成人の結婚時期は、男性が31歳、女性が29歳というデータが厚生労働省から発表されています。趣味の多様化や多忙な仕事、女性の社会進出等により結婚時期が年々遅くなっているようです。
30歳を過ぎてから結婚し、結婚式を挙げ、新婚旅行に行き、マイホームを購入して・・・といった具合に、結婚をすると人生のイベントが盛り沢山です。
そして何と言っても、夫婦にとって一番のビックイベントは、子供を授かることでしょう。「可愛い我が子には立派な大人になってほしい」、「そのためには大人になるまでに十分な教育を受けさせたい」と親であれば、誰しも考えるものなのではないでしょうか。
そんな子育て世代にとって、宝物である我が子が成人になるまでにどれくらいのお金が必要なのか確認をしていきましょう。
1人の子どもを大学に入れるまでにかかるお金はいくらか
子供が自立するまでの間、どのタイミングでいくらほど必要なのでしょうか。公立と私立別に、どれほど教育費がかかるか下記の表を見ていきましょう。
参考:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」「国公私立大学の授業料等の推移」より
例えば、中学校までは公立で、その後高校と大学は私立へ進学した場合は、上記の表を参考にすると、1,143万円かかります。そして、全て私立の場合は2,000万円以上にも上ります。
さらに、学部に応じてはもっと授業料がかかり、資格勉強や浪人生活、習い事などが含まれると3,000万円近くに及んでしまう可能性もあるので、余裕を持った教育資金計画が必要でしょう。
子どものためにお金を貯めるポイント
例えば、教育費として月5万円(年換算60万円)を18年間継続して貯金すれば、大学入学時点で1,080万円に達します(もちろん、その都度費消するため、実質的にはこれほど貯まっていません)。
これくらい準備できれば、高校と大学は私立に進学させることができそうです。
よく「教育費として子ども1人当たり1,000万円かかる」と言われていますが、1,000万円という大きな金額の場合、中々イメージがしづらく、どうやって貯金をしたらいいか途方に暮れてしまいます。
このような時は「毎月いくら貯金すべきなのか」日々の生活で考えることができるレベルにまで落とし込むことで、夫婦の給料からいくら貯金したらいいか具体的にイメージができるでしょう。
貯金
子どもが生まれたら、早速子ども名義の口座を作る親は多いのではないでしょうか。
自分名義の口座で教育費を貯めていても、ついつい使ってしまいがちです。そのため、祝い金やお年玉などの臨時ボーナスは子ども名義の口座で貯金をしておくことが大切です。
どこの銀行でも子ども名義の口座を作ることができますので、子どもが生まれたら、すぐに口座を作成しておきましょう。
さて、子どもの教育資金を貯める方法で、最もポピュラーな方法が貯金です。先述しましたが月5万円を天引きし貯金していく方法が一番確実でしょう。
銀行によっては、子育て世代に対して金利優遇しているところもあります。定期預金の金利は、通常0.01%程度ですが、金融商品によっては、これに上乗せで、0.05%~0.2%の金利が付くこともあります。せっかく貯金するのであれば、少しでも多く金利が付いた方が嬉しいですよね。
自分が住んでいる街の銀行で、お得に貯金ができないか事前に調べてみましょう。
保険
教育のための保険と言えば、学資保険を思い浮かべる方も多いと思いますが、そもそも、学資保険とは何でしょうか。
学資保険は別名「子供保険」とも呼ばれています。この学資保険とは「子どもが高校や大学に進学する時に必要な教育資金の準備を目的として、積み立てのように毎月の保険料を支払い続けることで、計画的に教育資金を貯めることができる保険」です。
貯金と比べて、学資保険のメリットとしては、下記のような点が考えられます。
- 支払保険料を確定申告時に所得控除できる。
- 保険期間が満期を迎えたときに受け取ることができる満期保険金は一時所得となり、受け取った保険金と支払った保険料との差額が50万円を超えない限り、税金はかからない。(銀行の利息には、約20%の税金がかかる)
- 契約期間内に契約者である親に、万が一の事態が発生した場合、保険契約自体は継続されるが、以後の保険料支払いが免除される。
ただし、途中解約した場合は、元本割れを起こす可能性があります。貯金と比べ、流動性の観点では劣るため、「保険料をいくらにするか」は保険加入時には厳しめに見通しを立てましょう。
投資
2016年から「ジュニアNISA」という制度が始まりました。
当初、NISAは20歳以上の成人を対象として制度が始まりましたが、このNISAが20歳未満の子どもも活用できるようになりました。つまり、親や祖父母が未成年の子どものために代理としてNISAを活用した投資ができるようになりました。
それでは、ジュニアNISAの詳細を見ていきましょう。特徴としては、下記のような点が考えられます。
- 対象者:0歳~19歳
- 対象金融商品:上場株式・ETF・REIT・株式投資信託等
- 非課税期間:最長5年間(5年経過後移管による継続保有可)
- 年間非課税投資額:80万円
- 途中引き出し:18歳までは不可
少し投資リスクをとってでも、子どものための貯金の一部を、利回りの良い投資に回してみることも、日経平均が上昇している昨今では検討してみる余地は十分あるでしょう。
児童手当
国は子育て支援を目的に、児童を養う親へ児童手当という手当を支給しています。対象年齢は、0歳から中学校卒業までとなっています。義務教育が終わるまでは国が支援してくれますので、事前にどんな内容の手当なのか覚えておきましょう。
「児童」という名称から、中学生修了までの児童1人につき、月額15,000円または10,000円を支給します。詳細は下記の通りです。
参考:内閣府「児童手当Q&A」より
ただし、親の所得が一定額以上の場合は児童1人当たり月額5,000円しか支給されません。
手続上も児童手当を受け取るためにはお住まいの市区町村への申請が必要です。遡って受給申請することはできないので、貰い忘れに注意しましょう。
贈与
一般的に、上の世代が下の世代にお金をあげる場合、贈与税という税金がかかります。
しかし、上の世代が死ぬまでずっとお金を持っていたら、お金が動かずに景気が活性化されません。そして、下の世代は何かとお金が必要ですが、その都度使ってしまうためお金をそれほど持っていません。
このように、お金が余っている上の世代からお金が必要な下の世代へお金を移動しやすくするため、税制上一定の条件を満たす場合は、贈与税がかからないような特例を設けています。
その中の1つに、教育資金を一括贈与した場合に贈与税が非課税となる特例制度があります。この特例は、教育資金として贈与した金銭(限度額1,500万円)のうち、30歳までに費消した分については、贈与税はかからないという制度です。
また、こういった制度を使わずとも、入試や入学時に足りない分を祖父母に一部負担してもらうことは、そもそも贈与という話にはなりませんので、税金面は心配せずに資金援助を受けましょう。
お金が足りない場合は、祖父母に甘えることも1つの方法です。
奨学金
逆に、家庭内でどうしてもお金が工面できそうにない場合は、奨学金という制度もあります。
進学先の大学や、日本学生支援機構では貸与型と給付型の奨学金を用意しています。日本学生支援機構によれば、2.6人に1人が奨学金を受給しているようです。日本の就職状況を見ると、やはり、4年制の大学を卒業するかどうかで生涯賃金に大分開きがあることが理由ではないでしょうか。
無利息で貸与してくれる奨学金制度もあるので、金銭的な理由で進学させることができそうにない場合は、奨学金制度を活用できないか諦めずに検討しましょう。
事前に必要なお金を把握しよう
一つの目標は、大学入学時である18歳の時までに、いくら貯金ができるかが勝負だと思います。ゴールが定まらない中で、ひたすら貯金をしていくのは大変なものです。18年間のうち、どのタイミングでいくらかかるのか、夫婦で確認をしておきましょう。
事前に必要なお金を把握しておくことで、お金の心配が少しは軽減されるのではないでしょうか。
【執筆者】
長野 拓矢(ながの たくや)
2011年国内大手税理士法人に入社。前職では、コンサルティング事業部に在籍し、主に、企業オーナーの事業承継対策や地主の相続対策といった提案型の業務に従事。現状を詳細に分析した上で、クライアントのニーズを汲み取り、クライアント1人1人に寄り添った提案を行うことを心掛けている。法人の顧問業務や個人の相続税申告業務においても、他士業と連携し、スピーディーな業務提供を行っている。
▶所属している税理士法人:
税理士法人 アイユーコンサルティング