多数の支持者を抱え、オススメした商品が飛ぶように売れる。そんな人を「インフルエンサー」と呼ぶ。従来、芸能人やスポーツ選手がインフルエンサーの代表格だった。しかし現代は一般人でありながらSNSで支持を集めることも珍しくない。
インフルエンサーが優遇される就活戦線
その流れを受けて、就職活動でも変化が起きている。アイウェア企業の「オンデーズ」がフォロワー数1,500人以上のインフルエンサーなら採用を優遇すると発表した。
さらにLUX、リプトンなどのブランドで知られる大手消費財メーカーのユニリーバも、就活でインフルエンサーを優遇すると発表。ネット上で発言権を持つことが、有利に働くようになった。
また、LINE株式会社はすでにインフルエンサーの採用に成功している。自撮り技術でインフルエンサーとなった「りょかち」さんは、留学生向け採用イベントへ登場。LINEの採用における「看板娘」となっている。
以前なら「あくまでプライベートの範囲で」とたしなめられることも多かった一般人のインフルエンサーは、今や就職活動を有利に運ぶ武器となったのだ。
インフルエンサーが持つ適性とは?
では、なぜこれほどの名だたる企業がインフルエンサーを優先したのか?
答えのヒントは「インフルエンサーの影響力」にある。たとえば前述したりょかちさんは、自撮りのプロとして書籍出版に至った実力者だ。「自撮り」文化に敏感なのは10~20代女子。ちょうど、LINEのメインターゲットと重なる。
自社のターゲットに刺さるコンテンツを提供していたからこそ、就活でも一目置かれたと推測できる。「あの、りょかちさんが働く会社です」というだけでも、新規ユーザー獲得へつながるだろう。そこまで影響力があるならば、インフルエンサーは単なる社員ではない。芸能人に近いPRバリューを持っていると言えよう。
また、インフルエンサーが採用されることで会社が副業可であるとアピールできる。
政府が副業を推進し始めたが、就業規定で副業を認める企業は現在も少ない。副業可である企業は、それだけで採用時に魅力を放つ。だが、いくら副業可能でも知られていなければ意味がない。
そこでインフルエンサーを採用すれば、当人から「私はインフルエンサー業と本業の両立を就職先で許されています」と発信してもらえる。本来であれば広告や説明会で伝えねばならない利点を、インフルエンサーが存在するだけで自動的に発信してくれるのだ。
就活のためにインフルエンサーになってはいけない
しかし「就活のためにインフルエンサーになる」ことは手放しで勧められない。なぜなら、就職活動の現場でインフルエンサーが喜ばれるのは下記要件を満たしたときだけだからだ。
- 企業のターゲット層とインフルエンサーが影響を及ぼせる層が被っている
- インフルエンサーの提供するコンテンツが企業倫理に沿っている
- 協調性や勤勉さなど企業勤めをするうえでの適性は別途持っている
上記を言い換えるなら「内定できるスキルを持っている学生が、さらにインフルエンサーであったときのみ重宝される」のが現実だ。内定するだけの基礎スキルが無い学生は、たとえインフルエンサーでも落とされる。なぜならインフルエンサーはあくまで内定へ近づく「加点要素」でしかないからである。
むしろインフルエンサーになる学生は協調性を欠く(からこそ目立っている)ことも多い。協調性を欠く人材は伝統的な重工業、商社、メーカーでは敬遠されるキャラクターでもある。インフルエンサー性が就職活動で有利に働くのは、広告代理店やITベンチャーなど、好奇心の強さをプラス評価してくれる企業に限られるのだ。
それぞれの就活サバイバル術とは?
ではここから、就活生を3タイプに分けて「それぞれのサバイバル術」をお伝えしたい。
協調性が低い自覚はあるが、就活の実績がない人
インフルエンサーになってもよいタイプだ。「エロ」「グロ」「犯罪」など反社会的な要素以外で自分がどうやって差別化できるかを考え、情報を発信してみよう。そして自分を受け入れてくれそうな企業を絞り、ピンポイントで就活をしよう。
もしインフルエンサー的な自己主張が苦手なら個人ワークが多い仕事を探してみてほしい。代表的なのはプログラマーやイラストレーターだろう。しかし最初からフリーランスを目指すと、営業で苦労する可能性が高い。あくまで「最初は」就職を勧める。
協調性はあるが、「普通」すぎる自分が嫌な人
あなたの協調性は、社会生活で最大の強みである。インフルエンサーになるような人間は、人生の多くで「普通でいたい」と願ったはずだ。なぜなら普通でないだけで社会はあなたを虐め抜くからである。「お前はおかしいやつだ」とこれまで虐められてこなかったなら、あなたはそのまま幸せになった方がいい。
学生時代からSNSでフォロワー数が3,000名を超えている人
おそらくあなたに普通の就活は向いていない。尖った人材を求める企業を狙って就活をしてみよう。ただ、あまりに個性が際立ちすぎている場合は下手をすると社会人に向いていない。生涯働くつもりで就活をしても、無理が祟って体や心を壊すおそれすらある。まずは「3年働くなら、どこがベストか」という視点で就活をしてみてほしい。
どの学生にとっても、生き残れる社会を作っていくために。インフルエンサー採用が協調性を欠く「社会弱者救済」としてこれからも働いてくれることを願う。
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【執筆者】
トイアンナ
外資系企業で約4年勤務したのち、ライターとして独立。ブログ『トイアンナのぐだぐだ』は月間最大50万PVを記録した。現在はキャリアと恋愛をメインテーマに、複数媒体で連載中。
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