
近年「働き方改革」という言葉をよく耳にするようになりました。国を挙げて長時間労働の是正や、雇用形態を問わない公正な待遇の確保を推進する動きが活発になっています。しかし、働き方を見直したくても、経営や事業を動かす上で人材が足りず、思うようにいかないと課題を感じている企業も多いのではないでしょうか。実はこうした背景から、今フリーランスの活用が注目されています。
今回は、働き方に関する先進的な取り組みを行っている企業として、株式会社アトラエ様のインタビューを紹介します。「意欲ある仲間が無駄なストレスなく働ける組織を創る」という哲学のもと、自宅勤務や地方でのリモートワークなどに取り組むことで、各メンバーが高いパフォーマンスを発揮しています。
社内で活躍するフリーランスたち。アトラエはどのように協働しているのか?
―アトラエ様がフリーランスと協働するようになったのはいつからですか?
2018年1月からですね。まずは私が担当している事業部に1人参画してもらうところからスタートしました。1年経った今では、全ての事業部に1人以上フリーランスの方がいます。
―フリーランスと協働するようになったきっかけは何でしょうか?
1つのきっかけとして、やはり人材不足はありますね。最初は都度こちら側で業務を細かく切り分けてクラウドソーシングで依頼するという方法を採っていましたが、業務が増えてくると、それだけでは立ち行かなくなってきて……フリーランスの方にジョインしてもらう方法を選びました。
しかし、ただ足りない業務を埋めてくれれば誰でもいいというわけではなくて、自分たちの会社との相性にはとにかくこだわりました。
例えば弊社の場合、「エンジニアがプロダクトをつくる」というよりは「全員でプロダクトをつくる」という文化で、仲間意識を大切にしています。それなので、業務委託でも正社員で一緒に働きたいと思える人かどうかというのは意識しました。クラウドテックさんに協力いただきながら、多くのフリーランスの方と会いました。
面談では、自分たちの会社が大切にしているスタンスを伝えながら、能力だけではなく相手の志向性や普段のことなども聞いていきました。その場には、一緒に働くことになるメンバーも同席し、新しいメンバーとしてフィットしそうだなと思った方にジョインいただく形で進めました。
―実際にジョインされたフリーランスの方にはどのように働いてもらっていますか?
最初の数カ月は、一緒に時間を共有して信頼関係をつくります。
弊社はとにかく会話する量が多いと思います。会社の情報も開示しますし、「こうして欲しい」ということも素直に伝えます。「こういう経験をした」「これが好き」といった、仕事以外のこともたくさん話します。すると、フリーランスの方からも素直に意見を言ってもらえるようになるんです。
信頼関係さえできてしまったら、働く場所や時間は柔軟で良いと思っています。私自身エンジニアだからわかることですが、業務を行う上で必ずしも出社する必要はありませんから。実際に働いてもらっているフリーランスの方はかなりご活躍いただいており、別の事業部からも引っ張りだこです。
「フリーランスも、同じチームの仲間」組織づくりで大切にしたい視点とは?
―アトラエ様がフリーランスの方と協働する上で、心掛けていることはありますか?
フリーランスの方は、外部から手を貸してくれる「サポーター」というよりは、当事者意識・仲間意識を持った「メンバー」だと考えています。
結局いいものをつくろうと思ったら、「フリーランス」「正社員」という立場を超えて関わり合わないとだめなんですよ。メンバーのほとんどがサポート役ばかりのバンドよりも、全員が同じ方向を向いて信頼し合ってるバンドのほうが、絶対良い音楽をつくりそうじゃないですか。
雇用形態に関係なく、自分たちの会社に入ってもらうならば、同じメンバーとして少しでもチームを良くする方向で関わってもらいたい。そして、そんな想いで参画してもらえるならばこちらもとことん信頼するし、その人が自分らしさを発揮できる状態をつくりたい。そんな想いは持っています。
例えば、かつてライターとして関わってくれていたフリーランスの方が、家庭の事情で岐阜に引っ越さなければいけなくなってしまったことがあって。その際に「岐阜にいながら今の仕事を両立する方法を考えませんか」と相談したら、とても喜んでいただけたこともありました。物理的に離れることになっても信頼している人には一緒に働いて欲しい。そのことを伝えると、「そこまで信頼して求めてくれるならば応えたい」という気持ちを持ってくれたようです。
―フリーランスの方に関わってもらってよかったことはありますか?
例えば、フリーランスで働いている外国人の方の参画を機に、チーム内で英語で会話してみようという流れが生まれたこともあります。仕事やライフスタイルなど、幅広い経験を持っていることがフリーランスの方の強みです。
組織の幅を広げる意味では、フリーランスの方に入ってもらうことでシナジーは生まれやすいと思いますよ。「その人にしかできないこと」を掛け合わせることが、チームとしての競争力を高めることにつながります。
―最後に、フリーランスも含めた組織の「人材活用」という観点で、アトラエ様が大切だと感じていることを教えてください。
組織づくりには、労務や制度などのハード面と、組織文化や価値観などのソフト面があると思っています。フリーランスの方に入ってもらうときというのは、大体ハード面のほうばかり議論しがちです。
しかし、本当はそこで働いているフリーランスの方が意欲的に関わりたいと思ってくれているか、メンバー同士で良いチームをつくれているかといったソフト面が重要だと感じています。エンジニアの場合、嫌々書いたコードよりも、良いものをつくろうと思って書いたコードのほうが精度は高いに決まっていますよね。
つまり、自分らしく楽しく働けているかどうかで、個人やチームのパフォーマンスは全く変わるということです。フリーランスや正社員という立場に関係なく、関わるメンバー全員が楽しく働けているかどうかが、組織づくりでは大切だと思いますね。