【税理士解説】財務諸表とは?その見方と抑えるべき3つのポイント

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「うちの会社は安泰なのだろうか?」漠然とそんな不安を覚えてことはありませんか。また調べようと思っても「何を手掛かりにして調べればいいのか」。そのような疑問を現役の税理士が3つの指標に絞って分かりやすく解説していきます。

財務諸表は会社経営や投資判断を行うための重要情報

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突然ですが、皆さんは車を運転する時、何を見ますか。

信号機やスピードメーター、ガソリンメーター等ですよね。スピードを出そうか、それともガソリンが少ないからここは省エネ運転でにしようか等、様々な「情報」を確認して車を運転するのではないかと思います。スピードメーターが壊れている、ガソリンメーターが無い等、必要な情報が手に入れられない中での運転は非常に怖いものです。

では、会社を経営する時、もしくは転職時や自分の勤めている会社が安泰なのかを確認する時には、どのような「情報」見れば良いのか。それこそが財務諸表になっています。財務諸表には会社経営や投資判断する上で重要な情報が記載されているのです。

財務諸表は大きく分けると、以下の3つのものから構成され、財務3表と呼ばれています。

1.貸借対照表

2.損益計算書

3.キャッシュフロー計算書

以下でそれぞれ説明をしていきたいと思います。

会社の価値を判断できる「貸借対照表」

会社の価値を判断するには貸借対照表を見ます。

・お金がいくらあるのか

・設備投資をいくらしているのか

・借金がいくらあるのか

・資本金はいくらあるのか

こういった情報を知るためには貸借対照表を見る必要があります。

会社の利益が分かる「損益計算書」

「会社がいくら利益を出しているのか」を知るには損益計算書を見ます。

利益は「ある一定期間の売上から、その期間の売上を生み出すのにかかった費用」を差し引いて計算します。

また本業以外の利益、例えば本社ビルを売却して生み出された利益も損益計算書に記載されます。

お金の流れが可視化されている「キャッシュフロー計算書」

その名の通り、お金の流れを知るにはキャッシュフロー計算書を見ます。どのような理由でキャッシュが増えて減ったのかが分かります。

キャッシュが増える理由は1つではありません。

・本業の儲けなのか

・借金によるものなのか

・それとも出資を受けたのか

同じようにキャッシュが減る理由も

・本業の支出

・借金の返済

・設備投資

・過剰在庫

等1つではありません。

ある期間のお金の流れを知るにはキャッシュフロー計算書を見る必要があります。

財務諸表を見れば分かる、その会社は安泰・危険を見極める3つの指標

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会社を経営するとき、もしくは転職時や自分の勤めている会社が安泰なのかを確認する時、どのような情報に着目すればよいでしょうか?

売上高や利益等が増収増益している会社は成長している会社として評価されるでしょう。しかし、増収増益であるけれども、過大な設備投資で借金の返済に苦労しており、実は会社に体力が無かった、というケースもあります。

そこで、財務諸表を見て、その会社が「安泰であるのか」「危険なのか」を見極める3つの指標をお伝えします。

倒産寸前かを見極める「流動比率」

倒産寸前になると目先の資金繰りに必死になります。資金工面で精一杯なので本業には身が入らない状態となっています。その場合、何を確認すればよいでしょうか。

まず、流動比率を確認しましょう。流動比率は「短期的(1年以内)な支払い能力」を確認する指標です。

具体的な計算式としては、「流動資産÷流動負債」となっており、より大きい数値の方が良いとされています。

以下、流動比率の安全・普通・危険の目安です。

危険:100%以下

普通:120%~140%

安全:140%以上

堅実な経営をしてきたかを見極める「自己資本比率」

創業当初はどの会社でもお金はありません。銀行からお金を借りて、人や設備に投資をして、稼いだお金で借金を返済し税金を払う。そうやって少しずつ会社の体力はついていきます。

堅実な経営を行っている会社は体力がある、つまり、自己資本比率が高いと言えます。自己資本比率は「会社の健全性、長期的な支払い能力」を示す指標です。

具体的な計算式としては、「自己資本÷総資産」となっています。30%以上が目標で、より大きい数値の方が良いとされています。

以下、自己資本比率の優良・注意の目安です。

注意:20%以下

優良:30%以上

投資上手で効率的に稼いでいるかを見極める「総資産利益率(ROA)」

会社は将来にわたって成長し続けなければなりません。単純に売上を上げればよい、利益を出せばよいというわけではありません。50億円の設備投資をして500万円しか利益が出ないようであれば、銀行に預けて利息をもらった方が良いでしょう。

そこで、上手に設備投資をして効率よく稼いでいるかどうかを確認するためには、総資産利益率(ROA)見ましょう。資産利益率(ROA)は「投下された資産がどれだけ利益を出したか」を示す指標です。

具体的な計算式としては、「当期純利益÷総資産」となっています。7%以上が目標で、より大きい数値の方が良いとされています。

以下、資産利益率(ROA)の優良・普通・注意の目安です。

危険 0%以下

普通 2~3%

優良 7%以上

財務諸表を出している会社と出していない会社がある

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財務諸表はすべての会社が公表をしているわけではありません。

上場会社の財務諸表であれば、インターネットなどで誰でも自由に閲覧することができます。一方、中小企業・非上場会社は特定の株主等しか閲覧することができません

上場会社は世界中の人から投資をしてもらい資金調達を行うために、財務諸表を通じて、安全性、収益性などの情報を開示していますが、中小企業・非上場会社は投資をしてもらうことを期待していないので、財務諸表を開示する必要がないためです。

しかし、最近では中小企業・非上場会社であっても、従業員に「経営者意識を持ってもらいたい」などの理由から、財務諸表の一部を開示している会社もあるようです。

まずは気になる会社の財務諸表を覗いてみましょう

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本稿では財務諸表は財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)から成り立っていること、会社を見きわめる指標として「流動比率」「自己資本比率」「総資産利益率(ROA)」が有効であることを解説しました。この他にも様々な指標があり、財務分析に活用しています。まずは、気になる会社の財務諸表を確認するところから始めてみてもいいかもしれませんね。

【執筆者】
神谷 智道(こうや ともみち)

福岡の中堅税理士法人に入社し、法人・個人の一般事業会社及び特殊法人の顧問業務に従事。その後、北九州の税理士事務所にて医業・製造業・小売業・不動産業・飲食業・理美容業・サービス業など幅広い業種の顧問業務を担当。特に、法人税・所得税・相続税等、各種シミュレーションに基づいた総合的な事前予測・対策を強みとしている。その傍ら、事業承継対策における自社株式の評価や相続税申告及び相続対策などの資産税業務も行う。

現在、税理士法人アイユーコンサルティングの北九州事務所長として新規顧客の開拓、キャッシュフロー改善コンサルティング、助成金活用サポート等を担当し、既存顧客の資金不安を解決させ企業成長をサポートするため経営者の身近なアドバイザーとして活躍中。

▶所属している税理士法人:
税理士法人 アイユーコンサルティング