少子高齢化に伴う労働力不足や、高年齢者雇用安定法の改正などを背景に、多くの企業でシニア層の就労継続が重要な経営課題となっています。そうした中、ベテラン層を有効に活用するための選択肢として注目を集めているのが「嘱託社員」という働き方です。
本記事では、嘱託社員の意味や定義、他の雇用形態との違い、嘱託社員に該当するケース、企業が嘱託社員を雇用するメリット・デメリット、法令遵守のために外せない労務管理上の注意点などを解説します。
目次
嘱託社員とは

嘱託社員(しょくたくしゃいん)は、日本の労働法において明確な定義がありません。一般的には、定年を迎えた正社員が、退職後も同じ企業に残り、特定の雇用期間や労働条件のもとで勤務を継続する「定年後再雇用」の対象者を指す言葉として広く使われています。
少子高齢化が進み、労働力の確保が困難である現代の企業経営において、自社の業務を熟知しているベテラン層を嘱託社員として雇用することは現実的かつ有効な選択肢です。
フルタイムの重い責任を伴う働き方から、週に数日だけの勤務や短時間勤務など、本人のライフスタイルに合わせた柔軟な形態に移行させるケースも多くなっています。
なお、嘱託社員を雇用する際は「有期労働契約(※)」をベースにするため、あらかじめ労働条件を明確にしないとトラブルに発展するリスクがあるので注意が必要です。
※参考:厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール」
そもそも嘱託(しょくたく)の意味とは
嘱託(しょくたく)という言葉の本来の意味は、「仕事を特定の人物に頼み、任せること」です。正社員のような無期雇用ではなく、一定の役割や業務範囲を限定し、個別に契約を結ぶスタイルを指します。
混同されやすい言葉として、委嘱(いしょく)があります。嘱託は、民間企業や公的機関において、特定の業務をこなすために雇用するケースが多いのに対し、「委嘱」は特定の役職や業務を外部の専門家に委ねる場合に使われ、雇用関係を前提としない点が主な違いです。
例えば、企業が法的なアドバイスをもらうために弁護士に依頼する場合は「委嘱」に近い形になりますが、定年退職者を事務スタッフとして再雇用する場合は「嘱託」になります。
社内の規定や雇用契約書を作成する際には、それぞれの言葉の意味やニュアンスを理解し、現場の労働者に対してどのような契約内容であるかを丁寧に説明する必要があります。
嘱託社員に該当する主なケース
嘱託社員は「定年を迎えたシニア層」というイメージが強いですが、企業の戦略や状況に応じてさまざまなケースが存在します。
ここでは、嘱託社員に該当する主なケースについて、具体的なシチュエーションを交えながら詳しく解説します。
定年を迎えた元正社員を再雇用するケース
1つ目のケースは、定年退職した元正社員を対象に、定年後再雇用の枠組みとして嘱託社員の契約を締結するシチュエーションです。
高年齢者雇用安定法の改正により、企業には希望者全員を65歳まで継続雇用する義務があるため、シニア層を戦力として維持する事例が多くあります。
例えば、製造ラインで長年勤めたベテラン社員が、60歳の定年を迎えた翌日から「嘱託社員」として同じ現場で勤務するケースが挙げられます。
再雇用に伴い、給与体系や福利厚生の適用範囲が変わることが多いため、定年の半年前など、早い段階から定年後についての面談を行うケースが一般的です。
高度な専門スキルを持つ外部人材を招聘するケース
2つ目のケースは、自社の社員ではなく、特定分野の専門知識や技術を持つ外部人材を、期間限定の「嘱託社員」として組織に招き入れるシチュエーションです。
例えば、海外展開を目指す中小企業が、大手商社を定年退職したマーケティングの専門家を「海外進出アドバイザー」として嘱託雇用するようなケースが該当します。
専門知識やノウハウを外部から取り込むことで、自社リソースのみでは達成が困難だった経営課題の解決につながることがメリットです。
外部人材を雇用する際は、本人が持つスキルを発揮できるように、社内のどこの部署と連携し、どのような権限を与えるかを、契約の段階できちんと定義しておくことが重要です。
特定の資格保有者や専門職を限定的に配置するケース
3つ目のケースは、法律によって設置が義務付けられている専門家(医師や弁護士など)を、特定の役割を果たすために限定的な勤務形態で雇用するシチュエーションです。
フルタイムの正社員として雇うほどではないものの、組織のコンプライアンスや安全管理のために必要な人材を確保する際に活用されています。
例えば、一定以上の従業員数を抱える企業において、労働者の健康管理を担う「産業医」や、高度な安全基準が求められる建設現場での「安全管理責任者」などを、週に1〜2日の勤務条件で嘱託社員として契約する事例が挙げられます。
専門職を限定的に配置する場合、専門的な判断を尊重する企業風土を現場に浸透させ、報告ラインや緊急時の連絡体制をあらかじめマニュアル化しておくことが大切です。
嘱託社員の雇用形態・労働条件
嘱託社員には法律上の定義がないため、労働契約書に条件等を明記する必要があります。一般的には有期労働契約の形態をとることが多く、労働時間や休日、給与の決定方法などは、正社員の規定とは切り離して個別に設計されます。
以下の表は、実務において標準的に採用されることが多い嘱託社員の雇用形態と労働条件の要点をまとめたものです。
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項目 |
嘱託社員の一般的な労働条件の傾向 |
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契約の期間 |
6ヶ月〜1年ごとの「期間の定めのある契約(有期雇用契約)」が主流 |
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労働時間 |
フルタイム勤務だけでなく、週3日勤務や短時間勤務など柔軟に設定可能 |
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給与体系 |
月給制、日給月給制、時給制など。現役時代から数割減額されるケースが多い |
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社会保険 |
労働時間や勤務日数が法律の基準(正社員の4分の3以上など)を満たせば適用される |
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有給休暇 |
労働基準法に基づき、勤続年数や週の労働日数に応じて正社員と同様に付与する |
嘱託社員の労働条件は選択肢がいくつかあるため、企業の状況と本人の希望をすり合わせながら柔軟に決められる点が特徴です。
ただし、給与を減額する際には、後述する「同一労働同一賃金」の観点から、業務内容や責任の範囲に相応の違いがなければ不合理と判断されるリスクがあります。
定年後の再雇用の場合、定年前の有給休暇の残り日数は退職によって消滅せず、嘱託としての契約後もそのまま引き継がれることを忘れないようにしてください。
嘱託社員に期待する役割
嘱託社員を雇用する際は、具体的な役割や責任の範囲について定義します。
代表的な役割の一つは、若手・中堅社員への技術承継と、メンターとしての機能です。
現場のノウハウやトラブルへの対応力、顧客との長年の信頼関係を維持するコツといった暗黙知を、日々の業務を通じて後輩に伝授していく役割が期待されます。
責任の範囲としては、組織のマネジメントや重い決裁権限からは退き、一人のプレイヤーとして業務に専念してもらう形をとることで、精神的な負担を軽減することが可能です。
売上目標のような定量的数値ではなく、「どれだけ後輩の育成に貢献したか」や「業務の効率化に向けたアドバイスを行えたか」といった定性的な評価を重視する傾向にあります。
定年後について面談する際は、「これまでの経験を活かして、ぜひこのプロジェクトの相談役や若手の育成を担ってほしい」と、期待する役割を伝えることが大切です。
嘱託社員と他の雇用形態との契約内容・業務範囲の違い

嘱託社員を雇用する場合、既存の正社員、契約社員、パート・アルバイトと、具体的に何が異なり、どこで線を引くべきなのかをマニュアル化しておく必要があります。ここでは、それぞれの雇用形態との違いについて解説します。
嘱託社員と正社員(無期雇用労働者)の違い
嘱託社員と正社員の違いは、「雇用期間の定めの有無」と「業務における責任の重さおよび人事異動の範囲」にあります。
正社員は、原則として会社が倒産するか本人が辞職しない限り、定年まで雇用が続く「無期雇用」を前提としています。これに対し、嘱託社員は、期間が限定された契約(有期雇用契約)であることが一般的です。
また、正社員には部署異動・転勤や、役職に伴う重い決裁責任、トラブル発生時の対応責任が課されますが、嘱託社員は契約時にあらかじめ合意した「特定の限定された業務」のみを遂行し、転勤や大幅な職種変更の命令を受けることは原則としてありません。
そのため、同じ職場・同じ時間で働いている社員に、「責任範囲の違い」について説明しておくことが大切です。そうしなければ、「あの人は元部長なのに、なぜ今は責任のある仕事をしないのか」といった、現場の不満や誤解を生む原因になってしまいます。
嘱託社員と契約社員(有期雇用労働者)の違い
嘱託社員と契約社員は、法律上の区分においてはどちらも有期雇用契約に該当するため、本質的な仕組みに大きな違いはありません。
しかし、日本の一般的なビジネス慣行や企業の実務運用においては、「採用の背景」や「対象となる人物の性質」に違いがあるといえます。
契約社員は、専門スキルを持つ人材を雇用する場合や、フルタイムで働ける人材を募集する際に活用され、年齢層は20代から40代などの現役世代が中心です。嘱託社員は、自社の人間関係や業務プロセスを理解しているシニア層(定年退職者)を対象としている点が異なります。
また、契約社員はキャリアアップや正社員登用を目指して勤務することがあるのに対し、嘱託社員はこれまでのキャリアのソフトランディング(軟着陸)として、負担を減らしながら長く働くことを目的とするケースが多いという違いもあります。
契約社員には入社後の初期研修や業務のレクチャーが必要ですが、自社出身の嘱託社員であれば、すぐに即戦力として機能するため、現場の管理負担を低く抑えることが可能です。
社内規定を整理する場合、契約社員と嘱託社員では就業規則上の対象者となる年齢や就労目的が異なるため、それぞれ分けて作成しておきましょう。
嘱託社員とパート・アルバイト(短時間労働者)との違い
嘱託社員とパート・アルバイトの主な違いは、「労働時間の長さ」と「任される業務の専門性やスキルのレベル」です。
パート・アルバイトは、所定労働時間が正社員に比べて短い「短時間労働者」であり、主に飲食店や小売店の店舗スタッフ、オフィスでの単純な事務補助など、マニュアル化された定型業務を担うケースが一般的です。
嘱託社員は、勤務時間自体は短時間になる場合もありますが、元正社員や有資格者としての高い専門性や、長年の経験に基づいた判断力が求められる非定型業務を任される点が大きく異なります。
例えば、経理部門の場合、伝票の入力作業は時給制のアルバイトに任せて、決算書の作成や税務署対応の相談といった、専門知識が必要な業務は元経理部長の嘱託社員に委ねる、といったケースが挙げられます。
パート・アルバイトと嘱託社員が同じフロアで働く場合は、給与体系(時給か日給月給かなど)や職責の違いが明確であるため、お互いの業務の境界線をワークフロー上で可視化し、指示系統の混乱が起きないよう配慮しましょう。
関連記事:【今後に注目】パートとアルバイトの違いを解説。雇用するうえでの注意点とは?
企業が嘱託社員を雇用するメリット
ここでは、企業が嘱託社員を雇用するメリットをいくつか紹介します。
自社の業務・文化を熟知した即戦力人材の継続確保
企業が嘱託社員を雇用するメリットは、自社の業務プロセスや企業文化、顧客の特性などを理解している即戦力人材を、ブランクなしで継続的に確保できることです。
外部から中途採用を行う場合、優秀な労働者であっても、自社のシステムに慣れ、社内の人間関係を構築し、独自の企業文化に馴染むまでに数ヶ月から半年の時間がかかります。
しかし、定年退職者を嘱託社員として再雇用する場合、適応期間(オンボーディング)のコストを削減できることがメリットです。企業の営業機会の損失を防ぎ、業務の安定性を高い水準で維持することができます。
嘱託社員の持つ「マニュアル化されていない暗黙知」を社内に残すために、社内wikiやデータベースに蓄積し、形式知化することが大切です。
新規採用にかかる求人広告費や育成コストの劇的な削減
2つ目のメリットは、人材を雇用する際にかかる「新規採用コスト」や「教育・育成コスト」を削減できることです。
有効求人倍率が高止まりしている現代において、外部から優秀な経験者を採用しようとすると、求人広告費や人材紹介会社への手数料(想定年収の35%前後など)として、1人あたり数十万から数百万円のキャッシュアウトが発生します。
これに対して、嘱託社員の雇用であれば、自社内での労働契約の切り替え手続きのみで完了するため、採用媒体への費用がかかりません。すでに業務に必要なスキルや資格を保有しているため、導入研修やOJTといった社内のリソースを割く育成コストも不要となります。
削減したコストを、現役正社員のスキルアップ研修や、嘱託社員が働きやすいようなオフィスの環境整備(バリアフリー化やPC画面の見やすさ改善など)へ投資することで、生産性の高い環境を構築することが可能です。
正社員雇用と比較した人件費(固定費)の柔軟な最適化
3つ目のメリットは、正社員をフルタイムで維持し続ける場合と比較して、会社の業績や市場の状況に応じた人件費の柔軟な最適化が可能になることです。
正社員として雇用した労働者の給与を引き下げたり、解約(解雇)したりすることは困難であるため、人件費は「固定費」としての性質を持ちます。
しかし、嘱託社員は有期雇用契約であるため、契約更新のタイミング(例:1年ごと)において、会社の状況や本人の体力・希望に合わせて、勤務日数を週5日から週3日に減らしたり、それに伴って給与額を適正な水準に調整したりすることが法的に認められています。
また、定年後の再雇用であるため、正社員時代の役職手当や賞与(ボーナス)の比率を見直し、基本給ベースのすっきりとした報酬体系に移行することが一般的です。
給与に関する交渉を行う際は、コストカットを前面に出すのではなく、本人の「責任の軽減」や「休日の増加」といったライフプラン上のメリットとセットで提示し、双方が納得できる着地点を模索することが大切です。
ベテランから若手・中堅へのスムーズな技術承継とメンター効果
4つ目のメリットは、組織内の世代交代を円滑に進めるための「技術承継」と、若手社員の精神的な支えとなる「メンター効果」を同時に得られることです。
多くの企業が直面するリスクとして、優秀な正社員が定年で一斉に退職した結果、現場のノウハウが途絶えてしまい、重大なミスが多発するという「技術の絶壁」問題があります。
例えば、設計部門において、複雑な図面の作成は若手正社員に任せ、元チーフの嘱託社員がダブルチェックやアドバイスを行うというシチュエーションが挙げられます。
また、人生経験が豊富なシニア層は、若手社員が仕事やキャリアで悩んだ際の良き相談相手としても機能し、社内の人間関係を円滑にするバランサーの役割を果たします。
メンターとして役割を期待する場合、嘱託社員に対して「若手の指導実績」を評価項目として設定してください。自分の役割が教育にあると認識することで、ベテラン特有の「自分の仕事を抱え込む」悪癖を防ぎ、積極的なノウハウ開示を促すことができます。
企業が嘱託社員を雇用するデメリット
嘱託社員の雇用には多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。
現役時代との給与格差による就労モチベーションの低下
1つ目のデメリットは、正社員時代と比べて給与や待遇が大きく下がることにより、嘱託社員本人の就労モチベーションが低下してしまうことです。
定年後再雇用では、業務内容が大きく変わらない場合であっても、年金との兼ね合いや会社の賃金規定により、年収ベースで3割〜5割程度ダウンするケースも少なくありません。
本人の心理として、「仕事内容は昨日までと同じなのに、給料だけが半分になった」と感じてしまうと、業務に対する責任感が薄れてしまいます。
対応策として、給与を下げるのであれば、それに比例して責任の範囲(決裁権を持たせないなど)を狭めるか、労働時間・日数を減らすという対価のバランスをとることが必要です。
また、高年齢雇用継続給付や、年金の仕組みを会社側が丁寧に試算し、「どれくらいの手取りになるか」を共有するなど、労務面でのサポートが求められます。
過去の役職へのこだわりによる周囲との人間関係の摩擦
2つ目のデメリットは、嘱託社員が過去の役職や社内での上下関係を捨てきれず、現在の直属の上司(かつての後輩や年下の正社員)とトラブルになる可能性があることです。
例えば、「俺の時代はこうじゃなかった」や「そのやり方は間違っている」などと口を挟み、現場の指示系統を混乱させてしまうシチュエーションがあります。かつての上司に対して強く指示を出せず、腫れ物に触るような対応になるケースも少なくありません。
対応策として、定年前の面談で「再雇用後は役職を離れ、一人のプレイヤーとして新しい管理職の指示のもとで動いてもらう」という役割を明確にする方法が有効です。
管理職に対しても、嘱託社員への正しいアプローチの仕方などのマネジメント研修を実施し、現場が萎縮しない環境を作りましょう。
最新のITツールやデジタル技術への適応の遅れ
3つ目のデメリットは、新しく導入されるITツールや最新のクラウドシステムなどのデジタル技術への適応が遅れ、業務のボトルネックになってしまうことです。
例えば、嘱託社員が「使い方が分からない」や「昔のやり方のほうがやりやすい」と頑なに拒否したり、入力漏れやミスが頻発したりするシチュエーションが挙げられます。
これにより、チーム全体の情報共有のスピードが鈍化し、正社員がそのフォローのために時間を奪われるという状況になってしまいます。
対応策として、嘱託社員専用の分かりやすいマニュアルを大きな文字で作成したり、個別に対面で教える勉強会を開催したりする丁寧なオンボーディングが必要です。
また、どうしても適応が難しい場合は、ITツールを必要としない、アナログな職人技や顧客対応を任せて、デジタル業務は若い世代が巻き取るという、職務の切り分けを検討しましょう。
組織の若返りや若手社員の昇進・成長機会の停滞
4つ目のデメリットは、上位のポジションに嘱託社員が長く居座り続けることによって、組織の若返りが進まず、若い正社員の昇進チャンスや成長機会を奪ってしまうことです。
例えば、「自分がいないとこの仕事は回らない」と嘱託社員が業務を独占し続けていると、30代・40代の中堅正社員がコア業務に挑戦できず、キャリアの頭打ち感からモチベーションを低下させ、他社へ流出(離職)してしまう場合もあります。
対応策として、嘱託社員の契約書に「後継者の育成」を義務付ける文言を盛り込んでください。自分が抜けても回る組織を作ることが役割であると定義し、若手への権限委譲を促します。
また、嘱託社員の雇用期間に上限(最長で通算5年など)を設けておけば、組織の代謝を計画的にコントロールすることが可能です。
嘱託社員を雇用する際に注意すべき法的要件

法律違反(労働法規の不適用)とみなされると、労働基準監督署からの是正勧告や、損害賠償の裁判など、企業の社会的信用を失墜させるトラブルに発展する可能性があります。
嘱託社員に関するトラブルを回避するために、法的要件を事前に把握しておきましょう。
同一労働同一賃金の原則(不合理な待遇格差の禁止)
まず、短時間・有期雇用労働法に基づく「同一労働同一賃金」の原則が挙げられます。
同一労働・同一賃金とは、同じ企業内で働く正社員と有期雇用労働者(嘱託社員など)との間で、基本給や賞与、手当、福利厚生などのあらゆる待遇について、「不合理な格差」を設けてはならないという法律です。
最高裁判所の過去の判例(長澤運輸事件など)において、「定年後の再雇用であること」という理由だけで、機械的にすべての手当を全額カットしたり、給与を激減させたりすることは違法(不合理)と判断されるリスクがあることが明示されています。
待遇に違いを設ける場合は、正社員と嘱託社員との間で、業務の内容(職務内容)や当該職務に伴う責任の程度、転勤や異動の範囲(配置の変更の範囲)に、格差に見合うだけの明確かつ客観的な理由が存在しなければなりません。
そのため、自社の賃金規定や手当の支給基準を点検し、個々の手当(例:通勤手当、役職手当、家族手当、精勤手当など)について、なぜ嘱託社員には支給しないのか(あるいは減額するのか)という理由を説明できるように書面で整理する必要があります。
とくに通勤手当・皆勤手当は、嘱託社員であっても正社員と同一に支給しなければ違法とみなされる可能性が高いため、支給対象に含めるようにしましょう。
参考:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
5年を超えた有期雇用に適用される「無期転換ルール」の把握
労働契約法第18条に定められている「無期転換ルール」にも注意が必要です。
無期転換ルールは、同じ企業との間で有期労働契約が更新されて「通算5年」を超えた場合、労働者側からの申し込みがあれば、期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)へと転換しなければならないというルールです。
嘱託社員を1年契約で何度も更新し、気づけば6年目、7年目と突入している場合、本人が「無期雇用にしてください」と手を挙げれば、企業は拒否することが法的にできません。
そのため、定年後再雇用の高齢者に関しては、都道府県労働局に「有期雇用特別措置法」に基づく計画申請を行うようにしましょう。
特例の認定を受けることで、定年後に引き続き雇用されている期間中は「無期転換ルールの対象外(カウントされない)」とする法的な免除を受けることが可能です。
契約更新の期待を裏切らないための「雇止め法理」への留意
労働契約法第19条に明文化されている「雇止め法理」についても把握しておきましょう。
有期雇用契約である嘱託社員に対して、企業側が「次の契約は更新しません」と契約を終了させることを雇止めと呼びますが、過去の勤務実態や本人の期待度合いによっては、法的に無効(解雇権の濫用と同様の扱い)と判断されることがあります。
例えば、何度も自動的に契約が更新されており、実質的に無期雇用と変わらない状態の場合や、上司が面談などで「来年もよろしく」などと発言し、本人に合理的な期待を抱かせていた場合、正当な理由がない限り、一方的な雇止めは認められません。
そのため、契約更新を形式的な手続きで済ませるのではなく、本人のパフォーマンスや健康状態を確認する「評価面談」を実施し、その都度契約書を取り交わすことが重要です。
また、契約書の中に、更新基準(会社の業績、本人の勤務態度、健康状態などにより判断する)を明記し、更新上限(例:最長で65歳までとする)を設定しておきましょう。
スムーズな人材確保には「クラウドワークス」もおすすめ

嘱託社員を雇用すると、自社のナレッジの維持やコスト削減においてメリットがありますが、法的要件を満たす必要があり、管理の手間がかかります。クラウドソーシングサービス(※)を活用すれば、経験豊富な人材へスムーズに業務委託することが可能です。
なかでも日本最大級の「クラウドワークス」は登録者数700万人を超えており、元大手企業の部長職を務めた営業のスペシャリスト、法務や人事の労務管理に詳しい専門家、デジタルツールを使いこなせる若手のIT人材などを広く探すことができます。
クラウドワークスを利用した業務委託契約であれば、労働法上の「労働者」を直接雇う雇用形態ではないため、同一労働同一賃金や無期転換ルールといった複雑な労働法の適用範囲から外れ、労務管理に関する企業側の法的リスクを抑えることが可能です。
必要な期間のみ・必要なボリュームの業務を委託できるため、自社の予算や求めるリソースに合わせて柔軟に発注することができます。まずは無料で会員登録を行い、どのような実績・スキルを持つ人材がいるかをチェックしてみてはいかがでしょうか。
(※)クラウドソーシングサービスとは、仕事を外注したい人・受注したい人をインターネット上でマッチングするサービスのこと
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嘱託社員に関するよくある質問
嘱託社員は何歳まで働けますか?
嘱託社員が何歳まで働けるか(雇用の年齢上限)は、法律上では定義されていません。ただし、高年齢者雇用安定法により、企業には「65歳までの雇用確保措置」が義務付けられているため、多くの企業では実務上、65歳を基準として定めています。
しかし、65歳以降であっても、嘱託社員の能力や健康状態を評価し、本人も働く意欲を持っている場合であれば、70歳や75歳、あるいは年齢制限なしで、1年ごとの契約更新で勤務を継続してもらうことは可能です。
嘱託社員にボーナスはありますか?
嘱託社員にボーナス(賞与)を支給するかどうかは、各企業の賃金規定や雇用契約書の内容によって決まります。
法律で支給が義務付けられているわけではないため、「支給しない」という制度設計にすることも法的には可能であり、数万円程度に減額するケースが一般的です。
嘱託社員のボーナスを不支給、または減額にするのであれば、正社員との間に「職務内容や責任の範囲、貢献度の測定方法において、どのような違いがあるのか」を明確に区分し、それを本人に対して雇用契約時に口頭および書面で説明する必要があります。
まとめ
本記事では、嘱託社員の定義や他の雇用形態との違い、企業が嘱託社員を雇用するメリット・デメリットなどを解説しました。
嘱託社員を「定年後の延長雇用」という義務感で捉えるのではなく、組織の世代交代や技術承継をスムーズに進めるためのメンターとして位置づけ、ノウハウを活かす設計を行うことが大切です。
外部人材を活用したい場合は、クラウドソーシングサービスを外注の窓口として利用することで、様々な実績・スキルを持つプロフェッショナルを広く探すことができます。任せたい業務やリソースを整理したうえで、嘱託社員を雇用するか、クラウドソーシングを利用するかを検討してみましょう。



