フリーライターの仕事をしつつ、タイと日本を行き来しているfreebird007さん。大手メーカー系企業のシステム子会社や税理士事務所勤務を経て、働き方を模索した結果、たどりついたいまのライフスタイルは満足度の高いものだそうです。「いつかは独立したい」、そう強く追い求め続けたfreebird007さんのこれまで、そして、これからに迫ります。
サラリーマンにはなりたくなかった
―充実した生活を送られているそうですね。
はい。いまの生活の満足度は95%ぐらいで、勤めていたころに比べたら、かなり高いです。
―いまはどのような生活を?
フリーライターとして、クラウドソーシングで仕事を請け負っています。どこにいてもできる仕事なので、いまはタイのチェンマイに拠点を持ち、日本とタイを行ったり来たりしながらの生活です。
―そうなんですか! いまは一時帰国中なんですか?
観光用ビザが3ヶ月で切れるので、そのタイミングで日本に戻ってきて、数週間、実家に滞在。そしてまたビザを取得して、タイで3ヶ月生活をする、いうことを繰り返しています。
―もともとは会社員をされていた時期もあるんですよね。
はい。大学を卒業したあとは5年ほど、大手メーカー系企業のシステム子会社でSEとして勤務をしていました。就職活動をするときから「いつかは独立を」という想いがあったので、コンピューターの知識があれば将来役に立つかな、という安易な考えで選びました。
―就活の時点で、いずれは独立という考えは、当時としては珍しかったのでは?
はい。周りは公務員とか、手堅いところが多かったですね。ただ、僕は「サラリーマンにはなりたくない」という想いが昔からあったので、そういう考えはありませんでした。
―どうして、そう思われたんでしょう。
両親はガチガチのサラリーマンなので、もしかしたら両親を見ていて、何となくそう思っていたのかもしれません。とにかく子どものころから憧れの職業と言えば医師やパン屋、鍼灸師、翻訳家など、フリーで仕事ができる職業ばかりでした。もともと昔から自分で立てたスケジュール通りに、コツコツ何かを進めていくことが好きだった、というのも影響しているかもしれません。
―でも卒業後、「いきなり独立」という考えにはいかなかったんですね。
はい。実際に会社で働いてみたら、サラリーマンって意外にいいな、と思うかもしれない。だから、一度は就職してみよう、と。周りからも「就職した方がいいよ」と言われたので、素直にその言葉に従いました。
―会社に入ってみたら、実際はどうだったんですか。
SEとしてソフトウェアの設定やデータベースの操作などを担当していたのですが、文系出身で文章を書くのが好きだったので、資料やマニュアルの作成を任されることが増えました。周りは理系の人が多くて、IT知識は豊富なんだけれど、それを説明する資料を上手に作れない人が多かったんです。
そういう人たちが作った資料を読むと、専門用語をそのまま書いているし、あまり知識のない人にとってはさっぱり分からない。説明を省略すると誤解が生じることもあるかもしれないですよね。それでとにかく丁寧に、ここまで書かなくてもいいんじゃないか?と思われるところまで書くようにしました。
―文章を書くスキルは、きっと重宝されたでしょうね。それなのになぜ、お辞めになったんですか?
「まずは3年頑張ってみろ!」と両親や先輩から言われていたこともあり、目の前の仕事に邁進していたのですが、3年たっても、4年たっても、やはり「サラリーマンという生き方が好きじゃないな」という想いは消えなかったんです。忙しい職場で、上司の怒鳴り声もよく響いていたし、とげとげしい雰囲気があったのも原因かもしれません。
5年目を迎えたころから「やっぱり自分はもっと自由な働き方を選びたい」と強く思うようになって、サラリーマン以外の道はないのか、模索するようになりました。そのときに目に留まったのが、いわゆる“士業”の仕事でした。
独立を模索した日々
―士業とは弁護士とか、公認会計士とか、弁理士とか、「士」の付くお仕事ですよね。
はい。当時は、独立して生きていくための仕事として、士業が一番いいのではないか、と頭に浮かびました。最初にお金をかけて独立、というのは怖かったし、コツコツ勉強するのは嫌いじゃなかったから、まあちょっとやってみようかな、と思って。
それで税理士に目標を定めて会社を辞め、1年間、仕事をせずに勉強に専念しました。税理士は試験科目が複数あり、そのうち5科目に合格すると晴れて税理士になれます。翌年の試験では「財務諸表論」の科目に合格したので、ある税理士事務所に就職し、働きながら5科目合格を目指すようになりました。
―そうだったんですね。その後は?
税理士事務所は、所長先生の人柄が良く、全員で10数人の家庭的な職場で、とてもいい会社でした。でも結局3年ぐらい働いても、税理士の試験に受かったわけじゃないし、どうも自分はあまり会計の仕事が好きじゃない、という根本的な事実に気づいてしまいました(笑) それはそうですよね。フリーランスや自営業として働くための手段として、税理士を選んだだけだったので。
そんなときにたまたま、クラウドワークスで名刺を発注したんです。発注したあと、定期的にクラウドワークスからお知らせのメールが来るようになって、目を通しているうち、ライティングの仕事も結構あるんだな、と気づきました。もともと文章を書くのは好きで得意だし、ライターでフリーになる道もあるんじゃないか、と考え始めました。
―それでライティングの仕事を?
最初は税理士事務所に勤めながら、複業として土日にライティングの仕事を受け始めたんです。プロジェクト形式の仕事は、すごいプロが集まっているイメージで敷居が高かったので、タスク形式の記事を書くことから始めました。
―タスク形式だと単価が低いものもありますよね。
単価が低いものは最初から受けないようにしていました。やはり300円や400円にしかならない記事を書いても…と思ったので800円以上ぐらいの仕事を受けるようにしていました。その後、段々と単価の基準を上げていき、最終的には1,000円以上まで単価を上げました。この頃の案件を選ぶ基準は単価で、記事のジャンルは問わずに書いていました。
―そのうち段々、継続的なお声がけが増えていったような感じですか?
はい。タスク形式で書いた記事を気に入っていただいたお客様から、指名で発注をいただくようになりました。仕事の評価が積み重なるにつれ、新しい仕事依頼も舞い込むようになって。気づいたら、仕事はすべてプロジェクト形式で受けて、月に3、4万円ぐらい稼げるようになりました。
それでふと思ったんです。土日だけでこの金額だったら、専業のフリーランスになって毎日やれば、ライティングだけでそこそこ生活できるようになるんじゃないか、って。
―方向性が定まったわけですね。それでいよいよ独立を?
そうですね…。ただ、月10数万円の稼ぎだったら、日本で生活するのは結構、厳しい。でも、よくよく考えたらライティングはどこにいてもできる仕事だし、じゃあ物価の安い海外へ行けばどうだろう、となったんです。
―そんな理由で海外に?
周りからも結構、「ぶっ飛んでいる!」と言われたんですけど(笑) 会社を辞めてすぐにタイへ行ったんですよ。貯金もあったし、実験だと思って。
タイに滞在し、やりたいことをやる
―ちなみに、どうしてタイだったんですか?
たまたま、タイのチェンマイで、月5万円の生活費で暮らしている方をネットの記事で見かけて。その人はアフィリエイターさんだったんですが、自分と同じような考えで実行に移している人がいるんだ。と思ったら途端にやれる気がしました。それで海外旅行も兼ねて行ってみた。という感じですね。
―じゃあ、タイではなくても良かった、と。
※ご自宅の写真
はい。とりあえず3ヶ月はタイにいようと思って行ってみたら、想像以上に住みやすかったんですね。でもほかの国も見たかったので、ベトナムと、マレーシアにも行きました。いずれも、仕事をしながら数ヶ月単位の長期滞在で、バックパッカーとクラウドソーシングがミックスしたような生活をしていました。でも結局、タイのチェンマイが抜群に住みやすかったんですね。それでチェンマイにアパートを借り、日本とタイを行ったり来たりするようになったんです。
―もともと海外で生活したい願望はあったんですか。
はい。ずっと、海外を旅しながら暮らす、みたいなことはやってみたかったんです。1週間ぐらいの普通の海外旅行は行ったことがあったんですが、数ヶ月単位で住むことはやったことがなかったので。
―ご両親は反対されませんでしたか?
最初は「何をやってるんだ!」といった感じでしたが、最近は「それなりに生活できているならいいんじゃないか」という状態になりました。もしかしたら、諦められているのかもしれませんね。ただ、いつか結婚はしてくれ、と言われています。
―タイでの生活はどのような感じですか?
※職場の写真
現地でコワーキングスペースを借りているんですが、月1万円ぐらいで安いですよ。周りは欧米人ばかりです。
あと、仕事の受注が安定し、収入の見通しが立てられるようになってきたので、タイ語の語学学校やテニススクールに通って、プライベートも楽しんでいます。
―アクティブですね!
日本と比べると7分の1ぐらいの金額で語学学校に通えるんです。タイ語の学校は英語で授業をするので、日本人はほとんどいません。ほとんどが欧米人で、いま一番仲がいいのは台湾人の友達です。テニスも日本ではなかなか続けられなかったので、タイで再開できるなんて夢みたいでした。
―そういう生活はフリーランスならでは、ですよね。
本当に楽しいですね。サラリーマンしていたころより断然、毎日が面白いです。やりたかったことは、間違いなく実現できています。いろいろ回り道はしたけれど、徐々に生活の質は上がっている実感はあるので、フリーになって良かったです。
専門性を高めたセールスライティングで強みを発揮
―いま、ライティングのお仕事はどのような内容が多いですか?
実は育毛剤のセールスライティングをメーンにお引き受けしています。自分も3年ぐらい前、薄毛の進行に悩んでいて、最初は個人的な興味から育毛剤の記事を手がけるようになりました。同じ悩みを持つ人の気持ちが分かるからこそ、記事は高く評価していただいて、次々に新しい仕事がくるようになりました。だったらいっそ、育毛関係の記事に専門を絞った方がいいのかな、と思いました。
―それだけ育毛に関心のある方が多いのでしょうか。
きっと、悩みが深いんだろうと思いますね。自分自身も30代で、鏡を見るたびにブルーになっていたので、読者の気持ちが想像できるんです。カッコ悪いし、どこまで進行するのか不安だったので。
―読者の関心はどのあたりに?
どうすれば改善するか、どの育毛剤がおすすめなのか、といったところですかね。よく効く育毛剤だと副作用の心配もあるので、そのことを知りたがっている方も多いです。あと食事など、生活面の工夫などについても自分の経験を踏まえて書いています。実際、現在は自分の薄毛は大丈夫になってきているので…。
―本当に、薄毛で悩んでいた時期があるなんて、今はぜんぜん分からないですよ。
でも3年前は本当にやばかったんですよ。ちゃんと育毛剤を選んで、生活も気を付けたら薄毛って改善されるんだ、と自分自身が一番実感しています。
―ご自身の経験も強みになっているんですね。でも絞った分野で書き続ける難しさはありませんか。
逆に、育毛剤のセールスライティングに絞ったから、いっぱい仕事の依頼がきたと思っています。「何でもやります」というのは、結果として「何もできません」と言っているのと同じです。
だから、「育毛剤の記事が得意です」といった形で自分の得意分野をアピールするのが大切だと考えています。得意分野の記事の執筆を続けると、どんどんその分野の知識が深まっていきますし。
実際、僕はもう1年以上育毛の記事ばかり書いています。なので、最近では育毛剤の成分名を聞いただけで、その成分を配合している育毛剤とどんな効果が期待できるかまで、頭に浮かぶようになりました。たとえば、「ペルベチアカナリクラタエキス」という言葉を聞いただけで、「あぁ、イクオスのAlgas-2の構成成分で頭皮の保湿効果抜群!」といった感じです(笑)。
また、「タイのサワディーヘアって育毛剤の育毛効果が凄い!」っていうマニアックな雑学が頭に入っているのも強み。その専門性を生かして読者に響くような記事を執筆しているので、普通のライターさんより少し高めの単価でも、クライアント様から納得して頂けているんだと思います。
経営学の本を読んでいるんですが、「ターゲットを絞った方が顧客は増える」といった話をよく目にします。税理士事務所に勤めていたときも、相続税に強い税理士さんとか、顧客をパン屋に特化した税理士さんがいました。やはり、何かに特化することで強みが出て信頼も得られる、というのはあるのではないでしょうか。
―なるほど。ライティング自体のスキルはどのように身につけたのですか。
書く力を付けるには、本や新聞をたくさん読むことも役に立ちます。僕の場合は、読書が本当に好きで、大学生のころは1日1冊のペースで読んでいました。いい文章にいっぱい触れていたことが、自然とその後のスキルに役立ちました。
ちなみに、ライティングで生計を立てるようになってからは、「楽天マガジン」を利用して、分野を問わず日本の雑誌を一通りチェックしています。興味があるのは広告。雑誌の広告には一流のコピーライターが作ったキャッチコピーが並んでいるからです。その中から自分に響くフレーズがあれば、メモをして手帳に残しています。
自分は商品を売るセールスライティングの記事を書く機会が多いです。なので、記事を執筆する際は、手帳にストックしているキャッチコピーを参考にしながら、自分なりに読者に刺さるようなタイトル・見出しを考えています。
あと『ザ・コピーライティング』、『究極のセールスレター』、『セールスライティング・ハンドブック』といったセールスライティング関係の著名な書籍は購入して、全て手元においています。
これらの書籍を常にチェックすることで、独りよがりの記事では無く、きちんとセールスライティングの原則にのっとった記事を書くように意識しています。
―最後に今後の展望や目標があれば教えて下さい。
僕は一人っ子で、親も高齢になってきたので、そのうち拠点は日本に戻ると思います。でも、そうなったとしても、年に数回はタイへ行く生活を続けたいですね。
あと仕事は、最近育毛だけじゃなくて、精力剤・婚活及び出会い系サービスなどの記事を依頼される機会も増えてきました。精力の衰えや結婚・恋愛の悩みはどれも今自分が直面していることなので、読者さんの気持ちが手に取るように分かり、記事が書きやすいですね。
特に婚活サービスは、実際に日本で利用して、彼女を見つけたこともあります。自分の経験を生かした記事を書くことができるので、クライアント様から「妙にリアリティがある」とほめられることも結構あります。アフィリエイトをやっているクライアント様からのご依頼でしたが、サイト読者からコメントや問い合わせが来た、とのことで、反応も良かったようです。今後は育毛をベースにしつつ、精力剤・婚活及び出会い系サービスなどの分野にも、仕事の幅を広げていきたいですね。
取材・文:吉岡名保恵
freebird007
大学を卒業後、大手メーカー系企業のシステム子会社にSEとして就職。独立を視野に退職し、いったんは税理士を目指して勉強に集中。税理士事務所勤務を経て、フリーライターとして独立。現在は商品のセールスライティングを中心に受注し、タイのチェンマイと日本を行き来しながら仕事を続けている。