企業インタビュー
2015.06.09
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早期発見できれば救える病気はたくさん。クラウドワークスで実現したアプリ開発:五十嵐健祐院長

脳梗塞の原因となる不整脈をチェックし、疾病の予防を可能にするアプリ「ハートリズム」。2014年2月にリリースされたこのアプリは、専門医にも高い評価を受けているという。

今回はそのアイデアを生み出した東京・お茶の水内科院長の五十嵐健祐医師にお話を伺いました

病院に来る前のアプリ活用が疾病予防に

―五十嵐さんのご経歴を教えていただけますか

お茶の水で内科をしております。2014年の2月に、クラウドワークスを活用してアプリ「ハートリズム」を開発しました。

学生の頃に、東京や仙台、また中国などでITやヘルスケア関連の事業をしていた経験があり、その時の経験が、今回のようなアプリ開発にも活きていると思います。

当時は会社を作って経営したりしていてあまりに活発に活動したためか、慶應の医学部長に呼び出されて、勉学に集中するようにと停学処分になったこともありました。

その後学業に集中し、2012年に医師免許を取得。その後2014年まで群馬の中規模病院にて、救急と脳卒中、循環器をメインに研修医をしていました。

―そのようなご経歴の中で、アプリ開発を行った経緯を教えて下さい

救急の現場で感じたのは、「重要なことは病院に来る前に起きている」ということです。病院に来る前で予防のチャンスはいくらでもあるのに、一度発症して病院に運ばれるタイミングによっては手遅れになってしまう病気は少なくありません。

そのような中で、あらかじめリスクがある人を特定して、適切な受診につなげる疾病予防ができないものかと考えました。

近年は、スマートフォンの普及やテクノロジーの進化によって必要な生体機能情報が容易に入手できる時代ですので、多くの人が身近な持っているツールとしてスマホアプリという形を選びました。

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―今回のアプリはどんな目的で使えるのでしょうか。

「ハートリズム」は、脳梗塞の発症リスクとなる不整脈を調べることができます。「心房細動」という、脳卒中の原因となる不整脈があり、50代くらいから徐々に増え、加齢に伴い有病率は増えていきます。

75歳以上では実に15名に1人程度も心房細動を持っているとも言われています。心臓の不整脈が原因の脳梗塞、「心原性脳塞栓症」の一番の原因であり、一度発症してしまうと救急車で運ばれてくる前に死亡、脳卒中専門病棟で治療しても脳に何らかの後遺症を残してしまうことが多く、社会復帰できるのは3割に満たないと言われています。

日本で寝たきりや要介護になる一番の原因は脳卒中です。心原性脳塞栓症を起こす前に、心房細動を見付けることが非常に大切なのですが、困ったことに心房細動は日常的には症状がないか、あっても軽微という割合が半分を占め、ほとんど自覚がないため、病院に来てくれないことが大きな問題となっています。

患者数は現在300万人ほどと推定されて、高齢化に伴い今後も増加傾向です。50代から日常的に自分の脈をチェックすることが何よりも大事です。

岩盤浴中の大発見から生まれた「ハートリズム」

―斬新な発見によって今回のアプリが実現したと伺いました

実は、私は温泉が好きでよく岩盤浴に行くのですが、たまたま岩盤浴に入っていた時にiPhoneのカメラのフラッシュが点灯してしまい、とっさに指に当てて塞いだのです。そうしたら、人差し指が脈を打っているのが肉眼でわずかに確認出来ました。

これまで、脈を測って検出するためには赤外線が必要だと言われており、赤外線の専用機器を使用しなければ検出できないと思っていたので、本当に驚きました。

その大発見から心房細動検出アプリのアイデアを思い付き、3日程で企画書を仕上げクラウドワークスに発注しました。

―クラウドワークスにアプリ開発を依頼したきっかけはなんだったのですか

まず、私はアプリ開発をするプログラミングスキルを持っていませんでした。それに僕の場合、作りたいアプリは明確で、既にページ構成や仕様書なども用意できていました。

アプリ開発などで検索して相見積りをとったりしましたが、営業マンが出てきたり、既にわかっているレベルのことを提案されたりして。

僕は、シンプルに技術力、それを持つ技術者と出会いたかったのです。そこでクラウドワークスに仕事を登録し、開発してくれる方を募りました。

クラウドワークスは、登録者の評判や評価も可視化されていますし、大勢の方が登録しているので、クオリティーも期待できると感じました。

社会的な意義に賛同してくれるパートナー探し

―応募者を選ぶ上での決め手はなんだったのでしょうか

「ハートリズム」の開発に関心を示してくれた人は15人ほど。その中に、さっそく脈を図れるプロトタイプを作って、実際に提示してくれた積極的な開発者さんが3人いました。

社会的な意義の高いアプリを目指していますので、作ってそれで終わりではなく、リリース後も疾病啓発活動も含め、一緒に広めていくことも視野に入れたパートナーになってほしいと考え、一度お会いして私が目指していることを説明し、共感していただける方を探すことにしました。

最終的には、アプリの理念や意義に共感をしてくれて、技術力も確かな松本さんにお願いすることに決定しました。今回のアプリはまず海外でリリースを予定していたため、海外でのビジネス経験も豊富で、英語が堪能である点も決め手の一つでした。

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―App Storeにアプリをリリースするまでエピソードがあるとお聞きしました

最初に英語版をリリースすれば、その後の他言語展開もスムーズだと思い、Appleと申請のやり取りをしました。

最初は、iPhoneのカメラだけで脈が測れて、心房細動の検出が出来て、脳卒中のリスクを統計的に導き出せるなんて、とアプリの内容を信じてもらえませんでした。

「Prank(いたずら)」アプリと言われ、「アプリの目的をEntertainment Use Only(エンタメ目的のみ)にするように」と申請をリジェクトされました。

その後、きちんとした医学論文のエビデンスを提示し、英語で何度か交渉し、最終的にAppleが折れて、無事アプリ承認になりました。

企画構想から開発、承認まで3ヶ月ほどでリリースが完了しました。対面は最初の打ち合わせの一回のみで、アプリリリースまでの作業はすべてオンラインで完結しました。

細かい仕様より、5W1Hを明確に

-アプリ開発をスムーズにするコツを教えてください。
基本的には、こちらの作りたいものが明確だったため、開発者さんとのやり取りもスムーズでした。

依頼するお仕事の細かい要件を仕様書などで共有することも大切ですが、それ以上に作りたいプロダクトやサービスの5W1Hを明確にしておくことがポイントだと思います。何を目指していて、誰に対して、何のために、どんなものを提供するのか。

そこをきちんと握っておくことができると、早い段階で受注者と発注者が同じ方向を向いて取り組むことができます。

また、クラウドワークスの事務局に連絡し、発注前の受注者面談を了承していただいたため、最初だけお互い顔の見える形でコミュニケーションを取り合い、理念を共有することで、その後の大きなすれ違いや修正の発生を防ぐことができ、スムーズに進められたのだと思います。

-クラウドワークスを使ってみて、どんな利点がありましたか

世の中には、自分が会ったことがないだけで物凄く優秀な人がいっぱいいるのだということを実感しました。

昔は、人脈など紹介に頼るしかありませんでしたが、クラウドワークスというプラットフォームであれば、家にいながらにして世界中とつながり、優秀な人や求めるスキルを得ることができます。

何か悩んだことがあれば、友達に相談する前にまずクラウドワークスで協力者を探します。また、SNSと連携させることでより良い効果が得られますね。

お仕事を募集するときFacebook上の友人にも通知されるため、適切な人材が見つかりやすいと思います。

アプリを活用した早期発見で人を救う

-「ハートリズム」のビジョンを教えてください

自分自身の健康状態を日頃から自分で把握するという世の中にしていきたいです。「ハートリズム」をツールとして、日頃から脈をチェックする習慣を広めることによって、日本人の脳卒中による寝たきりや要介護を減らすことを目指しています。

それから、世界中で「Heart Rhythm」を広めたいとも思っています。人間の身体の仕組みは人種が変わっても同じですし、人間の身体は数百年単位では変わりませんし、広めることに何年かかったとしても十分に意義のあることだと思います。

-2つ目のアプリ開発もクラウドワークスに発注いただいたのだとか。

そうですね、2つ目にリリースしたアプリは「Heart Rescue」と言います。心停止の救急においては、病院に来る前の対応が大事です。

日本では年間6万人が心停止しており、心停止した場合、心臓は15分程度持ちますが、脳は5分も持ちません。日本の救急車の平均到着時間は7分程度と言われており、救急車をただ待っているだけでは助からないのです。

このアプリを使うことで、もし目の前で人が倒れたら、スマートフォンの位置情報を利用して、今救助を求めている人の位置、AEDの位置情報、応急救護の実施ができる人を迅速にアプリユーザーにプッシュ通知で呼び出すことができます。

街中に普及しているAEDを適切に活用し、心肺蘇生の実施を促すことで、病院外で心停止する人を救いたいですね。現在、スポーツイベントや一部の自治体と共同で新しい救急システムの一つとして実証実験と行っています。

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-最後に、五十嵐さんの目指していることをお聞かせください

早期に発見できれば救える病気が世の中にはたくさんありますが、患者さん自身に自覚症状がないため、適切な治療のタイミングが遅れてしまうことが多いのが現状です。

そのような人を助けるためにも、「一次予防」に力を入れていきたいと考えています。そのため、今回の「ハートリズム」のように、病気の予防に役立つアイデアを現場のアイデアから生み出し、身近なスマートフォンアプリやデバイスを作り、世の中に広めていくことを目指していきたいです。

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