受注実績700件、ライティング未経験の主婦が プロライターとして活躍するまで

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インテリアコーディネーターとして働いていた知識や経験を生かし、住宅や不動産関係の記事執筆を数多く手掛けるフリーランスの梅原ゆいさん。

次男が幼稚園年中になった2012年からライティングの仕事を請け負い始め、これまでの受注実績は700件近くにのぼります。未経験だったライターの仕事で実績を積み重ねてこられた背景には、仕事に対する高いプロ意識があるのは確か。

梅原さんが普段、仕事をするうえで大事にしていることは何なのか、インタビューで解き明かしていきます。

 

久しぶりの仕事がうれしかった

f:id:p-journal:20171128170655p:plain ―前職はインテリア関係のお仕事だったそうですね。

大学卒業後はメーカーで事務職に就いていたのですが、時間があれば、よく美術館に行っていました。絵を見るため、というより、空間そのものが好きだったんです。

次第に、そんな落ち着ける場所を作ることを仕事にしたい、と思うようになって、インテリアスクールに通い始めました。

その後、インテリア関連会社や住宅メーカーで働き、部屋の外装や内装の仕様決めや、モデルルームのコーディネートなどを手がけました。

 

―そういう意味では、ご自身の希望をかなえられた仕事だったんですよね。

はい。でも残業が多くて、夜遅くまで働くのが当たり前でした。それで体調を崩すこともあったので、結婚を機に専業主婦になる道を選び、息子2人の子育てに専念していたんです。

 

―その後、クラウドソーシングで仕事をするようになったのはどうしてですか。

子どもは3歳差だったので、小学校入学と幼稚園入園が同じ年。

下の子の幼稚園では、年少のときに役員を引き受けたので忙しく、年中になった段階で手が空いたのですが子どもが幼稚園の間はまだ時間の制限が多く、パートで働くのは難しい。

それなら、外に働きに出るのはもう少し先かな、と考えていたところ、たまたまテレビと新聞でクラウドソーシングの話題を目にして、在宅で仕事ができるなら、と登録してみることにしました。

 

―初めて受けた仕事はどのようなものでしたか?

インテリアの通販サイトに掲載する、家具の紹介文を書く仕事です。

 

―ぴったりのお仕事ですね。

ライティングは初めてでしたが、インテリア関連の記事だったので書きやすかったです。久しぶりに自分で稼いだお金を手にできて、とてもうれしかったのを覚えています。

 

―未経験だったライティングの分野で、どのようにスキルアップしていったのでしょうか。 

インテリアの仕事をしていたとき、図面を書くのが苦手だったんですよ。でも数をこなしていくうちに、できるようになって。

だから未経験からのスタートだったライティングでも、数をこなした方が書けるようになると信じて、とにかくチャンスがあれば仕事を入れていきました。

 

―相当な案件をこなされていたようですね。

結構、タフなんですよ。

それに、ライティングの仕事を始めたころは、今よりいくばくか若かったので、睡眠時間を削って仕事するのも大丈夫でした。

限られた時間の方が集中して良い記事を書ける、というのもあるので、多少、忙しいスケジュールをわざと組んで、自分を追い込むようなこともしていましたね。今はさすがに体力が持たないので、あまりしませんけれど(笑)

それに自分が主婦をしていたから実感として思うのですが、お金を稼げる仕事があるって、純粋な気持ちで本当にうれしくて頑張れたのだと思います。

 

大事なポイントは前職と同じ

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―ライティングのお仕事で苦労されたことはありませんでしたか。 

もちろん、最初は戸惑うこともありました。でも、書くのは苦にならない方ですし、異なるジャンルですが、ライティングとインテリアコーディネーターの仕事と似ているところがあると感じていて。

 

―と、言うと?

たとえばクライアントさんが求めていることを的確に読み取ってライティングし、いかに読みやすくて、きれいな文章に仕上げるのか。

それは、マンションのモデルルームをいかに美しく、デベロッパーや販社の担当者の方の要望通りにコーディネートするか、というのと同じかな、って。

 

―プロとしての姿勢は、どんな仕事でも通じるものはありますよね。 

あと、自分が持っているスキルを出し切って、仕事に取り組まなければ成長しない、というようなところも似ていると感じています。モデルルームの仕事でも、プランやパースの作成で、手を抜くとすぐに分かってしまうんですよ。

同じように、ライティングもただ数をこなすだけではだめで、一つ一つ真剣に、この文章で良いのか、突き詰めていく姿勢が必要だと思います。

 

―ライティングの仕事を始めたときと今では、仕事の単価や内容は変わってきましたか?

クオリティーが求められるものを高い単価で発注していただくことが増えたので、働く時間は減っても収入は上がりました。案件によりますが、多いときには1日に12,000字ぐらいの記事を書くこともあります。

案件が重なって、どうしてもできないときはお断りもしますが、基本的にはご依頼いただいたお仕事は受ける方針です。一ヶ月の目標金額とかはあまり考えていないので、受けられる限りは受けています。

 

あと、一時期、リフォームやリノベーションが流行ったときに、インテリア関係の案件をまとめてたくさん担当させていただいたんですね。

このころから、案件の単価も上がっていったので、やはり、何でも書けます、というよりは、自分の書ける分野をある程度絞っていった方がいいのではないか、と考えていて。

それで今は前職の経験が生かせる住宅、インテリア、不動産関係のほか、ニーズのある美容のジャンルに絞ってお仕事を受けることが多くなりました。

苦手な分野を無理に引き受けても、深い理解が難しく、どうしてもふわっとした文章になってしまいますから。

 

共働きだから夫と家事・子育てを分担

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―普段のお仕事の様子について教えていただきたいのですが、仕事をするのはご自宅メーンですか? 

今まではそうだったんですけれど、最近、近所にスタバができて。

家で仕事をしていると、ネットサーフィンをして遊んでしまいそうになるので、集中して書くためにスタバを利用するようになりました。

背もたれがないスツールの席だと、眠たくもなりませんし。

 

―子育てとの両立面で言うと、子どもの急な病気で困った、とか、夏休み中は子どもがいるから仕事できない、などの悩みがあると思うのですが、どうですか?

うちは子どもたちが元気なので、あまりそういうことで悩んだ経験はないんですよね(笑) とはいえ、風邪とかインフルエンザとか、かかるときはかかります。

でも、子どもの病気を理由に納期を遅らせてもらう、といったことはほとんどしないですね。一回だけあるとすると、長男が盲腸で入院したときぐらい。

このときは、都度連絡している案件に限って事情をお伝えし、本数を減らしてもらいました。

 

―プライベートな事情は仕事に持ち込まない、というスタンスなんですね。

基本、子どもの事情も含めてすべて私の側の問題であって、相手には関係のないことですから。

私の場合、スタートした時点で子どもがそこまで小さくなかったので、言えることかもしれませんが、プロとして、子どもが病気だから原稿を出せません、みたいなことは極力、言うべきではないと思っていて、もしそういう事態になっても、夫の手を借りるなどして、何とか乗り切れるよう工夫しています。

 

あと、夏休みは塾の夏期講習に行っている期間があり、ここ2年は実家で数日間、下の子を預かってもらうなどしているので、できる限り調整します。

そのおかげで、子どもが長期休暇中だから仕事ができません、みたいなこともないですね。

 

―旦那さんは協力的なんですか?

夫はサラリーマンなのですが、今日みたいに私が取材や打ち合わせで外出するときは半休を取って、家で下校してくる下の子を迎えてくれていることが多いです。

家事はアイロンは主人の仕事で、私が忙しいときは洗濯や掃除をしてから出勤してくれることが多く、いろいろ分担していますね。

私は料理は好きで早いのですが、アイロンが苦手で、洗濯や掃除はのんびりとやってしまうので、主人いわく適材適所といった形で。どちらがやると決め過ぎず、手が空いた方がやるといった臨機応変な感じが良いのではと思っています。

 

―それは頼もしい!

子どもの教育費がかかるにつれ、私もしっかり仕事をして稼いだ方が家計のためになる、ということは夫婦の共通認識になっていきました。

でも、最初から協力体制ができていたわけではないんです。

多くの家庭がそうであるように、家事や子育ては、母親である私がメーンで担当していて。

 

それであるとき、あまりに私の仕事が忙しくなってきたので、夫に言ってみたんです。

うちは私が在宅で仕事をしているとはいえ、「共働きだよね?」って。

だったら、家事は「手伝う」じゃなく、「やる」のが普通なんじゃないか、と。そのころから、夫の意識が変わり、家事や子育てに協力的になりました。

 

―お子さんは中1と小4ということですが、少し手が離れた感じはありますか。

長男は中学生になったので、親離れしつつありますが、朝のお弁当作りがタスクに加わって余計に忙しくなりました。次男は甘えん坊ですが、本人なりには徐々にしっかりしてきていると思います。

 

―外に働きに行くことは考えたことはありますか?

当初は、次男が小学校3、4年になったら、フリーランスは辞めて、派遣社員や契約社員で仕事を探そうと思っていました。

でもいざ、子どもが大きくなって、リフォームアドバイザーの仕事の求人情報から手取り額などをシミュレーションしてみたら、それほど収入的にメリットを感じなかったんです。

働きに出るとなれば、時間的な拘束は多いし、だからと言って、安定的にずっと働き続けられる保証もないし…。

それならばライティングの仕事でフリーランスを続ける方が、それなりに収入も得られているし、子育てと両立しやすいのかな、という判断になりました。結果、長男の中学受験にあたっては、家にいてサポートをある程度できたのが良かったです。

 

―最後にご自身の経験をふまえ、これからライティングのお仕事を始めようとしている方などにアドバイスがあれば教えてください。

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私の場合、ライティングは未経験からのスタートでしたが、クライアントさんとのコミュニケーションの取り方や仕事の進め方、責任感を持って取り組むスタンス、などは、企業での事務職や、インテリアの仕事をしていたときと同じだったと感じています。

社会経験が役に立っている、と感じることは多いので、いきなりフリーランスではなく、ある程度、企業勤めなどで仕事のノウハウみたいなものは学んだ方がスムーズに進められるかもしれないですね。

 

確認したいと感じることがあっても、内容によってはクライアントさんも実際に書きあがった記事を見ないと分からない点もあると思います。それなのに、細かなことをひとつひとつ聞いていくと、手を煩わせてしまうのかなと。

また、納期に余裕のあるタイミングで、依頼内容に一度目を通しているのですが、書き進めていくと確認したいことが納期間際に発生することもあります。そのような時は、私の場合はある程度、自分の判断で記事を整えていったん納品し、申し送りをしたうえで、その後、内容をすり合わせていっています。

このようなスムーズに仕事が進むノウハウは、経験の中で生まれてくるものだと思うので、まずは実際に一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

取材・文:吉岡名保恵

梅原 ゆい(うめはら ゆい)

大学卒業後、メーカーで事務職として勤務。在籍中にインテリアスクールに通い、インテリアコーディネーターとして住宅会社などで働く。結婚、出産を経て、2012年にクラウドワークスに登録したのを機に、ライターとして活動中。中1と小4の息子が2人いる。