アイデアの種と種を結び付けていかに面白いものを生み出すか、そういう妄想力が一番大事

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「CONTROL BOX」名義で、クラウドソーシングにおいて数々の開発案件などを受注している祝園明広さん。

大手インターネットプロバイダー会社などで培った高いスキルと見識を生かし、高額な案件も順調に受注していると言います。

若いころから“仕事の種”になることは敏感にキャッチし、常に先を見据えてきた、という祝園さんのお仕事術とマインドに迫りました。

ミュージシャンからの転身

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―ご経歴を拝見すると、もともとは、プロのミュージシャンだったとか…。20代のころですか?

はい。ドラム&パーカッションで、アーティストのツアーサポートしたり、舞浜のテーマパークでショーやイベントのバンドをやったりしていました。

今は週末だけ横浜でセッションホストするくらいの活動ですけれど(笑)

 

―そうだったんですか!

当時はやり始めていたDTMで音楽制作を始めました。

パソコンに打ち込んで作る音楽ですね。 その流れでHTMLやJava Script、Perlといった言語を覚えて、いつの間にかweb制作や開発の仕事をフリーランスで受けるようになっていました。

 

―プログラミングはもともと得意なタイプだったんですか?

プログラミングは小学校のとき、ポケットコンピューターを使って、遊びで簡単なプログラミングをやっていました。

改めて思い返してみれば、子どものころ、自分がなりたい職業は2つあって、それが音楽とプログラマーだったな、って。

 

―じゃあ、両方の夢が、かなっちゃったみたいな感じですね。

そうですね、まあ今、音楽はメインではありませんが(笑)

 

―そのあとは3社ほどで会社勤務を経験されているんですね。

はい。広告代理店やメーカーで契約社員としてweb制作全般を担当し、一通り仕事をしてきました。

2004年からは大手のインターネットサービスプロバイダーに正社員として中途入社。

当時はインターネット黎明(れいめい)期というか、どんどん発展していく時代でした。

やりたいことは何でもやらせてもらえる社風もあって、本当に好き勝手にいろいろチャレンジさせてもらいました。

フロントエンドからバックエンドまですべて任せてもらえることってあまりないんですが、やっていいよ、と言ってもらえる環境だったので、“1人プロジェクト”を結構やりましたね。

コンテストで賞をいただいたこともあって、幅広くスキルを磨かせてもらえました。

 

仕事欲しさに契約金のディスカウントはしない

 

 

―この会社では10年ぐらい、いらっしゃったんですね。その後、フリーランスになられたのはどうしてですか?

会社の中でやれることは、だいたいやってしまったな、という気持ちがあって。

当時、独立のタイミングって、周囲ではだいたい45歳まで、って言われていたんですよね。

それでお客さまが取れる見通しが立ったタイミングで、40代になったので独立しました。

 

―そのような中で、クラウドソーシングを利用し始めた理由を教えてください。

大手クライアント様のプロジェクトを丸ごと、もしくは一部を引き受ける感じで仕事は定期的にありました。

それだけでも大丈夫だったんですが、大手さんと言えども、このご時世では何があるか分からないので、新しいお客さまも開拓しておいた方がいいな、と。

それでフリーになって1年ほどしたころ、クラウドソーシングのサイトに登録してみたんです。

 

―そうだったんですね。クラウドソーシングで仕事を受けてみた感触はどうでしたか?

始めたころは、どんな案件でも受けてみよう、という気持ちで取り組んでいたのですが、正直、大変でした。

できるだけ安く発注したいクライアント様と、ちゃんと見合う対価を支払ってくれるクライアント様との意識の差が激しくて。

そういうお客さまの見極めをするのが難しく感じました。

 

―確かに。クライアント様の質は様々かもしれません。

それで、仕事欲しさに、契約金のディスカウントはしない、ということをポリシーとして掲げました。

具体的には、打ち合わせ段階で改善案や企画を行い、「今回はどこまでやりましょう?」という感じの提案と、フェーズごとのコストを提示していきます。

もちろん、提案した内容がクライアント様にとって納得度の低いものだったら、 契約は成立しないですし、その後も続きません。

そうすると、その金額の意味を理解してくださるクライアント様だけが集まるようになって、特にこちらから営業しなくてもお声がけいただけるようになりました。

―駆け出しの方だと、最初は単価を低めに設定して実績を積み、それから徐々に単価をあげていく、というのが多い気がするのですが、祝園さんの場合は最初から強気の金額でいけたわけですね。

低い値段だからこれぐらいでいいだろう、という仕事をやりたくないんですよ。

ご依頼いただいた案件のゴール設定をするだけで、やっておくべき事は決まってくると思いますし、集客、成約率を上げるためのWebサイトを納品しないと Win x Winにならないので、そういった事を大事にしています。

集客・成約率を上げるための施策に必要なコストを強く打ちだしてからは、全くクライアント様の質、みたいなことで悩むことはなくなりました。

今もいいクライアント様ばかり、お付き合いさせていただいています。

 

―クラウドソーシングでは安い単価の案件しかないと思っている人も多いようですが。

私も最初は、そんな高額案件、クラウドソーシングでは取れないだろうと思っていました。

でも今や、クラウドソーシングの仕事だけでもサラリーマン時代の年収は達成できています。

今は固定のクライアント様からの収入の方がまだ多いですが、今年中にクラウドソーシングの方が上回る可能性も出てきています。

「(クラウドソーシングで)高額な案件も取れますよ」ということはみなさんにぜひお伝えしたいです。

 

―実績を拝見するとクラウドソーシングサイトの「総合契約ランキング」などでも、1位も含め上位に何度も入っていますものね。

高額案件につながるか、つながらないか、って、結構、クライアント様とのコミュニケーション能力が問われると思います。

私の場合はいろいろな会社で実務経験を積んできたので、その点、アドバンテージは大きいかもしれません。

特に大企業の案件って、フリーの立場だと、ちょっとひるむじゃないですか。

でも自分はもともと大手にいた人間で、外部制作・開発側に求める事をわかっているつもりなので、どんどん意見を言うんですよ。

そうすると、相手の担当者も「この人、分かっている」となって、信頼してくれる気がします。

 

―祝園さんの強みですね。

そうですね。ご契約頂いているクライアント様がリピートしてくださる理由だと思いますし、チームで参画するプロジェクトでも、その点の立ち回りはご評価頂いているので ご契約月間総合1~3位を頂けたのだと思います。

 

―今も実際、チームを作ってお仕事をされていますよね。みなさん、お若い方ですか?

若いです。今はデザイナーやエンジニア、SEなど12人のメンバーをプロジェクトの規模に応じてアサインしています。

単純にパートナーとして仕事をしてもらうスタイルです。

 

―若い方を育てたい、というお気持ちも強いということでしょうか。

そうですね。経験が浅いと1人で仕事をしていくのは難しいと思うので、うちみたいなチームに加わって仕事を覚えてもらえるといいかな、と思っています。

あとはオンラインの講座で、WEB 制作やWebデザインなどの講師もやっているので、いろいろな形で若手を育てています。

 

無駄なことは何一つなかった

 

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―今、お引き受けしているお仕事はどのような内容ですか?

Web制作・アプリ開発やwebコンサルティング、グロースハックなど多様ですが、最近はUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナーとしてペルソナやカスタマージャーニーマップ、モックアップの作成を中心にご依頼いただく案件が増えました。その流れで制作や開発にも関わっています。

 

―UI/ UXというものが意識されてきたのは、ここ数年の傾向でしょうか。

そうですね、今はUI/UXデザインの重要さを理解しコストをかけるクライアント様が増えてきています。

一方で、まだ社内のマインドが育っていない、という意識のある企業様にアドバイザリー契約を結んで相談やアドバイスをすることもあります。

 

―そういった部分を外注する、というのは、社内に人材がいない、ということなんですか?

人材としては足りていないという印象です。デザイナー・ディレクターとしての実力は高くても 、ペルソナやカスタマージャーニーマップを実際に作るとなれば手が止まるんですよ。

作り方を教えれば、何となく分かった気になるのですが、作成途中でこれで本当に合っているのか、不安になるようですね。

 

―確かに。自分が作るとなれば難しいかもしれないですね。

私は今まで、無駄にいっぱい、いろいろなものを作ってきました。

絶対、売れると思っていたのに、会社のドメインが違うからとか、色々な理由で世に出せなかった製品やサービスは山のようにあるんですよ。

これまで多くのペルソナ・カスタマージャーニーマップを作成してきた事で、仮説を立てながらプロジェクトをまとめていくという事が得意になってきたのだと思います。

今思えば、無駄なことは何一つなかった、ということですね。

クライアント様とのやりとりをしている中で、この分野に仕事のニーズがあると感じ、早い段階から力を入れて取り組んできたのも良かったと思います。

 

―いつも先を見て、ビジネスチャンスを獲得していらっしゃるんですね。

実は、仕事をするときに使っている「Control Box」という名義は、今開発している人工知能のプロジェクト名なんです。

これから先の社会を見据えて、収入の半分ぐらいの大きな投資をしながら開発を進めています。

 

―そんなにも大きな割合で…。

数年後、制作の現場は別世界になっていると感じているので、人工知能の分野に今、これだけ足を突っ込んでいるんです。

大手様の予算規模からしたら極小規模ですが、それくらいの予算でも効果的な開発ができると思っています。

今開発している人工知能のサービスは1年半後ぐらいには実用化させたいですし、同じようなことをやっている人はほかにもたくさんいます。

数年前には自動運転だってまだまだ先の話だと思っていたけれど、想像以上に速いスピードで社会が変わっていくのが分かります。

そのために今、人工知能の分野に取り組んで、何が人工知能にできて、何が人間にしかできないか。

どういったことは自動化できるのか、見極めたいと思っています。

HTMLコーディング、簡単なデザイン、 ワイヤーフレーム作成などは近い将来、人工知能の仕事に置き換わるかもしれません。

自分の仕事がなくなるかもしれない、という不安が私にもあったから、いま人工知能の開発に取り組んでいるんです。

 

―感度が高いからこそ、不安になるんですかね。全然知らない人は、知らないで済んじゃいそうですけれど…。

仕事がなくなるとかそういう不安だけではなくて、自分の仕事を人工知能でどの程度まで再現できるかというところでしょうか。楽しみな部分もありますよ。

自分が出来ることがそのまま人工知能に置き換わって、その中でもやはり人間でないとできないというところが答えだとしたら、やるべきことは決まってくるはず。

そう考えれば、本当に毎日、色々な発見があります。

 

―頭がフル回転ですね。

いいじゃないですか、楽しいですよ。

 

―うらやましいです。

私の仕事で言えば、プログラミングのスキルうんぬんではなく、アイデアの種と種を結び付けていかに面白いものを生み出すか、そういう妄想力が一番大事だと思っています。

私の妄想癖は本当にひどいですよ(笑)

でも、これとこれを合わせたら絶対に面白いよね、というのを誰かに話してそれで終わり、ではなくて、いいプロジェクトになりそうだな、と思ったら、その後、形にするところまで持って行きます。

そういう好奇心が自分を育てているなと思うんですよね。

 

―最後に、若い方に向けてメッセージなどあれば教えていただけますか。

20代ぐらいのころって、志さえあれば、支援してくれる環境がいっぱいあるんです。こんなに幸せなことはないですよ。

私は最初、「お金はいらないから仕事させてください」ってwebの世界に飛び込みました。

お金にはならなかったけれど、一通り仕事を覚えさせてもらって、その後、ちゃんとお給料をもらう仕事としてやっていけるようになったわけです。

それって“お金の種”になることは、しっかりもらっていた、ということですよね。

こういうことができるのは20代の特権。

だからこそ、どんどん恐れずに、挑戦してもらいたいです。

 

取材・文:吉岡名保恵

祝園 明広(いわいぞの・あきひろ)
プロのミュージシャンとして活躍したのち、web制作の世界へ転身。広告代理店や大手飲料メーカーでwebディレクターなどを経験したのち、2004年からは大手インターネットサービスプロバイダーで正社員として勤務。ブログパーツ制作プロジェクトを自身で立ち上げ、2年間で150件以上のブログパーツをリリース、ブログサイトのお絵かきツール開発、Adobe Flex Builderを使った年賀状制作アプリ開発や ダイエットサイトのグラフパーツ開発、デスクトップランチャーなどのカスタマー向けサービスを提供。2015年に独立、「ControlBox」名義で、UI/UXデザイン(ペルソナ・カスタマージャーニーマップ作成、モックアップ制作)、Webアプリケーション開発、スマートフォンアプリ開発、Webコンサルティング、グロースハックプロジェクトなどに従事している。最近は人工知能(AI)開発案件に力を入れている。