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公開日: 2019.09.17 / 最終更新日: 2020.01.06

働き方改革の一つである裁量労働制とは?基礎知識や対象業務を解説

日本政府が推進している働き方改革ですが、政策の目玉のひとつが「裁量労働制」です。裁量労働制については、総務や人事担当者ではなくとも、社会人として知っておくと良いでしょう。もしかしたらあなたの働く会社でも適用されるかもしれません。裁量労働制とはどんな制度なのか解説していきます。

裁量労働制の基本知識とは?


裁量労働制の基本を押さえておきましょう。

日本国民が気持ちよく働けることを目指す働き方改革

少子高齢化が進む日本では、労働が可能な生産年齢人口も減少の一途をたどっています。こうした社会情勢から、働き方を見直すことによって隠れた労働力を発掘し、もっと働きやすい環境を整えましょうという制度が「働き方改革」です。

個人のライフスタイルに合わせた職場環境や働き方のスタイルを取り入れることによって、働く人が増加し税収も増え、日本の国力の維持につながるという制度です。

労働時間を自由にきめることができる裁量労働制

裁量労働制はみなし労働時間制のひとつであり、最大の特徴は労働時間にあります。実際の労働時間が長くても短くても、契約した労働時間分の賃金を支払うという制度です。たとえば、1日8時間の契約をしている場合、実際に働いた時間が3時間でも12時間でも、支払われる賃金は8時間分となります。

裁量労働制と高度プロフェッショナル制度の違い

裁量労働制に似た制度に、高度プロフェッショナル制度というものがあります。コンサルタントなど専門的な分野の職種で、なおかつ一定以上年収が高い人材について当てはめられる制度です。残業や休日出勤などの時間外労働は規制の対象外になっているという点が特徴です。

一方、裁量労働制は深夜手当や休日出勤に関して割増賃金が発生します。また、高度プロフェッショナル制度は証券アナリストやコンサルタントなど一部の職種に限定されていますが、裁量労働制では幅広い職種が対象です。

裁量労働制の対象となる業種は?


幅広いと言えども、すべての業種が対象となるわけではありません。どの業種が対象になるかチェックしていきましょう。

専門業種型

専門業種型裁量労働制は以下の業種において導入が可能です。

・研究開発(新商品、新技術、人文科学、自然科学など)
・情報処理システムの分析、設計
・取材、編集(新聞などの出版事業)
・デザイナー(衣服、広告、工業製品など)
・プロデューサー、ディレクター(放送番組、映画など)
・コピーライター
・公認会計士
・弁護士
・不動産鑑定士
・弁理士
・システムコンサルタント
・インテリアコーディネーター
・ゲーム用ソフトウェア開発
・証券アナリスト
・金融工学による金融商品の開発
・建築士
・税理士
・中小企業診断士
・大学における教授研究専門業務型

これらの専門的な業種では雇用者が指示を出すことが難しく、業務の進め方を労働者本人に委ねることが可能なため、裁量労働制が認められています。ただし、裁量労働制を導入するためには労働組合の代表者との協定、いわゆる36協定を結ばなくてはいけません。

企画業種型

企画業務型裁量労働制は、企業においての企画立案、調査、分析に関わる労働者に対して認められる制度です。こちらも、費やした時間と仕事の成果は必ずしも比例するわけではないため、裁量労働制の対象となっています。

この場合、労働者本人の同意はもちろんのこと、労使委員会で5分の4以上の賛成が必要となるなど、専門業種型よりもハードルが高くなっています。

裁量労働制のメリットは?


企業の立場からの裁量労働制のメリットは、労働生産性の向上、労務管理負担削減、人件費の見通しが立つなどですが、労働者からみた裁量労働制のメリットを2つ紹介します。

自由なペースで業務ができる

専門業種なので、自分の裁量で仕事ができる点は大きなメリットです。上司の裁可や承認を受けるケースはありますが、多くの面であれこれと指示を受けずとも自分のペースで仕事を進めることができます。

業務効率化を進めれば業務時間が短くなる

裁量労働制には定時がありません。自分の処理能力を高め、かつ成果も挙げることができればより短い時間で仕事を終わらせることができます。労働時間が短いからといって給与が減らされるわけではなく、短い勤務時間でも給与がしっかりともらえるというのは大きなメリットです。

裁量労働制の問題点は?


裁量労働制には悪い点もあり、企業側からするとブラック企業化しやすくなるのは大きなデメリットのひとつです。

労働時間の長時間化

裁量労働制は時間の縛りがない働き方です。そのため、仕事量が多い職種や繁忙期においてはどうしても長時間労働になってしまいがちです。ある調査では、裁量労働制のほうが一般的な働き方よりも月平均労働時間が上回っているという結果が出ており、長時間労働が常態化してしまう問題があります。

また、時間の縛りがないからこそ、逆に仕事とプライベートの区切りが難しくなることもあり、労働者側の高い自己管理力が求められます。

残業代がでない

裁量労働制においては、長時間労働が常態化しても残業代は発生しません。「こんなに働いているのに給料が変わらない」という不満が生まれてしまいやすくなります。

裁量労働制の対象拡大が削除とは?


裁量労働制は、上で挙げた専門性の高い19の業種、もしくは企業の中枢で企画立案などを行う人材が対象です。それを拡大して欲しいという要望が経営者側から出ていたのですが、長時間労働を助長するのではないかという懸念もありました。

さらに、働き方改革関連法案をめぐる議論の中で提出されたデータには不適切なものがあるという指摘もあり、裁量労働制の対象拡大は法案から削除されて成立されました。裁量労働制の対象分野の拡大に期待を寄せていた企業からは失望の声も寄せられたようですが、現時点でも要望の声が出ている以上、将来的には拡大していく可能性があるかもしれません。

まとめ

裁量労働制は政府の働き方改革の目玉のひとつとして推進されている政策です。対象となる業種は現時点では限られているものの、自分のペースで働ける・労働時間の削減ができるのがメリット。ただし、長時間労働が常態化したり残業代が支払われなかったりするデメリットもあります。今後、裁量労働制がどのように企業現場に影響してくるのか要注目です。

実際の成功事例から紐解く、
チームの生産性がアップするポイントとは?

「働き方改革」が進む中、企業での生産性の改善は急務です。昨今の市場トレンドとともに成功事例も紹介します。

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伊藤孝介
セールスプロモーション会社を経て独立し、フリーランスで地方自治体や中小企業のマーケティングリサーチ、販促企画などに携わる。 業務拡大のため2017年に合同会社を設立し、現在経営中。 マーケティング系ライター歴5年。マーケティング用語の解説や、事例紹介、WEBマーケティングなどが得意。

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