自主制作で映画を作られている山下大裕さんが映画で利用するロゴのデザイン募集した時のことについてお話をお聞きしました。
目次
クラウドワークスで集まった映画ロゴは80件超
映画監督を目指して、日本映画大学の脚本演出コースを専攻する3年生です。今年の4月、渋谷で「SNOWGIRL」という、僕にとって初となる自主制作の映画の上映会を開催しました。
この作品のひとつの象徴でもあるロゴデザインを、クラウドソーシングのクラウドワークスを使って募集させてもらいました。クラウドワークスでコンペ形式の募集が始まってすぐのことです。
コンペを募集した当日からチラホラ作品が集まり、企画に共感してくださるデザイナーさんから最終的に84のデザイン案が集まりました。
映像に携わる仕事がしたい
中学生の頃から映像関係の仕事に就きたいという想いがあり、日本映画大学に進学しました。地元は福井県敦賀市で、昔から地域のイベントでビデオを撮影したりすることを自主的にやっていました。
また、地元の小中高生に出演者を募集する「敦賀こどもミュージカル」というプロジェクトに何度か参加したことがあって。集まってきたこどもたちで舞台をつくるんですが、そこで徐々に舞台芸術の面白さに惹かれていきました。
演出と映像の両方をやるなら映画だと気づき、映画監督を志すようになりました。
コンペで、作品の象徴でもあるロゴを発注
今回の映画は、何から何まで完全に自主制作でした。映画のスタッフは、同じ大学の仲間などに声をかけています。
大学の実習でつくる映画には予算が出ますが、その分、映画の長さなどの制限もあり、卒業制作でなければ外部への公開もされません。より多くの人に観てもらいたいという想いから、完全に持ち出しで映画を撮ることに決めました。
クラウドワークスについては、以前にネットの記事を読んで知っていたためユーザ登録だけはしていました。まだ映画の企画を練っているタイミングでしたが、ロゴを先につくることで作品のイメージも沸きやすくなり、人にも伝えやすくなると考えました。
ちょうどその頃コンペ形式の募集機能がリリースされたため、さっそく活用してみることにしました。
見てみて機能でデザイナーに直接アプローチ
最初にロゴ募集のコンペをアップしたときは、ロゴがちゃんと集まるのか不安な気持ちもありました。選ぶほどに数が集まらないことも想定して、ロゴの募集要項の補足欄にその旨を記載したほどです。
クラウドソーシングのクラウドワークスに、どれも選べない場合は集まったもので報酬を分割する方法もあるとあったので。映画のロゴ募集のコンペを実施していることは、映画のFacebookページやTwitter、自身のブログなどでも紹介しました。
募集要項には、映画の企画書の内容や自分の想いを綴りました。また、少しでも企画に賛同してロゴをつくってくださる方が増えるように、クラウドワークスの見てみて機能を活用しました。この方につくってほしいというデザイナーさんに、こんなコンペがありますと直接伝えていったんです。
デザイナーとのやり取りで広がった映画の世界観
見てみて機能を使ったこともあってか、すぐにメッセージなどをくださるデザイナーさんもいらっしゃいました。
今回は持ち出しで撮った映画なので、ロゴ制作の予算はわずか5,000円です。それにも関わらず、さまざまなデザイナーさんがいろんな案を出してくださいました。企画書、脚本を見せてほしいとメッセージをくださる方もいて、外部に出さないという約束のもとデータを送って読んでもらった方もいます。
内容をデザイナーさんなりに解釈してロゴに反映していただいたり、企画書や脚本への素直な感想を送ってくださる方もいらっしゃいました。なかには、自分の知っているこの曲にすごくマッチする映画だと感じたといって、YouTubeの動画まで共有してくださる方もいました。
映画のロゴを募集したのは撮影前のタイミングでしたが、皆さんからいただいた意見や印象などは作品をつくる上でも参考になりました。
デザイン以上に、共感や人柄が決め手に
ロゴのコンペに集まった作品には、自分の好みや気になったものを☆で評価しました。最高評価である☆3つのロゴも複数あります。これらのデザインはどれも気に入ったんですが、それ以上に、デザイナーさんとのやり取り、デザイナーさんの人間性も大きな決め手となりました。
最終的にお願いした方とは、メッセージを繰り返しやり取りしており、映画ではクラウドワークスのページで採用となっているロゴをさらに改良したものを使っています。こちらからの意見を吸い上げてデザインするだけでなく、ご自身の工夫も入れてくださって。
また、本来であればもっと費用がかかるロゴデザインを、企画に賛同したという想いで丁寧につくってくださいました。直接会ったことのない方でしたが、そのデザイナーさんの人柄もとても大きかったです。
その後、映画の上映会にも足を運んでくださいました。作品を選ぶこと以上に、そのデザイナーさんを選んだということのような気がします。
プロが、お金ではない価値で動く
クラウドソーシングのクラウドワークスを活用することで、デザイナーの知り合いがまったくいない僕でも、イメージ通りの映画のロゴをつくってもらうことができました。
デザイナーさんの作風などもよくわからないため、コンペ形式なら実際の成果物を見てひとつに決めることができることも安心でした。今回、クラウドワークスで発注したことが作品のイメージづくりや世界観を広げることにもつながったと思っています。
プロフェッショナルな方々が、ただお金のための仕事として引き受けるのではなく、企画に賛同したという想いで動いてくださったことに感動しました。お金とは違うモチベーションや想いがあるからこそ、純粋にいいものが生まれるプラットフォームなのだなと思います。
募集する側、仕事を受ける側ともに、プロでもアマチュアでも誰にでもチャンスがあるため、お互いにとって門戸が広がる場だなと感じています。
処女作「SNOWGIRL」を渋谷で上映
僕が初めて撮った映画「SNOWGIRL」に関しては、すでに完成し、今年4月に渋谷のUPLINK FACTORYで上映会を2日間にわたって行いました。収容人数は60人くらいの小さなスペースでしたが、2日間で120名以上にお越しいただきました。
またこの作品は、僕の地元である福井県敦賀市で撮影しているため、5月には地元での完成披露上映会も開催しました。数百名入るスペースで昼と夜に上映した結果、合計で500人ほどが足を運んでくださいました。
同じ福井出身の人で、映画やテレビの現場に行く人が少ないこともあって、地元としても目新しいプロジェクトだったようです。地元のメディアの方も積極的に紹介してくださったおかげで、狭いながらも認知度を高めることができ大勢の方に観ていただくことができました。
心を描くことで誰にも通ずる映画を
僕は、一瞬の娯楽の映画を撮りたいという風には思わないんです。ビルが爆発するような激しさや、それこそ大爆笑もないかもしれませんが、静かに身体の奥底に染み渡るような、人の心を描く作品を撮りたいです。
「SNOWGIRL」も、何か自分に通ずるものが感じられる作品になっているといいなと思います。また、今回の映画はスタッフが10人以下という小規模で行いましたが、いつか地元の方々と一体になった映画づくりも行ってみたいです。
何年先になるかわかりませんが、映画を地域振興に役立てるような取り組みにもチャレンジしたいと思っています。