「【ゲームのストーリー原案（ストーリー、あらすじ）コンペ】募集｜3案採用予定！あなたの案が実際にゲーム化される可能性も！」への門倉　結兎さんの提案一覧

始めまして、門倉と申します。
本日、当案件を知った事と書き下ろしの方が、修整しやすいなどの利点も多いためかなりハイペースで書いたので拙い所もあるかと思いますが何卒宜しくお願い致します。

以下あらすじ(尚、5,000文字ギリギリですがご容赦下さい)

とある、テクニカルサポート系のコールセンターでNETサポート部門の副部長を務める主人公は物心ついた時から人の嘘を直感的に見抜いてしまう能力を持っていた。

幼少期は無差別に誘発する能力のせいで、あらぬ誤解を受けたり不要なトラブルの原因だった。
成長につれてある程度はコントロール出来る様になり、意識的に放った「問い掛け」に相手が答えた時に発動する程度までになったものの完璧とは言えず…自身のコンディションに影響されて、突発的な能力の誘発が起こる事は無くならなかった。
自身の能力が対面でなければ発動しない事に気付いていた主人公は、就職先として電話による接客が主業務であるコールセンターへ入社。
なるべく人と接しない様に育った結果、PCなどのテクニカル知識が豊富だった事もあり大手通信事業社のNETサポート部門に配属された事は自然な流れだった。
誤算だったのは、電話口なら発動しなかった筈の能力がある時を境に電話口でも発動する様になってしまった事だ。
そのせいで、一時期退職まで考えた主人公だったがどうにか折り合いをつけ…更には、能力による利点を生かし日々の実績の糧とする事が出来る様になる。
入社3年目、わずか27歳の年で副部長の座に着いたのはそんな経緯があった。

それから、更に2年経った春に新入社員として入ってきたヒロインに能力を看破される。
最初は誤魔化そうとしたものの、彼女もまた他人の嘘を見抜く能力があり認めてしまうが…散々自身の能力について語ってしまった後、彼女は自身の能力が所謂「特殊能力」ではなく、観察眼による「技能」であると明かされ互いの秘密とする事で協定を結ぼうと考えていた主人公だったが、一方的に秘密を握られてしまう。
この時「悪い様にはしない」と笑ったヒロイン。
結局彼女に秘密を握られ逆らえない日々が始まったが、先の言葉通り彼女から下される命令はほとんどが要領を得ず…主人公自身堪えられない様な物は１つもなかった。
そんな関係が続いて少しした頃、この関係が「悪くない」事を互いに気付くが、凡そ恋愛に発展する様子はなく…互いの関係を何と言い表せば良いのか考える時期が長く続く。

そして、互いの関係がどんなものか朧気な形が見え始めた頃…急な人事異動で新しい部長がやって来る事になる。
かなりのエリートがやって来る様だと、部下達は沸き立つが事前に顔合わせを行った主人公は内心で大きな疑問と不安を抱えていた。
顔合わせの際…どうにも信頼に足る人物とは思えなかった為であるが、何より不信感を抱いたのは…自身の能力が全く働かなかったからだ。
気のせいだと自身に言い聞かせ、何とか新部長を受け入れ様と努力する日々…出会った当初から本当にわずかに感じる嫌悪感を振り払う事が出来ないまま表面上は「良い関係」を構築する。
しかし一緒に仕事をする日々の中、所々で小さなトゲが刺さる様な「ズレ」を感じ、徐々に得体の知れない嫌悪感が大きくなっていく。
端から見れば、ごく当たり前の人との接し方や受け答え…しかし、間違いなくどこかにある筈の「理由なき嫌悪感」を次第に明確な感覚として感じ始める。

耐えかねた主人公は、ヒロインに相談するが彼女の口から明かされたのは…
「生きてる様でも、死んでいる様でもあるけれど、それを自覚した上で楽しんでいる」
と言う彼女なりの新部長に対する総評だった。
詳しく訊ねると、まず前提としてあらゆる物事に対して何も感じていないのだと言う。
それはつまり、自他のメリット、デメリット、個人と社会の善悪…それらは彼に何の感情も抱かせず、等しく価値がないと言う。
更に言うなら、取り合えず一般的な価値基準に沿って言動し、奇跡的なまでに危うくも一社会人として「何となく」生命活動を行ってみているだけの人物であり…更にはそれらの自分の感覚や価値観を自覚して楽しんでいる。
歪ではあるが彼なりに人生を楽しんでおり、それ故に楽しむ事でしか生きられない、とも。
それを聞いて主人公が得た物は、驚愕よりも納得だった。
つまりは、同族嫌悪だったのだ。
嘘を見抜いてしまうと言う能力により生き方を狭められ、それでもこの人生を楽しもうと決意し、それを自身に言い聞かせて来た。
これしかないのだから、と。
能力が発動しなかったのは、何も感じていないのに一般的な価値基準に沿った言動をしていたから、要は常に嘘をつき続けていている様な状態だったから。
主人公が取り得た選択肢が１つしかなかった様に、新部長も同じだったのだ。
であれば腹を割って話してみよう、今まで感じていた事も包み隠さず伝えた上で詫びようと、そう考えていた主人公だったがヒロインに止められる。
何も聞かなかった事にして今まで通り過ごしてほしい。
事、彼に関しては今まで感じていた嫌悪感に従って本音を伝えず接した方が良いと言う。
事情が飲み込めず、どういう事か問うと。
彼女は「嫌な予感がするから」と答えたが、その答えに主人公の能力が発動し嘘である事を察するがこの時互いにそれを理解しながらも何も言わずその日は別れる。
嘘をつかれた事自体はさして気にしていなかった主人公だが、何が嘘だったのか？と言う考えは頭を離れなかった。
「嫌な予感がするから」
単純に考えれば、別にそんな予感はしていないと言う事。
しかし、理由によっては大きく意味が異なってくる事に主人公は気付いていた。
1つは嫌な予感でなく、別の予感である事。
それはもっと具体的な内容であるか、そうでなければ漠然と良い予感がしたと言う事になる。
しかし、この場合嘘をつく理由は見当たらない。
であれば残る可能性は…予感ではない、と言う事だ。
即ち、確信。
起きるかもしれない出来事をさして予感と言うが、必ず起きると思っているならそれは予感ではなく…確信。
だから彼女のついた嘘はそれなのだと当たりをつける所までは考えた主人公。
しかし、流石に具体的な内容までは分からず数日が経つ。

人間というのは…起きた事、知ってしまった事を無かった事にするのは難しい生き物で、主人公もそれは変わらなかった。
が、彼を責められる人間はいないだろう。
先日まで感じていた嫌悪感が感じられず、新たに親近感まで覚えた相手への態度を無意識レベルで変えるなと言うのは無理な話だった…結果、それは起きた。
新部長から主人公に対して、執拗なまでの嫌がらせである。
主人公の仕事量は膨れ上がり、休憩時間も削られた…客観的に見れば明らかなパワハラである。
が、しかし奇妙であったのは周りは普段と何も変わった様子がなく「副部長大変そうだな」程度の認識だった事だ。
その不可思議なパワハラは絶妙の一言につきた。
何せ、主人公に対する新部長の言動は何一つ変わっていないのだ。
事務的な会話は勿論、二人だけでのプライベートな会話すらも以前と変わりが無かった為、主人公自身気のせいかと思ったほど。
しかし、その考えをハッキリと否定したのは他ならぬ新部長本人から告げられた一言だった。

「どうしたら前の君に戻ってくれるんだ？」

それは貴方の方でしょう、と口から出そうになったがそれより早く頭の中で出てきたのはこの状況におかれた事の答えであった。
つまり、新部長はこう言ったのだ。
「どうしたら、以前の嫌悪感を取り戻してくれるんだ？」と。
これが意味するのは、主人公の嫌悪感に気付いていたがそれを良しとしていたと言う事、そして突然消えたその嫌悪感を取り戻させる為にパワハラを行っていたと言う事だ。
およそ一般的な価値基準からは考えられない思考だが、主人公はどこか安堵している自分に気付く。
それはまるで、さっぱり分からなかった難解な問題が解けた感覚に似ていた。
人がもっとも恐怖を抱くのは、解らない事や理解不能な物事に対してである事は有名だろう。
無論、そのストレスや不快感は言うまでもなく大きい。
だからこそ今までの理解不能なパワハラの原因が解った事でストレスが無くなり、結果的に主人公の胸中では安堵感が広がった。
加えて新部長と言う人間を全てでないにしろ、少なからず理解した。
それは何と言う事はない、彼も人間だったと言う事とヒロインの言った事そのままだったと言う事だ。

「生きてる様でも、死んでいる様でもあるけれど、それを自覚した上で楽しんでいる」

一見矛盾している様にしか見えないが、彼は何も感じない事を楽しんでいる…そして、主人公と同じくそれしか生きる目的がないのだ。
であれば、それを守ろうとするのは至極当然の理屈だった。
彼は自身に対する他者の感情が変わった事が理解できなかった。
だから恐怖を覚え、自分の中のたった１つしかない物を守ろうとした。
結果、彼が選択した行動は元に戻す事だった。
その為に主人公から再び嫌悪される為にパワハラを行っていたのだ。
そうして、また嫌悪されれば元に戻ると信じて。
それはつまり、自身の性質に気付いた人間が嫌悪する事もある事を承知で生きてきた…むしろそれを楽しんでいたと言う事も意味していた。

だが、主人公は気付いてしまった。
ヒロインが言った様な死人同然の何も感じない人間なんかでは決してない事に。
だから彼は受け入れる事にした。
その為にまず、自身の能力について洗いざらい新部長に話した。
勿論、顔合わせの時通じなかった事や、それから感じていた嫌悪感に至るまで全てを。
自分は似た様な境遇で、だからこそ再び新部長に対して嫌悪感を持つ事は難しいのだと伝える。
そうして幾つかの問答の末に新部長もまた主人公を受け入れる事が出来、二人の間でヒロインに対して感じた様なそれとも違う様な絆を感じるほどの仲となる。

更に3年後、二人とヒロイン3人で今までの経験を生かし独立起業する事に成功する。
後日、ヒロインと主人公の間で当時の疑問が解消される。
まず主人公の疑問。
何故ヒロインが新部長の事をあれほど詳しく語れたのかだった。
彼女の観察眼によるものだと当時は納得したが、それでは「あの確信」については説明がつかない。
それを問うと、実はヒロインにとって高校時代の先輩だったと言う。
その時も同じ様な事があり、退学者が出るほど悲惨な結末だったと。
あの時、当時の事をそこまで主人公に説明出来なかったのは、説明し辛い理由があったから。
例えばそれは、初恋相手だった事。
しかし親しくなった直後に事件が起き、そのまま疎遠になった事。
加えて最初は何でも出来る憧れの先輩だったが、面識を持ってからすぐに主人公と同じ「ズレ」を感じていた事。
そして事件が起きた事で言い知れない恐怖を覚え、それを解き明かす為に心理学を専攻した事。
それによって今の観察眼が身に付いたのだとも。

なるほどと、納得した主人公に続けてヒロインが疑問だった事を訊ねる。
それは、何故能力を明かしてまで新部長を受け入れられたのか？であった。
取り合えず当たり障りのない対応でその場はお茶を濁し…自分と同じく距離を取る事も出来たのではないのか、その方が信じて貰えるかも分からない能力をカミングアウトするよりリスクは少なかったのではないか、と問うた。
それに対して主人公は当時のあの問答の際、１度だけ自身の能力が発動した事をその時のやり取りを交えて明かす。
「何をしても守りたいものがあるか？」
と言う主人公の「問い掛け」に…
「何もない」
と答えたこの時だけ、能力が発動したのだと言う。
だからこそ信じる事が出来たのだと。

それで互いの疑問は解消されたが、主人公は新たな疑問をヒロインに問う。
それは、互いの「悪くない」関係に形を与えられる気がしたからに他ならない。
その疑問とは、なぜ新部長が初恋相手である事を伝えあぐねたのかだった。
言葉に出来ない期待感が膨らみ「問い掛け」るが…
「自分で考えなさい」
とそっぽを向いて、その場を去ってしまう。
わずかに赤くなっていた頬を隠す様に。
こうして、ずっと探していた気がする答えを疎ましかった筈の能力が発動した事で得られた主人公。
それは彼女との関係か、それとも…答えは当人のみぞ知る。