共働き子育て世帯へ。旦那をフラリーマンにしたくないなら、妻がまずフラフラしよう

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フラリーマン。仕事が早く終わったにもかかわらず、家へ帰る気になれずフラフラする男性を指す新語だ。

昨年は女性がワンオペ育児に追われる姿がクローズアップされた。その背景にはパートナーたる男性の「不在」がある。「何がフラリーマンだ。同じ親なのに母親ばかり育児にかかりっきりで、フラフラしている余裕なんかない」と、憤りの声が多数見られた。

 

だが、本当にフラリーマン問題は「男のせい」なのだろうか?

 

家に帰れない男は「普通」だった1980年代 

かつて、男性は家に帰れないのが当たり前だった。1988年、栄養ドリンク「リゲイン」は「24時間働けますか」をキャッチコピーにして大ヒット。女性の社会進出も進んでいなかった当時、男は外で遅くまで働き、女性は家事育児に専念するのが平均的な家庭像だった。

 

だが「ワンオペ育児」が当時から当然のようにあったとは言えない。当時、育児には祖父母のサポートもあり、地域のつながりも強かった。国民生活基礎調査で世帯の推移を見ていくと、1988年から2013年で「三世代世帯」は半分以下まで落ち込んでいる。もちろんそのせいで家庭内トラブルやママ友同士のいさかいも多かっただろうが、孤立する危険性は今より少なかったと考えられる。

 

ロールモデルなき男性のフラリーマン化

しかし今は違う。そもそも「子持ちの女性」が世間の少数派なのだ。2013年時点で、日本の世帯の半分は一人暮らしか、夫婦のみ。逆に「子育てをしている世帯」はこの四半世紀で13%も減少した。ママ同士が助け合おうにも、ママの数が少ないのである。

 

その上、核家族化が進み「祖父母世代は別のところに住んでいる」ケースが増えている。ワンオペ育児が問題になった背景は、夫の不在よりも「お母さん」が社会のマイノリティになったこと、祖父母世代が核家族化で遠ざかったことが挙げられる。

 

女性にとって「子供ができたから育児を最優先にする」ことは1980年代から変わらない伝統だ。親世代がそうしてきたように、自分も育児期にはキャリアダウンを考える。しかし男性にとって親世代は手本になりえない。父親のように仕事熱心でいるだけでは、育児に手が回らないからである。

 

「では、どうすればいいのか?」その答えを先輩や知り合いの男性から学習できたなら、彼は子育てへ参加するだろう。だが周囲にロールモデルがなければどうだろうか。どうすればいいか分からないまま、妻から「なんでもっとちゃんと育児ができないの」と叱られつづけた男性の場合、心を守るために街をさまようフラリーマンになることは想像に難くない。女性が憤れば憤るほど、男性は怒りを回避するために「帰宅拒否」を続けるだろう。

 

フラリーマンを許せないのは「自分だけつらい」と感じるから

ここで強調するが、本稿は女性に「夫へもっと優しくせよ」と伝えるために書いたのではない。妻が憤るには理由があるのと同じように、夫側にも背景があると示しただけだ。その上で彼を変えたいなら、まずは女性がフラリーマンを許せない理由を考えたほうが建設的ではないだろうか?

 

そもそも妻が「フラリーマン、許すまじ」と感じるのは、女性ばかり家事・育児を背負っているからである。人は全員が苦労していれば怒りを抱きにくいが、ひとりだけ得をしている人間がいれば不満を抱く生き物だ。つまりフラリーマンを許せないのは、自分自身がフラフラできていないからである。これを言い換えると「フラリーマン男性を許容できるくらい女性にも自由時間があれば不満はたまらない」ということになる。

 

成功例に学ぶ、フラリーマンを作らないフラフラ術

ある女性は、夫が家へ帰らずフラフラしていても全くストレスを感じていない。その理由は、自分も週1で休みを取っているからだと教えてくれた。

「デビュー以来、アラシック(ジャニーズのグループ・嵐のファン)なんですよ。コンサートもチケットさえ取れれば全国どこでもついていきますし、自分のお店で流してるのもオルゴール版の嵐曲ばっか(笑) 

それでもさすがにうちの子が産まれてすぐはムリかな~って諦めてたんですけど、旦那が『愛があるなら行くべきでしょ』って背中を押してくれて。それからチケットが取れた日と、週1は子育てにお休みを取ってますね。旦那も同じペースで1人の時間を取ってるから、お互い息抜きできてます。やっぱり旦那がいない日は大変だけど、それも自分の休みを思えばなんとかね」

 

この女性の場合、自分にとって大事な趣味である「嵐のコンサート」と、週1休暇という男性と同程度の休みを取れていることで、精神的に安定したまま育児を続けられたという。

 

この成功例と同じになれとは言わない。だが、ライフステージの変化に応じて職業や部署を変えるのは、十分にありうる選択肢だろう。夫婦が同程度にフラリーマンできる環境を整えれば、不公平感から生じる憤りは減る。女性がフラフラできれば、男性のフラリーマンも許せるようになるからだ。そのために家事代行や家電の導入など「上手に休みを取る」ことこそ、怒りうずまく育児世代にとって建設的な解決策ではないだろうか。

 

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【執筆者】
トイアンナ

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外資系企業で約4年勤務したのち、ライターとして独立。ブログ『トイアンナのぐだぐだ』は月間最大50万PVを記録した。現在はキャリアと恋愛をメインテーマに、複数媒体で連載中。

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