【税理士解説】宝くじの税金はいくら?贈与税や共同購入の場合は?

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毎年恒例の年末ジャンボ宝くじ。今年は11月27日(月)から12月22日(金)が発売期間となっており、12月31日(日)が抽せん日となっています。気になる1等はなんと7億円!1枚300円から購入することができ、夢が広がります。 

また、取らぬ狸の皮算用ではありますが「もし当せんしたら、税金はかかるのか」気になったことはありませんか。

そこで、今回は宝くじの当せん金にはどのような税金が課されるのか、税理士に解説してもらいました!

 

宝くじが当せんしたら所得税はかかるのか?

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宝くじの当せん金に所得税は課されません。当せん金付証票法で非課税所得と定められているためです。

当せん金付証票法 第13条 

当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない。

つまり、7億円が当たったとしても、所得税を納める必要がありませんので7億円が当たれば7億円が手元に残る、ということになります。

仮に7億円の給与の場合の所得税は、約3億921万円となります。給与には所得税だけでなく住民税も課税されます。所得税の最高税率が45%と住民税率10%との合計55%の税率で課税されることを考えると、1年間の給与が7億円であっても半分近くは税金を納めないといけないということになります。

 

翌年の住民税はアップする?

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「給与など所得が増えた時は、翌年の住民税が増えるから住民税を払えるお金を貯めておかないといけない」ということを聞いたことはないでしょうか。

所得税は年末調整や確定申告で1年間の所得を計算して税金をタイムラグなく納めます。

一方、住民税は市町村が税額を計算しますので翌年5月ごろに税額の通知が届きます。忘れたころに税額通知が届くので、所得が増えた翌年の住民税には注意が必要ということになるのです。

では、宝くじの当せん金には住民税がかかるのでしょうか。所得税同様、住民税もかかりません。住民税は所得税の所得をベースに計算されますので所得税の所得にならない宝くじの当せん金には住民税が課されません。

 

なぜ宝くじの当せん金は非課税なのか?

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宝くじは、販売総額のうち、賞金や経費などを除いた約40%が収益金として、発売元の全国都道府県及び20指定都市へ納められ、高齢化少子化対策・防災対策・公園整備・教育及び社会福祉施設の建設改修などに使われています。

所得税では、本来ならばすべての所得に対して税が課されるのですが、社会政策的配慮や国民感情などから課税しないものがあります。これらをまとめて「非課税所得」として、原則として何らの申告手続をすることなく、課税の対象から除外しています。

宝くじの収益金は「高齢化少子化対策・防災対策・公園整備など広く社会的に有意義な活用がされているため、当せん金品については所得税を課さない」となっているものと思われます。

 

所得税・住民税以外に課税されるケース

個人が当せんした宝くじに、所得税・住民税が課されません。しかし、「誰かに半分あげたい場合」「仮に当選者が亡くなった場合」「法人が購入した場合」、少し事情が異なってくるようです。

 

7億円の当せん金の半分を妻にあげるとどうなる?

誰かにお金などの財産を無償で与える行為を贈与といいます。財産を与える人を贈与者といい、財産をもらう人を受贈者といいます。

この時、受贈者には贈与税が課税されます。贈与税は、個人から財産をもらった時にかかる税金です。

贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。この場合、贈与税の申告は不要です。

もし、7億円の当せん金の半分である3億5千万円を妻に贈与すると、約1億8,789万円の贈与税が課されます。妻は贈与してもらった半分近くを贈与税として納めなくてはいけません。

所得税も住民税も課税されないのに贈与税が課税された、ということが無いように注意が必要です。

 

7億円の当せん金の宝くじを妻と共同購入していれば贈与税は課されない?

贈与税は、無償で財産をもらった場合に課税されます。

では、1口300円の宝くじを妻と150円ずつお金を出し合って購入した場合の当せん金には贈与税が課税されるのでしょうか。

この場合の当せん金は妻と折半することになり、贈与税は課されません。宝くじが当せんした時、「妻に当せん金の半分を贈与したい」と考えていれば、購入するときから共同購入をする必要があります。

 

高齢の父が宝くじ7億円当せんして数日後に亡くなった場合の相続税は?

相続税は、相続や遺贈によって取得した財産等の価額の合計額が基礎控除額を超える場合にその超える部分に対して、課税されます。

仮に、亡くなった父の財産は当せん金の7億円だけで、相続人は長男、長女の2人の場合、約2億4500万円の相続税が課税されます。

 

法人が宝くじを購入して当せんしても非課税?

法人が宝くじを購入した場合の当せん金には法人税が課されます。当せん金付証票法第13条は、所得税は課さないとなっていますが法人税は課さないとはなっていません。したがって、7億円の当せん金に対して約2億8000万円の法人税が課されます。

 

宝くじの当せん金は個人で購入すれば非課税ですが、法人名義で購入すると法人税が課されます。また、誰かに贈与すれば贈与税が、当せん金を使わずに亡くなれば相続税が課されます。「宝くじは個人で買って全て使い切る」が一番の税金対策かもしれませんね。

【執筆者】
神谷 智道(こうや ともみち)

福岡の中堅税理士法人に入社し、法人・個人の一般事業会社及び特殊法人の顧問業務に従事。その後、北九州の税理士事務所にて医業・製造業・小売業・不動産業・飲食業・理美容業・サービス業など幅広い業種の顧問業務を担当。特に、法人税・所得税・相続税等、各種シミュレーションに基づいた総合的な事前予測・対策を強みとしている。その傍ら、事業承継対策における自社株式の評価や相続税申告及び相続対策などの資産税業務も行う。

現在、税理士法人アイユーコンサルティングの北九州事務所長として新規顧客の開拓、キャッシュフロー改善コンサルティング、助成金活用サポート等を担当し、既存顧客の資金不安を解決させ企業成長をサポートするため経営者の身近なアドバイザーとして活躍中。

▶所属している税理士法人:
税理士法人 アイユーコンサルティング