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希望の糸

カフェの女性オーナーが殺害された。容疑者として名前が挙がった汐見には子供を亡くした過去があった。
その後に授かった娘は、実は16年前に同じクリニックで不妊治療を受けていた別の夫婦の受精卵が取り違えられて授かった子供だった。
生まれた時から亡くなった姉兄の身代わりとして重圧を感じていた娘と、年ごろの娘との距離の取り方がわからない父親の間には埋められない溝があった。
事件の犯人はまもなく自供し解決と思われたが、まだ何かがおかしい。捜査に当たった松宮は独自で調査を続け、受精卵の取り違えの一件が今回の殺人事件に関係があるのではないかと考える。
しかし、事件解決のためにこの重大な秘密を暴くことは正しのか？正義とは？家族とは？迷いながら松宮が事件を解決に導いていく。

受精卵の取り違えというあってはならない事故は、不妊治療が当たり前の現代では誰もが他人事ではなく、もし自分が当事者だったら？と考えずにはいられませんでした。
自分は生まれてから身代わりだと思い続けていた娘の辛い気持ちも痛いほどわかるし、我が子として愛情を注いできた親が子を思う気持ちもわかるし、この親子がどうにか救われて欲しい、幸せになって欲しいと願わずにはいられませんでした。
事件の真相究明のために、一人の少女の人生を変えてしまうかもしれない秘密を暴くことは正しいのか？と葛藤する刑事の姿にも心を打たれました。加賀恭一郎は今回はアドバイザー的な立ち位置ですが、後輩松宮がしっかりと成長していて加賀のやり方を受け継いでいっている姿もシリーズファンとしてはとても満足のいく作品でした。