【税理士解説】源泉徴収票の見方や社会人でも意外と知らない活用術

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「今年度の自分の収支はいくらなのか」、企業であればいざ知れず、個人ではっきりと回答できる方は少ないのでは無いでしょうか。ここでは、知ることでお金に対する意識を変えることができる、自分の収支に関わるような数字を、現役の税理士が解説していきます。

源泉徴収票にはお金に関する情報が数多く記載されている

源泉徴収票とは、簡単に言うと「支払った所得税の確認することができるシート」です。また、所得税の他にも、1年間の収入が記載されています。そして、その他 にもお金に関する多くの情報が記載されています。

まずは、記載されている主な情報を確認してみましょう。

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1.支払金額:年収金額

2.源泉徴収税額:1年間で給与から天引きされた所得税(復興特別所得税含む)

3.社会保険料等の金額:1年間で給与から天引きされた社会保険料等の金額

4.生命保険料の金額の内訳:1年間で支払った生命保険料の金額

5.控除対象配偶者 等:所得控除の対象となる配偶者や扶養親族の情報

様々な情報が詰まっている源泉徴収票ですが、ここでは自分の収支に関わる数字だけを抜粋してご紹介します。

一般的に、年収の75%~80%が手取り

よく耳にする「年収」や「手取り」という言葉。これらの言葉には違いがあり、意外にもしっかりと把握している方は多くありません。まずは、これらの言葉の違いから解説していきます。

1.年収:勤務先から受け取るお給料の合計金額。額面年収とも言う。

2.手取り:年収から所得税、住民税及び社会保険料等を差し引いて支給される金額。

よく経済誌が発表する「年収ランキング」等で掲載されている金額はこの①の金額を指しています。

したがって「年収金額がそのまま支給されるわけではない」ということがポイントです。

では、手取り(②)は年収(①)の何%くらいになるのでしょうか。一般的には「年収の75%~80%」くらいが多いと言われています。しかし、天引きされる所得税、 住民税及び社会保険料等の金額は、その人の年収や家族構成等によって大きく変わるので、あくまで目安として捉えてください。

手取り金額は簡易な計算で把握できる

私が税理士として仕事をする中で「手取り金額は、源泉徴収票のどこを見れば分かりますか」というご質問をよくいただきます。

それもそのはずで、実は源泉徴収票に手取り金額は記載されていないのです。しかし、簡易な方法であれば計算をすることができますので、ここで覚えてしまいまし ょう。

手取り金額の調べ方と計算方法

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手取り=①年収-②源泉徴収税額-③社会保険料等の金額-④住民税の額

「①年収」「②源泉徴収税額」「③社会保険料等の金額」は上記の通り、源泉徴収票に記載があります。

しかし、「④住民税の額」だけは源泉徴収票には記載されていないため、面倒ですが1年分の給与明細を見返した上で計算をしてください。

実際に計算をしてみるとイメージが湧きやすいと思いますので、計算してみましょう。上記のサンプルの場合、

手取り=①6,835,000円-②180,900円-③992,454円-④289,700円※=5,371,946円

となり、年収よりも手取りが1,000,000円以上も少ない計算となります。
※住民税の額は概算金額

あくまで簡易的な計算方法ですが、「他に事業をやっている」等の事情がない限り、大幅にずれることは少ないです。

手取り金額の他にも簡単な計算で分かるもの

また、「手取り金額」を把握できたところで、今度は「1年前の預金残高」と「今の預金残高」を比べてみて下さい。これらを比較することで、「1年間の貯金増加額 」が分かります。

その他にも、「手取り金額」から「1年間の貯金増加額」を差し引けば、「1年間で使った金額」を把握することも出来ます。

源泉徴収票の原本は5年間の保存が推奨

情報が盛りだくさんの源泉徴収票ですが、いつまで保存しておく必要があるのでしょうか。

原則、会社員の方にとっての保存義務はありません。また、確定申告書を提出する方は原本の提出が求められますので、その時点で原本は手許から離れます。

ただし、次のような場合も考えられますので、念のため5年間は源泉徴収票の原本(確定申告書を提出する方は写し)を保存しておくことをおすすめします。

・住宅ローンを検討する方:金融機関から過去3年分の源泉徴収票の提出を求められる場合が多い。

・確定申告をしている方:不備等がある場合、原則過去5年を最大として、税務署より修正を求められる可能性がある。

そうは言っても、「無くしてしまった」という方もいらっしゃるかと思います。そのような時は勤務先の会社に再発行の依頼をしましょう。

源泉徴収票の発行会社(勤務先の会社)には税法上「7年分の源泉徴収票を保存する義務がある」と考えられています。これは法律に明文化されているわけではな いのですが、
国税通則法第70条4項に

偽り等がある場合における国税についての更正決定等は、期限日等から7年を経過する日まですることができる

旨の期間に関す る規定があり、
かつ同法第70条の2の1項に

国税庁等は、源泉徴収票を提出する義務がある者に対して、帳簿書類等の提示もしくは提出を求めることができる

旨の 対象者に関する規定があることから、そのように類推されるということです。

自分の収支を把握するだけで、お金に対する意識も変わる

自分が「どれだけ稼いで、どれだけ使っているか」を正確に知っている人は、意外と少ないものです。自分の収支をしっかり把握するだけで、お金に対する意識も変わってきます。ぜひ本稿を参考に一計算してみてくださいね。

【執筆者】
出川 裕基(でがわ ゆうき)

2009年に国内大手税理士法人の東京本社に入社。同所ではマネージャー職を担い、相続税申告、事業承継及び地主の相続対策など通算250件以上の資産税案件を手掛 けてきた。その傍ら、金融機関向け勉強会及びお客様向けセミナーの講師を多数務め、執筆活動にも携わる。

▶所属している税理士法人:
税理士法人 アイユーコンサルティング