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公開日: 2019.11.18 / 最終更新日: 2020.01.06

働き方改革で活用できる助成金とは?ITツールの導入でもらえる?

働き方改革により、大企業のみならず中小企業や小規模事業者においても労働環境の見直しが必要です。企業によってはかなりのコストが発生することにもなりかねないため、うまく助成金を活用してコストを減らしていきましょう。働き方改革で活用できる助成金の中でも、IT導入補助金、時間外労働等改善助成金、地方の助成金を紹介します。

IT導入補助金とは?


働き方改革ではITツールを導入することで業務効率化を図ることができます。そこで活用できる補助金がIT導入補助金です。

ITツールの導入費用を補助

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者などの企業が業務効率化に役立つITツールを導入することで、働き方改革の実現を手助けしたり生産性向上を目指したりするための補助金制度です。2019年の公募は1次と2次に分かれていましたが、2019年11月現在はすべて終了しています。

なお、IT導入補助金は幅広い業種が対象ですが、あらかじめ規定がある「要件」に外れてしまうと申請することができません。資本金の額や出資総額、あるいは従業員数などには規定があります。業種分類を最初に確認し、その後で要件を確認するという2ステップが必要です。

補助額は申請類型によって変わる

どのくらいの金額が補助されるのかは気になるところですが、補助額は申請類型(詳しくは下記)によって変わります。A類型で申請する場合は40万円以上~150万円未満、B類型で申請する場合は150万円以上~450万円未満です。ただし、補助率はいずれの類型でも2分の1以下と決められています。

補助金の対象となるITツール

IT導入補助金で補助対象となるITツールを理解するためには、「A類型」と「B類型」のどちらに該当するのか決めておかなければなりません。業務パッケージソフト・効率化パッケージソフト・汎用パッケージソフトの中から、A類型は計2プロセス以上、B類型は計5プロセス以上をまとめて導入することが必要です。

具体的に、それぞれのパッケージソフトに該当するものは以下のとおりです。

【業務パッケージソフト】
・顧客対応、販売支援
・決済、債権債務、資金回収管理
・調達、供給、在庫、物流
・人材配置
・業務固有プロセス(実行系)
・業務固有プロセス(支援系)
・会計、財務、資産、経営
・総務、人事、労務、給与

【業務パッケージソフト】
自動化、分析(例:RPA等)

【汎用パッケージソフト】
汎用(例:グループウェア等)

なお、注意しておきたいのは、パソコンやタブレットなどのハードウェアは補助対象外ということ。さらに、独自システムを開発するスクラッチ開発や、システムを大幅にカスタマイズすることも補助対象外です。補助の対象となるITツールは、あくまでも事務局に登録されているもののみなので注意してください。

申請手続きの流れ

IT導入補助金の申請手続きの流れは以下のとおりです。

ステップ1:IT導入補助金の申請資格や要件を確認する
ステップ2:補助対象のITツールを理解する
ステップ3:導入したいITツールとIT導入支援事業者を探す
ステップ4:補助金申請の手続きを確認する

ステップ1が完了したら、補助金ホームページにてIT導入支援事業者を検索します。そして、IT導入支援事業者とITツールの選定を行いましょう。この作業と同時に、「SECURITY ACTION」のホームページ上で「一つ星」または「二つ星」のセキュリティ対策自己宣言の実施が必要です。

その後、IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待があるため、申請者情報の入力などを行います。IT導入支援事業者の入力や、その情報の確認などを経て、最終的に事務局への交付申請を提出します。

時間外労働等改善助成金とは?


働き方改革の柱のひとつに残業時間の規制があります。企業はこれに対応していかなくてはいけません。厚生労働省では、働き方改革を円滑に進めていくために時間外労働等改善助成金を設けています。

労働時間短縮に取り組む企業が対象

時間外労働等改善助成金は、中小企業や小規模事業者が時間外労働の上限規制に対応するために、生産性を向上させつつ、労働時間の短縮に取り組む事業主に対して助成されるものです。5つのコースがあり、その中から選択して申請を行います。

支援対象となるのは次の10項目で、そのうち1つ以上の実施が必要です。

1 労務管理担当者に対する研修
2 労働者に対する研修、周知・啓発
3 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
4 就業規則・労使協定等の作成・変更(時間外・休日労働に関する規定の 整備など)
5 人材確保に向けた取組
6 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
7 労務管理用機器の導入・更新
8 デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
9 テレワーク用通信機器の導入・更新
10 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

時間外労働上限設定コースの概要

時間外労働上限設定コースでは、成果目標として時間外労働時間に上限を設定し、その実現に向けた取り組みを行います。支援対象となるのは上で羅列した10項目すべてです。補助上限は200万円で、補助率は3/4です。

勤務間インターバル導入コースの概要

長時間労働を避けるために導入されるのが、勤務間インターバル制度です。仕事と仕事の間には、9時間以上のインターバルを設ける制度の導入が求められます。就業規則の改定を行い、新規導入、適用範囲の拡大、時間延長のいずれかの取り組みが必要です。

こちらのコースも支援対象となるのは上述の10項目すべてで、1つ以上は実施しなくてはいけません。補助上限は50万円で、補助率は3/4です。

職場意識改善コースの概要

職場意識改善コースでは、年次有給休暇の取得促進や、所定外労働の削減、または所定労働時間の短縮についての目標設定を行い、それを達成するための取り組みを進めます。このコースの特徴は、成果目標に対する達成状況により補助金額が変動するところです。

こちらも支援対象となるのは上述の10項目すべてです。状況によりさまざまな設定がされていますが、補助率3/4で150万円が補助上限となります。

テレワークコースの概要

テレワークコースは、労働対象者全員にサテライトオフィス、または在宅でのテレワークを実施することが達成目標となります。評価期間内で1回以上、週に平均1日以上のテレワークが目標です。ほかのコースとは異なり、支援対象となるのは以下の6つのみです。

1 テレワーク用通信機器の導入・更新
2 労働者に対する研修、周知・啓発
3 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
4 就業規則・労使協定等の作成・変更(時間外・休日労働に関する規定の 整備など)
5 保守サポートの導入
6 クラウドサービスの導入

補助上限は150万円で、補助率は3/4です。

団体推進コースの概要

団体推進コースは、商工会や商工会議所、事業組合などの事業主団体または共同事業主が対象となるコースです。労働時間の削減や賃金引き上げに向けた改善が目標となります。以下の10項目のうち、1つ以上の実施が必要です。

1 市場調査の事業
2 新ビジネスモデル開発、実験の事業
3 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)の事業
4 下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整の事業
5 販路の拡大等の実現を図るための展示会開催及び出展の事業
6 好事例の収集、普及啓発の事業
7 セミナーの開催等の事業
8 巡回指導、相談窓口設置等の事業
9 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
10 人材確保に向けた取組の事業

補助対象経費の合計から収入額を控除した額で上限500万円が補助対象となります。

地方自治体の独自の助成金は?


働き方改革に関する助成金は、都道府県や市町村などの地方自治体が支給しているものもあります。ここでは、各都道府県が公表している助成金の中でも東京・大阪・福岡の一例を紹介します。

東京しごと財団(働き方改革助成金など)

東京しごと財団の働き方改革助成金は、「TOKYO働き方改革宣言企業」に対して助成要件を満たす利用実績があった場合に支給される助成金です。

申請したい企業は、まず東京都に「TOKYO働き方改革宣言企業」の承認を得なくてはなりません。この承認を得ることのほか、全部で3つの助成条件があるため、すべてをクリアしていることが必要です。助成金支給額は、助成事業1制度あたり10万円で、上限は40万円です。詳細は東京しごと財団のホームページにてご確認ください。

東京都では、こちらの助成金のほか、「はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助事業)」、「テレワーク活用・働く女性応援助成金」などもあります。

大阪労働局(業務改善助成金)

厚生労働省の大阪労働局では、中小企業や小規模事業者の生産性向上を支援する助成金として業務改善助成金を設けています。生産性を向上するために設備投資し、最低賃金を一定額以上で引き上げた場合に、設備投資にかかった費用の一部を助成してくれる制度となっています。

助成率は、コース、引き上げる労働者数、助成対象事業場などによって異なります。この助成金を検討している企業は、ぜひ詳細を厚生労働省のホームページでご確認ください。

福岡労働局(人材確保等支援助成金など)

厚生労働省の福岡労働局では、働き方改革に関する助成金として、人材確保等支援助成金を含む全部で6つの助成金制度を設けています。たとえば、人材確保等支援助成金はさらに複数のコースに分かれており、その中の1つが「働き方改革支援コース」となっています。

これは、働き方改革に取り組んでいて人材が必要な中小企業が、新しく労働者を雇い、一定の雇用管理改善などを図る場合などに助成金が支給されます。支給額は要件によって異なり、計画達成助成だと労働者1人あたり60万円(短時間労働者は40万円)、目標達成助成だと労働者1人あたり15万円(短時間労働者は10万円)です。詳細は福岡労働局のホームページにてご確認ください。

まとめ

働き方改革を推進するにあたり、国や地方自治体ではそれをサポートをするためのさまざまな施策を用意しています。働き方改革は働き方改革関連法という法律のため、課題に取り組まずに無視していると、罰則を受けることにもなりかねません。環境を変えることはコスト発生にもつながるため、ぜひ助成制度を活用して少しでも早く円滑に働き改革を進めましょう。

実際の成功事例から紐解く、
チームの生産性がアップするポイントとは?

「働き方改革」が進む中、企業での生産性の改善は急務です。昨今の市場トレンドとともに成功事例も紹介します。

【こんな方におすすめ】
・生産性アップのポイントを知りたい
・企業のさまざまな事例を知りたい
・効果的な体制構築の方法を知りたい

伊藤孝介
セールスプロモーション会社を経て独立し、フリーランスで地方自治体や中小企業のマーケティングリサーチ、販促企画などに携わる。 業務拡大のため2017年に合同会社を設立し、現在経営中。 マーケティング系ライター歴5年。マーケティング用語の解説や、事例紹介、WEBマーケティングなどが得意。

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