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公開日: 2023.06.24 / 最終更新日: 2024.02.14

配偶者特別控除とは?配偶者控除との違い・年収・条件・計算方法などを徹底解説

配偶者特別控除とは、「配偶者控除」が適用されない人でも、合計所得金額に応じて受けられる所得控除のことです。今回は、配偶者特別控除と配偶者控除の概要や違い、所得控除を受けるための条件、控除額の計算方法などを詳しく解説します。

配偶者特別控除と配偶者控除の違い

はじめに、配偶者特別控除と配偶者控除の違いについて紹介します。

配偶者控除との違い

配偶者特別控除と配偶者控除の主な違いは、以下の通りです。

①配偶者の所得による区分
・配偶者控除=配偶者の合計所得金額が48万円以下(※)の場合に適用される
・配偶者特別控除=配偶者の合計所得金額が48万円を超える場合に適用される

(※)給与のみの場合、配偶者の給与収入が103万円以下

②老人控除の有無
・配偶者控除=配偶者が老人控除対象配偶者(※)の場合、所得控除額が最大48万円に増額される制度がある
・配偶者特別控除=老人控除の制度がない

(※)老人控除対象配偶者とは、その年の12月31日時点で70歳以上である人

③控除額の決まり方
・配偶者控除=所得控除額は、納税者本人の合計所得金額(※)によって決まる
・配偶者特別控除=所得控除額は、納税者本人の合計所得金額だけでなく、配偶者の合計所得金額に応じて段階的に変わる

(※)合計所得金額とは、給与所得・配当所得・不動産所得・雑所得(公的年金等にかかる所得など)をすべて合計した金額のこと

上記の3点を踏まえて、具体的な控除額を一覧表にまとめました。

配偶者控除額

納税者本人の合計所得金額 配偶者の控除額 老人控除の控除額
900万円以下
(1,095万円以下)
38万円 48万円
900万円超 950万円以下
(1,095万円超 1,145万円以下)
26万円 32万円
950万円超 1,000万円以下
(1,145万円超 1,195万円以下)
13万円 16万円

※納税者本人の合計所得金額が「給与収入のみの場合」は、一覧表にある()内の所得金額まで配偶者控除が適用されます。

一方で、配偶者特別控除の場合は、「納税者本人の合計所得金額」と「配偶者の合計所得金額」に応じて、以下のように段階的に控除額が変わります。

配偶者特別控除額

配偶者の合計所得金額

納税者本人の合計所得金額

900万円以下(1,095万円以下) 900万円超950万円以下
(1,095万円超1,145万円以下)
950万円超1,000万円以下
(1,145万円超1,195万円以下)
48万円超95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超133万円以下 3万円 2万円 1万円
133万円超 0円 0円 0円

※納税者本人の合計所得金額が「給与収入のみの場合」は、一覧表にある()内の所得金額まで配偶者特別控除が適用されます。

なお、配偶者の合計所得金額が「給与収入のみの場合」は、103万円超~201万5,999円以下まで配偶者特別控除が適用されます。詳細については、国税庁の公式ページを参照してください。

国税庁:「年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるとき

配偶者控除と配偶者特別控除、控除額が多いのは?

配偶者控除と配偶者特別控除の控除額の幅は、以下の通りです。

・配偶者控除=13〜38万円(老人控除=16〜48万円)
・配偶者特別控除=1〜38万円

つまり、配偶者特別控除を満額受けとる場合は同じ控除額になりますが、基本的には配偶者控除のほうが控除額が多くなります。

配偶者控除・配偶者特別控除の所得控除額の具体例などについては、国税庁の公式ページを参照してください。

国税庁:「配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか

【計算シミュレーション】配偶者特別控除の控除額

配偶者特別控除の控除額は、以下の流れで計算します。

①納税者の合計所得金額を算出する
②配偶者の合計所得金額を算出する
③一覧表で該当する控除額を確認する

まずは、納税者と配偶者の合計所得金額をそれぞれ算出し、配偶者特別控除の対象であるか確認しましょう。

納税者本人の場合、合計所得金額が1,000万円以下(給与のみの場合は1,195万円以下)であれば、配偶者特別控除の対象になります。配偶者の場合、合計所得金額が48万円超~133万円以下(給与のみの場合は103万円超~201万5,999円以下)であれば、配偶者特別控除の対象になります。

配偶者特別控除

配偶者の合計所得金額

納税者本人の合計所得金額

900万円以下
(1,095万円以下)
900万円超950万円以下
(1,095万円超1,145万円以下)
950万円超1,000万円以下
(1,145万円超1,195万円以下)
48万円超95万円以下
(103万円超 150万円以下)
38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下
(150万円超155万円以下)
36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下
(155万円超160万円以下)
31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下
(160万円超166万7,999円以下)
26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下
(166万7,999円超175万1,999円以下)
21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下
(175万1,999円超183万1,999円以下)
16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下
(183万1,999円超190万3,999円以下)
11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下
(190万3,999円超197万1,999円以下)
6万円 4万円 2万円
130万円超133万円以下
(197万1,999円超201万5,999円以下)
3万円 2万円 1万円
133万円超(201万5,999円超) 0円 0円 0円

控除額を算出する際の注意点は、合計所得金額が「給与収入のみの場合」、給与所得控除(最低55万円の控除額)が適用されることです。これにより給与収入のみの場合は、一覧表にある()内の所得金額まで配偶者特別控除が適用されます。

【控除額のシミュレーション】
・配偶者の合計所得金額:120万円
・納税者の合計所得金額:800万円
→この場合、控除額は16万円

・配偶者の合計所得金額:120万円(給与収入のみ)
・納税者の合計所得金額:800万円
→この場合、控除額は満額の38万円

・配偶者の合計所得金額:150万円(給与収入のみ)
・納税者の合計所得金額:1,100万円(給与収入のみ)
→この場合、控除額は26万円

給与所得控除は、源泉徴収票の支払金額によって控除額が異なるため、詳細については国税庁の公式ページを参照してください。

国税庁:「給与所得控除

配偶者特別控除を受けるための条件

配偶者特別控除を受けるための条件は以下の通りです。

●納税者の合計所得金額が1,000万円以下であること
●配偶者としての要件を満たしていること
●配偶者が配偶者特別控除を受けていないこと
●配偶者が別の親族の扶養控除対象外であること
●配偶者が公的年金等の受給者の扶養親族として控除の対象外であること

それぞれの条件について、詳しく説明します。

出典:国税庁「配偶者特別控除

納税者の合計所得金額が1,000万円以下であること

納税者の合計所得金額が1,000万円以下(給与のみの場合は給与収入が1,195万円以下)であることは、配偶者特別控除を受けるための条件の一つです。

そして、所得控除額は納税者本人の合計所得金額が900万円以下(1,095万円以下)、900万円超〜950万円以下(1,095万円超〜1,145万円以下)、950万円超〜1,000万円以下(1,145万円超〜1,195万円以下)によりそれぞれ異なります。

配偶者としての要件を満たしていること

配偶者特別控除を受けるための配偶者の要件は以下の通りです。

●民法の規定による配偶者である(内縁関係は除く)
●納税者と同一生計している
●青色申告者の事業専従者(※)としての給与収入を得ていない
●白色申告者の事業専従者でない
●年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(給与収入のみの場合103万円超201万5,999円以下)である

配偶者特別控除を納税者本人が受けるためには、配偶者が以上の要件をすべて満たしていなければいけないので注意しましょう。

(※)事業専従者とは、事業主の元で働いている家族従業員のこと

配偶者が配偶者特別控除を受けていないこと

配偶者が配偶者特別控除を受けていないことは、納税者が配偶者特別控除を受けるための条件の一つです。
配偶者特別控除は、夫婦の間で互いに所得控除を受ける(二重に申請する)ことはできないので注意しましょう。

配偶者が別の親族の扶養控除対象外であること

配偶者が別の親族の扶養控除対象外であることは、納税者が配偶者特別控除を受けるための条件の一つです。
具体的には、納税者以外の親族が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書」の「源泉控除対象配偶者」がいる居住者として源泉徴収される場合、配偶者特別控除の対象となりません。
同一生計する親族がいる場合(※)で起こりやすいので、当てはまる人は注意しましょう。

(※)夫婦と両親が同一生計している状況で、親の扶養家族として配偶者が控除を受けている場合など

出典:「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」「[手続名]従たる給与についての扶養控除等の(異動)申告

配偶者が公的年金等の受給者の扶養親族として控除の対象外であること

配偶者が公的年金等の受給者の扶養親族として控除の対象外であることは、納税者が配偶者特別控除を受けるための条件の一つです。
具体的には、納税者以外の親族が「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の「源泉控除対象配偶者」がいる居住者として源泉徴収される場合、配偶者特別控除の対象となりません。
公的年金を受給している両親などと同一生計している場合(※)で起こりやすいので、当てはまる人は注意しましょう。

(※)配偶者が、公的年金を受け取っている親などの扶養親族として申告している場合など

出典:国税庁「[手続名]公的年金等の受給者の扶養親族等の申告

配偶者特別控除に関する4つの壁

配偶者特別控除に関して「壁」と言われているものは次の4つです。

●年収103万円の壁
●年収150万円の壁
●年収201万円の壁
●1,000万円の壁

それぞれについて、以下で説明します。

年収103万円の壁

●納税者が配偶者控除を受けられる配偶者の年収
●配偶者の年収が103万円を超えると配偶者特別控除
●配偶者の年収が103万円を超えると所得税が課税される

年収103万円の壁とは、納税者が配偶者控除を受けられる配偶者の所得上限48万円(給与のみの場合は給与収入が103万円)のことです。
配偶者が給与収入のみの場合で年収103万円を超えると、納税者は配偶者控除が受けられなくなりますが配偶者特別控除を受けられます。
また、年収103万円を超えると、配偶者本人の所得税が課税ラインでもあるので注意が必要です。

出典:国税庁「パート収入はいくらまで所得税がかからないか

年収150万円の壁

●納税者が配偶者特別控除を満額受けられる配偶者の年収
●配偶者の年収が150万円を超えると段階的に控除額が減少

配偶者特別控除の年収150万円の壁とは、納税者が配偶者特別控除を満額受けられる配偶者の所得上限95万円(給与のみの場合は給与収入が150万円)のことです。
配偶者が給与収入のみの場合で年収150万円を超えると、納税者が受けられる所得控除額が段階的に減少していきます。
配偶者の年収が150万円を超える場合は、納税者が受ける所得控除や配偶者本人の手取り金額が夫妻にとってメリットになるような所得のラインを検討しましょう。

年収201万円の壁

●納税者が配偶者特別控除を受けられる配偶者の年収
●配偶者の年収が201万円を超えると扶養を気にしなくてよい

配偶者特別控除の年収201万円の壁とは、納税者が配偶者特別控除を受けられる配偶者の所得上限133万円(給与のみの場合は給与収入が201万5,999円)のことです。
配偶者の年収が201万5,999円を超える場合、納税者は配偶者特別控除を受けられなくなります。
しかし、配偶者は収入を抑える必要がなくなるため、扶養を気にせず世帯年収アップを目指すことができます。

1,000万円の壁

●納税者が配偶者特別控除を受けられる納税者の所得
●納税者の所得が1,000万円を超えると配偶者の年収に関わらず対象外

配偶者特別控除の1,000万円の壁とは、納税者が配偶者特別控除を受けられる納税者本人の所得上限1,000万円(給与のみの場合は給与収入が1,195万円)のことです。
納税者本人の年間の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者の年収が配偶者特別控除の範囲内であっても対象外となります。

配偶者特別控除の申告方法と書き方

続いて、配偶者特別控除の申請方法や書き方を解説します。
配偶者特別控除の申請は給与所得者と事業者等でそれぞれ異なるので注意しましょう。

年末調整の場合

会社員等の給与所得者は年末調整で配偶者特別控除の申告を行います。
年末調整で配偶者特別控除を申告する場合は、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の給与所得者の配偶者控除等申告書の欄に配偶者の合計所得金額を記入します。
「給与所得者の配偶者控除等申告書」への記載事項は、「配偶者に関する事項(氏名、個人番号、生年月日)」「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」「配偶者控除の額」です。

出典:国税庁「[手続名]給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告

確定申告の場合

事業者等は確定申告で配偶者特別控除の申告をおこないます。
また、給与所得者でも年末調整で配偶者特別控除の申告をしていない場合は、確定申告や更正の請求をおこなわなければ所得控除は受けられないので注意が必要です。
確定申告で配偶者特別控除を申告する場合は、確定申告書 第一表「所得から差し引かれる金額」の「配偶者(特別)控除21、22」と、「その他」の「配偶者の合計所得金額56」に所得控除額や配偶者の合計所得金額を記入します。
また、確定申告書 第二表「配偶者や親族に関する事項20、21、22、23」に配偶者の「氏名」「個人番号」「生年月日」を記入してください。

出典:国税庁「所得税の確定申告」「確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)

配偶者特別控除を受ける際の注意点

配偶者特別控除を受ける際の以下の注意として、以下のような点が挙げられます。

●配偶者に税金を課せられる場合がある
●産休または育休中でも控除を受けられる
●配偶者が非住居の場合は別途書類を用意する

それぞれ、以下で解説します。

配偶者に税金を課せられる場合がある

配偶者の合計所得金額が給与収入のみの場合、配偶者特別控除が適用される範囲は「年収103万円超〜201万5,999円以下」です。

配偶者本人の給与収入金額 納税者の所得税・住民税 配偶者の所得税・住民税
98万円 ・住民税が課税されない給与収入の上限 ・給与所得控除(55万円)+住民税の基礎控除(43万円)
103万円 ・配偶者控除を受けられる給与収入の上限額 ・所得控除を受けられるので所得税・住民税が軽減 ・所得税が課税されない給与収入の上限 ・給与所得控除(55万円)+所得税の基礎控除(48万円)

注意点は、配偶者の給与収入が103万円を超えると所得税が課税されることです。
さらに、配偶者本人の給与収入が98万円を超えると住民税が課税される可能性もあるので注意しましょう。(均等割や非課税限度制度により課税対象が98万円超になる可能性もある)

出典:国税庁「配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか」「家族と税」「基礎控除

産休または育休中でも控除を受けられる

配偶者が産休や育休中でも、納税者と配偶者の合計所得金額など条件を満たしていれば配偶者特別控除を受けられます(本記事内でも「配偶者特別控除を受けるための条件」を解説しているのでご参照ください)。
まずは、産休や育休時の給与について勤務先に確認をしましょう。

配偶者が非住居の場合は別途書類を用意する

配偶者特別控除は配偶者が「納税者と同一生計している」ことが条件です。
そのため、納税者と配偶者が同居していなくても配偶者特別控除を受けられます。
しかし、納税者と配偶者が同居していない、または非住居者(国内に住所を有せず、かつ、現在まで引き続いて1年以上国内に居所を有しない個人)の場合は、「親族関係書類」や「送金関係書類」を別途提出しなければいけないので注意しましょう。

出典:国税庁「配偶者特別控除」「国外居住親族

配偶者特別控除を申告しなかった場合の対処法

配偶者特別控除の申告をしなかった場合の対処法を、以下の場合について解説します。

●確定申告期間内の場合
●確定申告期限後の場合

確定申告期間内の場合

確定申告期間内に確定申告を修正する場合は、あらためて申告書等を作成し、確定申告期限までに再提出しなければいけません。
また、給与所得者が年末調整で配偶者特別控除の申告をしていない場合も、申告書等を作成して確定申告期限までに提出する必要があります。

出典:国税庁「【申告が間違っていた場合】」「確定申告を間違えたとき(よくある質問)

確定申告期限後の場合

確定申告期限後に確定申告を修正する場合、「修正申告書」または「所得税および復興特別所得税の更正の請求書」を提出します。
「修正申告書」は所得を過少申告した場合に提出する書類で、「所得税および復興特別所得税の更正の請求書」は所得を過大申告した場合に提出する書類です。
確定申告期限後に配偶者特別控除の申告をする場合は、後者の「所得税および復興特別所得税の更正の請求書」を提出します。

出典:国税庁「確定申告を間違えたとき

配偶者特別控除のまとめ

今回は、配偶者特別控除と配偶者控除の違いや所得控除を受けるための条件などについて解説しました。
配偶者特別控除を受けられる納税者と配偶者の所得や条件を確認し、ご自身や自社の従業員が配偶者特別控除を効率よく申告できるように、ぜひ本記事をご活用ください。

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クラウドソーシングTimes編集部
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