学歴・職歴なしでも子ども3人を育てる!フリーランスのシングルマザーが教える仕事術

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ライティング、ディレクション、取材など幅広い仕事を手がけ、実績を伸ばしている、あおみゆうのさん。漫画家のアシスタントからフリーライターに転向、という異色の経歴を持ち、現在は3人の子どもを育てるシングルマザーとしても奮闘中です。

学歴や経験がなくても、工夫次第で仕事は開拓できる、という信念のもと、「人と会って話すのが好き」という強みも生かし、営業や打ち合わせにも積極的に参加。

フリーランス仲間らと制作集団『ことのは』を立ち上げるなど、仕事の幅をどんどん広げています。そんなあおみさんの、リアルなお仕事状況に迫ってみました。

在宅での仕事は必然に迫られて

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―もともとは漫画家のアシスタントをされていたそうですね。

はい。漫画は読むのも、描くのも好きで、高校を辞めて少年誌で連載をお持ちの先生のもとでアシスタントを始めました。16、17歳ぐらいのころです。

結局、私は「登場人物の同じ顔を描けないので、漫画は向かないな」と思い知ったのですが(笑)、物語を作る楽しさやチームワークの大切さ、みたいなものを体感しました。

またHPの管理を任せてもらい、画像加工の方法などもゼロから学べたので、このときの経験は今も役立っています。

 

―その後、なぜフリーランスに?

22歳で結婚して漫画のアシスタントは辞め、長男を出産しました。

長男は病気がちで0歳のときに入院を繰り返して。その後も2歳半にならなければ保育園へ預ける許可が下りなかったので、必要に迫られて在宅でできる仕事を模索するようになりました。

元々「書く」ことと「描く」ことが好きだったので、「好きなことで仕事ができるのは素敵だな」と思って、ライティングのお仕事に挑戦しました。

 

―そのころのお仕事はどんな感じでしたか?

ゼロベースから仕事を探して、いろいろな案件を紹介してくれるビジネスマッチングサイトに登録しました。

フリーランスとして独立する方って、ツテとか人脈とかある方が多いと思いますが、私の場合はゼロスタートでした。当時はちょうど「SOHO」の言葉が流行りだした時期。学歴も職歴もないので、条件的には厳しかったですね。

だからこそ、「ジャンルを問わずにどんな仕事でも請けてしっかり納品する」というのを繰り返して、実績を作ることを重視しました。 

最初はイラストを描く仕事も含め、細々と、だいたい月に1~2万円ぐらいのペースで仕事を受けていました。そのうち、ライティングの仕事のニーズが増えていったんです。

履歴書の必要な仕事はつながりにくかったので、経歴や実績で採用をしてくださるクライアントさんとお付き合いしていました。

 

―ライティングの仕事はすんなり始められたんですか?

そのころは、「200~400文字ぐらいの短めの文章を書いてほしい」という依頼が多くて、初心者でも取り組みやすかったんです。

関心のあるテーマで数をこなしていくうちにコツを覚え、徐々に幅広いジャンルで記事を書くようになりました。文字数もどんどん増えて、今では10万文字を超える電子書籍のライティングなども手掛けています。

 

―子育てとの両立を考えての選択だったということですね。

長男から5歳離れて第2子、また5歳離れて第3子を産みました。

子どものためにお金がかかるので、もっと仕事を増やしたくて2013年からクラウドワークスにも登録しました。初めての月は5万円ぐらい稼げたかな。

そのうち、月10万円ぐらいに収入が安定するようになって、第3子の出産後はさらに伸ばせるようになりました。多いときで、クラウドワークス以外の仕事も合わせて、月の売り上げが100万円を超したこともあります!

睡眠時間が、毎日3時間以下で休日はゼロ。1日平均15時間以上働いていて、ほとんど記憶がありませんが…。

 

―すごい!

実は、シングルマザーになってしまったこともあって、もう本当に必死でしたね。(笑)

 

―子育てと仕事の両立で苦労することはありますか?

来春、長男の高校受験があるので、今は寝る暇もない位に忙しくて。学校説明会や模試の申し込みなど、細かいタスクがどんどん降ってくるんですよ。個人面談も学校と塾の両方でありますから。

でも、この体験で得られた知見を生かして、受験に関する記事なども手がけています。(笑)子どもとおでかけした遊び場の体験レポートとか、最近は趣味でDIYにもはまっているので、インテリアや手作り関係の記事とか、子育ての経験もしっかりお仕事につながるのが嬉しいです。

 

―前向きですね!

長男の受験と高校入学、また9歳の長女も来年以降、中学受験を考えて塾通いを始める予定なので、教育費は相当かかると予想しています。

それに育ちざかりですから、食費も馬鹿になりません。特に土鍋でご飯を炊くようになってから、上の子が本当に縦にも横にもスクスクと育ってしまったんですよね(笑)。

そのため、しっかり収入は確保しなければいけないと思っています。

 

―家ではどのように仕事時間を確保されていますか。

仕事で忙しいときは仕事部屋にこもって集中するのですが、その間、子どもたちにご飯を炊いたり宿題をしたりといったタスクを与えています。

それで30分位仕事に集中できたら、いったん仕事を止めて家事をしたり、みんなでご飯にしたり。その後また仕事に戻って、というように細切れに時間を使っています。

一番下の4歳児だけは、私が仕事をしていても空気が読めないので、横で遊んでいることが多いですが。

 

フリーランスでチームを組むメリット

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―あおみさんが代表を務める制作集団『ことのは』について教えてください

クラウドソーシングで同じ案件を手がけていた女性のライターさんと、個人的にも連絡を取るようになって、「一緒に何かできないか」ということになりました。

スキルの高い女性ライターが集まって、クオリティーの高い記事を、一定数まとまって納品できるようなチームを作ったら、ニーズがあるのではないかと思って。

 

―体制はどうなっていますか?

ディレクションを担当できるメンバーが私を含めて4人、ライティングのみの方が3人です。営業、ディレクション、ライティング、監修にそれぞれ比率を決め、報酬を配分する形でチームとして仕事を請けています。

 

―具体的にどのような仕事を請けられているんですか?

「2,000~4,000文字の記事を月に10本納入する」といったご依頼を、複数のクライアントさんから請け、メンバーに仕事を割り振っています。

他社さんのオウンドメディア制作から運用まで一括して行っていたこともあり、そのような実績を評価してくださることが多いですね。

 

―『ことのは』には保育士・幼稚園教諭免許、薬剤師の資格を持っている方などが在籍していますが、そのような方たちが専門性を生かした記事を書くこともできるんですね。

はい。ほかにも、たとえば医療関係のテーマでは、知り合いの医師や資格所有者に監修をお願いしたうえで記事を書くこともあります。

監修にあたっては適切な人材を探しますし、そこまでするからこそ、安心して『ことのは』にお仕事のご依頼をいただいているのではないでしょうか。

 

―手をかけているんですね。

お仕事をいただけるのであれば、こちらとしても満足できる内容で仕上げたいので。それに、不安はできるだけ潰して、納品したいじゃないですか。

多少コストがかかったとしても、「良質なコンテンツを制作する」ために、ベストなやり方をクライアントさんにご提案させていただいています。

 

―チームを組むメリットはどのようなところにあると思いますか?

比較的フットワークの軽い私が代表になり、いろいろな企業さんとお仕事の交渉を進めています。

他のメンバーは、『ことのは』のお仕事に関しては自分で営業しなくても仕事を受注でき、ライティングに集中できます。

それと、私の足りない箇所を他のライターさんが補ってくれるのは凄い強みだと思います。知識や経験そして情報を、みんなで共有しながら成長していけるのは、チームならではの良さです。

また、『ことのは』はスキルの高いライターばかり集まっているので、クライアントさんにとってもライターの採用プロセスや教育が不要というのは大きなメリットだと思います。

 

人に会って話をするのが好き!自分の強みを生かす

―対面での打ち合わせも多いのでしょうか。

具体的には月初めに企画会議に参加しているクライアントさんが3社あって、ほかにもオンラインミーティングをしている会社さんが5社以上ありますね。

私は人と話をするのが苦ではないので、リアルでのコミュニケーションを大切にしたいです。緊張するよりも、ワクワクするタイプなのです。対面の方がしっかり、相手の意図がくみ取れるし、細かいニュアンスまで分かりますから。

メールやチャットのやりとりで、それがつかめればいいんですが、できずに修正工程が増えてしまうのは、お互いに本当にストレスじゃないですか。

最初にきちんとコミュニケーションを取っているから、『ことのは』が手がける仕事は、初回の踏みを別としてだいたい修正1回までで完結しています。

 

―あおみさんご自身の、今の仕事の配分としては、ライティング、ディレクション、取材がそれぞれ3分の1ずつぐらいだとお聞きしています。取材はどのような経緯で始められたんですか?

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取材を始めたきっかけは、コンテンツ制作のために、「クライアントさんのお話を聞いて、内容をまとめてほしい」という依頼を受けたことです。そのときに「写真も撮ってほしい」と言われて、何となく取材っぽいものを始めるようになりました。

 

―取材の難しさ、みたいなものは感じませんでしたか?

基本的に人と会って話すのは好きですし、取材も営業も似ているところがあるので、だんだん慣れてきました。相手に興味を持って、事前にちゃんとリサーチして。

「興味を持って話を聴く」ことで、滑らかにお話をしていただけるので、過去のインタビューなども参考にしています。

何より取材をすると新しいこと、今まで知らなかったことに触れ、いろいろな知識が増えるのは嬉しいですし凄く勉強になるので、取材はこれからも積極的に取り組んでいきたいです。

 

―どうすれば、あおみさんのようにたくさん仕事を取れるのでしょうか?

私も毎回、ドンピシャにお互いの条件が折り合うことってないですよ。問い合わせや打診があっても、ちゃんと仕事につながっていくのは、10件中3件ぐらいでしょうか。

けれども、クライアントさんが求めていることをしっかりくみ取りつつ、ちゃんとコミュニケーションを取って確認を取っていけば受注率も上がるのではないでしょうか。

 

―仕事を請けるコツなどはありますか?

専門的な知識や、ほかのライターと差別化できるものを持っている人は強いですが、そうではない、私みたいな学歴も経験もない人が生き残っていくのって大変です。

まずは、オールジャンルでいただいた仕事を、きちんと納品し続けて、積み重ねていくことだと思います。 

クラウドワークスは、インターネット上で全てを完結できるのが魅力ですよね。でも私の場合は、オンラインで完結しない仕事でも好んで引き受けたことで、いろいろなクライアントさんとのお付き合いが広がりました。そういう風に、自分の強みを見極めれば、学歴や経歴は関係なく、お仕事を取っていけると思います。

それに「お仕事がない」という方の多くは、クライアントさんの求めるモノを正確に理解していないことが多いと思うんです。

「分からないことは聞く」といった必要なコミュニケーションが取れていなかったり、相手の立場を考えず、自分の都合ばかり主張しすぎていたりするケースもよく目にします。そういった基本的な点を、見直すのも大事ではないでしょうか。

あと、実績として提示できる署名記事にはこだわっていて。署名記事なら、多少、単価が安くても受注した方が将来的には自分の財産になると思います。

駆け出しのころは、一緒にトライアンドエラーをすることができるクライアントさんを見つけるのがベストかもしれませんね。納品した原稿にフィードバックをいただけると、自分もスキルアップしていけるので。

個人でお引き受けする仕事では、今では費用感が合わなくなっている仕事もあります。けれども、上下関係ではなくパートナーシップを構築することができるクライアントさんなので、これからも大切にしていきたいと思っています。

 

―これからの働き方について、展望などがありましたら。

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子育てとの両立を考えると、今の働き方は自由度が高く、報酬的にも満足しているので、これ以上私にとってベストな働き方はないんじゃないかな(笑)。

今は長男の受験のために仕事のペースを落としていますが、受験が終わればまた仕事に対してアクセルを踏むだろうし。ライフプランに合わせて柔軟に働けるのはフリーランスのメリットですよね。

もう少し子どもの手が離れたら、新しいチャレンジもしていきたいですし、以前手掛けていたゲームのシナリオや小説といった創作活動も再開していきたいです。

あとは『ことのは』のみんなと一緒に、色んなお仕事に挑戦していきたいのも当面の夢です。

取材・文:吉岡名保恵

あおみゆうの

フリーランスとして14年以上の活動実績を持ち、ライティングやディレクションなどを手がける。2016年には、女性のみのプロのライター集団『制作集団ことのは』を立ち上げ、チームとして仕事を請ける体制を構築。後進の指導も積極的に行っている。プライベートでは、14歳・9歳・4歳の子どもを育てるシングルマザー。