのお客さんから仕事をいただいて、いろいろなリクエストに応えることで、スキルが上がって成長できていると実感しています。これからも、もっといろいろな仕事を通じて成長していきたい、という気持ちは大きいです。

 

また、自分一人でやれることは限られているので、ゆくゆくはチームを作って、あらゆるクリエイティブな仕事ができたらと考えています。せっかくフリーなんだし、自分一人が食べていける仕事をするだけじゃ面白くないでしょう? 将来的にはアニメの分野にも進出してみたいですね。エンドロールに自分の名前が載るのが夢です。

 

取材・文:吉岡 名保恵

中野 貴裕

大学卒業後、損害保険会社に勤務したのち、26歳で独立。自身が立ち上げた食品関連会社のECサイトを構築するにあたり、独学でweb制作や写真撮影などの技術を習得。現在はフリーランスとして写真撮影、動画制作・編集、web構築、SNS管理などクリエイティブに関するさまざまな仕事を手がけている。高校生のときに始めたアメリカンフットボールでは28歳まで現役選手を続け、その後コーチに。現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部で広報を担当している。

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