私は元々事務所に所属する声優でした。ですが、現在はフリーで、在宅声優をしております。その経緯を今回は書かせていただきます。私と似たような境遇で悩んでいる方がいるならば、需要のあるネットの世界に飛び込む足がかりになれたら幸いです。
華々しい声優業界の裏にある厳しい仕事システム
声優の世界は一見華々しく、魅力にあふれ、とても稼げる職業に思われます。しかし、実際は声優の業界はとても厳しく、ピラミッド式のギャラとランクのシステムが存在します。
ご存じない方のために簡単に説明しますと、プロの声優は最初は全員新人扱いでスタートします。最初の3年間(現在はわかりませんが当時のお話です)は「ジュニア」というランクで仕事をいただきます。ジュニアは大抵のギャラが1本につき1万5000円で固定されています。主役でも、一言の通行人でも一律でこのギャラになります。
3年経つと自動的にランクがあがります。そこから経験年数でランクが上がる為、最高のAランクまで上がるとギャラもジュニアランクの3倍の4万5000円まで上がります。さらにその上もあり、ここまでいくとギャラに関しては芸能人同様に交渉で決定されるようになります。そのため、一部の有名声優の中には年収が何千万円や億単位という人もいるようです。
これをふまえてこの先を読んでいただけましたら幸いです。
ジュニア期間は、実力がそれなりにあればそこそこのお仕事が舞い込んできます。安く、上手い子をクライアント様は使いたいのです。これはどの現場でも同じかと思います。
ですが、3年たったとき自然とギャラが上がるので、その3年でギャラが上がってでも使いたい人材でいなくてはならないのです。似たような声、実力のジュニアがいるとそちらにお仕事は流れていくのです。ランクだけがあがり仕事は舞い込んでこなくなるとても厳しいピラミット(ランク)制が声優の世界です。
収録中に発覚した病気
さて、仕事が無くなる理由は様々存在します。
珍しいことですが、私が仕事を失った原因は、病気でした。私は片耳が難聴です。
とあるアニメの収録中に自分の異変に気付きました。外国アニメのアフレコ現場の為、片方の耳にヘッドフォンをし外国語を聞き、反対の耳では他の声優さんのお芝居を受けながら収録していました。ところが、マイクの前に立った私にヘッドフォンの音が大きすぎるので小さくしてほしいとの指示が出ました。
かなり小さくしているつもりでしたが何度も注意され、仕舞にはほぼ聞こえない状態で演技をしました。何度も注意され、スタッフを怒らせてしまった現場で、マネージャーと一緒に平謝りしたのを忘れません。
その時はなぜ聞こえないのかも分かっておらず、悔しくて仕方ありませんでした。『私は悪くないのに、機械がおかしかったのではないのか?』と思ったりもしました。
きちんと調べて分かったこと、それは左の耳の難聴でした。
今思えば、声優はアニメや外画のアフレコだけではなく、片耳が使えればできる仕事もあったのですが、挑戦させてもらえませんでした。当時はショックが大きく、円形脱毛症になるくらい悩みました。すぐに諦めきれずに、舞台等のお仕事や、エキストラ等…声優とは少しかけ離れた事もやりました。
事務所にいれば、CM、ナレーション等違う形で仕事がもらえるのではないだろうかと期待し、食らいつきました。
が、色々必死になり無理がたたり、声帯結石にもなってしまいました。これを機に、様々なお仕事が減って行きました。しかし年数ばかり経過し、ランクは上がってしまいました。
もう仕事はこない…そう思い事務所もやめました。事務所を辞めたのでピラミッド式である日本俳優連合から登録も削除されました。
私の声優人生に幕を引いた…つもりでおりました。
在宅声優業との出会い
そんな私に転機がありました。イラストレーターの友人が在宅で仕事をしていたのです。その友人が『声の仕事も少しあるからやってみたら?』と言ってくれたのです。
目から鱗でした。
ネットの世界に仕事があるなんて。在宅で声優ができるのか不安しかありませんでした。
が、クラウドワークスに出会い考えは変わりました。
病気などによる挫折の結果、在宅で『声優』を選びました。
数年間かけて継続して努力してきた『演技力』という武器を持ち、在宅声優という世界に飛び込みました。最初は勝手がわからず、スマートフォンにマイクをつなぎ収録しておりましたが、このままでは遊びになってしまうと思い、思い切って初期投資。
マイク等々2万円で揃えました。
在宅声優にとって、音質はとても大事でした。マイクにしてから仕事がやっと取れました!初めてのお仕事は電話のガイダンスでした。
全くお互いを知らない方と、仕事の交渉を自分でし、納品音声を採用をいただいたときの感動は今でも忘れません。まだ相場も知らず、クラウドワークスの使い方もぎこちなくPCの前で頭を下げ下げ必死にこなしました。
それが今年の2月でした。
それが3月には仕事が2本に増えました。
どんなお仕事が来たかを振り返ってみると色々あります。企業のPV、CM、ナレーション、音声ガイダンス、防災音声、アプリ音声、歌、朗読等々。
在宅で色々なことにチャレンジさせていただいております。
今では月に何本もお仕事を下さるクライアント様もいらっしゃり、とてもありがたいです。
はじめはお互い知らない者同士ですが、やり取りで、クライアント様の人柄が分かり楽しくお仕事ができ、素敵な出会いが沢山ありました。在宅声優をはじめて、こんなにも声に需要があることを知りました。
つい最近、クラウドワークスの週刊契約数ランキングにも掲載いただけうれしかったです。
と、言いましてもジャンル的に募集も少なく、現在はクラウドワークスだけで言うと月に10〜15契約程度です。活動日数はリテイクにもよりますが、大体週3日くらいでしょうか。
そして気になる月収ですがプロ声優に比べたら格安です。
在宅でお小遣い稼ぎの気持ちでやっております。作品の募集や内容によりけりですが月収で言うと2万〜5万です。1本50円の仕事から、1本4万という仕事が合ったりする業種ですので。
月収は安定しませんが、在宅なので、声優以外にもやりたい仕事を始めることができ日々充実しております。
事務所所属の声優か、在宅フリーの声優か
事務所時代との違いのひとつはマネージャーの有無にあります。
事務所の場合はマネージャーとのコミュニケーションがとても大事でした。実力がいくらあっても、仕事をくれるマネージャーに自分を覚えてもらわないと仕事になりません。
新人の声優はマネージャーに自分を覚えてもらうために必死になったり、ここでは書ききれないくらい色々な問題がでてきます。私はスカウトしてくださったマネージャーがいましたので最初は順風満帆でした。
が、途中マネージャーがやめることになりました。
色々な問題上、私はそのまま事務所に残ることになりましたが、新しいマネージャーとの信頼関係を築く等容易ではありませんでした。
事務所所属だとマネージャー関係で色々大変でした。在宅では自分がマネージャーであるため大変な部分も勿論ありますが、ぐいぐい自分を自由に売り込むことができます。
在宅は自分のやってみたい仕事を自分で選べるのもとてもよい点です。マネージャーありきですと、仕事は正直選べませんでした。
働き方もかなり違います。
事務所の場合は、仕事が来る→台本を貰いに出向く→本番当日スタジオに行く
事務所や現場に向かう時間と交通費がかかります。
在宅の場合は、仕事が来る→PCで台本を確認→納期までに好きなタイミングで収録
空いた時間に練習、収録が可能です。
いかにも声優としての華はありませんが、在宅で効率的に声を使いお金を稼ぐことはできるのです。
私が在宅で『声優』を選んだ経緯は少し特殊ですが、同じように悩んでいる方が、これを読んで新しい世界に飛び込めたらうれしく感じます。
人には色々な転機があります。
このコラムが誰かの転機になれたら幸いです。
そして、こんな私だからこそ、表現できるものがあると思っています。
クライアントの皆様、お仕事、ご相談お待ちしております。
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