マーケティング
公開日: 2023.06.26 / 最終更新日: 2024.01.12

STP分析を使って効果的なマーケティング戦略を構築する方法

STP分析とは、企業が新たに市場に参入する際にさまざまな角度から市場を分析するために使われるマーケティング手法であり、アメリカの経済学者フィリップ・コトラーが提唱したフレームワークです。
本記事ではSTP分析についての基礎やSTP分析を活用するメリット、そしてSTP分析を行う際の注意点などを紹介します。

STP分析を構成する3つの分析グループ

STP分析は、Segmentation(セグメンテーション)で市場を4つの指標に分けて細分化し、Targeting(ターゲティング)で参入する市場を選定し、Positioning(ポジショニング)で参入市場における競合他社との位置関係を把握するという分析方法です。ここでは、STP分析を構成するセグメンテーション、ターゲティング、そしてポジショニングについて詳しく解説します。

セグメンテーション (市場分割)

セグメンテーションは、市場を細分化し顧客の分布を明らかにすることを指します。ブランドや商品、サービスを市場に展開する際、顧客層(セグメント)を分割して設定し、対象を把握した上で商品開発や宣伝活動を行います。

セグメンテーションで使われる視点には以下の4つがあり、それぞれの視点に着目しながら顧客についてのイメージを確立します。

  • 人口統計的変数(デモグラフィック):年齢・性別・家族構成・職歴など、変動の少ない基本的な情報をもとにした指標。統計調査により判断する。
  • 地理的変数(ジオグラフィック):国や地域、文化や宗教など、地理的要因に絡む情報をもとにした指標。地図や国の調査結果などを参考に判断する。
  • 心理的変数(サイコグラフィック):価値観・性格・ライフスタイル・購入動機など、個人の心理にもとづく情報を使った指標。アンケート調査結果などから判断する。
  • 行動変数(ビヘイビアル):買い物の頻度・買い替えのタイミング・使用用途など、個人の行動に焦点を当てた情報をもとにした指標。行動追跡データなどをもとに判断する。

ターゲティング (対象顧客の選択)

ターゲティングは、セグメンテーションによって細分化した顧客層を参考に、参入すべき市場を選定することを指します。自社の商品やサービスの価値がもっとも評価されやすい市場を選択することで事業を効率的に展開しやすくなります。

また、Customer(市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字をとった3Cの基準が活用される機会が多いこともターゲティングの特徴です。セグメント分けした消費者群から適切なターゲットを絞り込むことで、効果的なマーケティング施策につなげることができます。

Positioning (顧客へのポジショニング)

ポジショニングとは、ターゲティングで選定した市場の分析によって競合他社と自社との立ち位置を見極めることを指します。自社の商品やサービスと似たものを提供する競合他社が存在する場合、ポジショニングマップと呼ばれるマトリックスを用いて他社との位置関係を分析します。その上で、他社との差別化を図ったり、他社がリーチしていない顧客層を狙ったり、マーケティングにおいて有効な施策を練ることがポジショニングの主目的といえます。

STP分析のステップと関係概念

企業は自社が置かれている環境を適切に把握し、自社に適した戦略を打ち出すことが求められます。STP分析は、自社の商品やサービスの強みを把握して勝ちやすい土壌を見つけ、有効な施策によって事業を展開することを目的としたフレームワークです。ここでは、STP分析のステップとその関係概念について解説します。

消費財市場・生産財市場とセグメンテーション

市場は主に消費財市場と生産財市場に分けられ、それぞれの軸を下記のように分類できます。

【消費財市場】
・人口動態軸(年齢や性別、職業など)
・地理軸(地域や人口密度、行動範囲など)
・社会心理学軸(ライフスタイルや価値観、購買動機など)
・行動軸(購買活動や購買心理など)

【生産財市場】
・人口軸(業種、規模など)
・オペレーティング軸(使用頻度やスキルなど)
・購買アプローチ軸(顧客の購買方針、購買意欲など)
・状況要因軸(緊急性や受注量など)

このように、まずは市場に存在する膨大な数の顧客を顧客の持つニーズごとにグループ化し、セグメンテーションを行うことで自社の商品やサービスを必要としている顧客層を明確にします。

集中型・差別型マーケティングとターゲティング

ターゲティングの際に活用されるマーケティング手法として、さまざまな市場に同一サービスを提供する無差別型マーケティング、市場に合わせて異なるサービスを提供する差別型マーケティング、そして特定の市場に集中的にサービスを提供する集中型マーケティングがあります。自社の商品・サービスの強みが活かせるような市場、自社のブランドイメージやコンセプトなどにあった手法を選びましょう。

ポジショニングマップとポジショニング

ポジショニングとは、ターゲティングで選定した市場の分析によって自社と競合他社との立ち位置を把握することを指します。ポジショニングマップと呼ばれるマトリックスを用いて他社との位置関係を可視化することで、より深い分析を行います。

STP分析をマーケティング戦略に活用するメリット

STP分析は、自社サービスが獲得しているユーザー属性やサービスの強み、課題、他社との位置関係などを把握し、市場参入の際に取るべき戦略や方向性を見極めるために用いられます。STP分析をマーケティング戦略に活用するメリットには、大きく分けて3つのポイントがあります。

市場のセグメント化による顧客像やニーズの把握

市場をセグメントに分けて細分化すると、顧客像やニーズが浮き彫りになり、どのような市場にどのような顧客層がいるかを整理しやすくなります。そのため、より具体的な顧客像をイメージすることができます。

顧客・市場ニーズの分析による優位性のある市場の選択

STP分析によって顧客や市場のニーズを分析することで、自社の商品・サービスがどの市場に参入すれば優位なのか把握しやすくなります。競合他社と比較して自社の立ち位置を知ることにより、参入しやすい市場を見極めることが大切です。

USPの明確化による効果的な戦略の立案

STP分析を活用して、市場におけるUSP(Unique Selling Proposition)すなわち自社の商品・サービス独自の強みを明確にすると、効果的な戦略の立案につながります。自社ならではのアピールポイントを把握し、適切なマーケティングを展開しましょう。

STP分析を実施する際の注意点

最後に、STP分析を実施する際の注意点について解説します。

他のフレームワークも活用する

STP分析は、ターゲットを絞り込み自社の立ち位置を把握するのに有効なフレームワークですが、単体で販売促進やマーケティング戦略の強化を目指すには十分といえないケースもあります。STP分析だけを活用するのではなく、自社の強み・弱みをもとに分析するSWOT分析や、内部環境・外部環境を分析する3C分析などといった他のフレームワークと組み合わせることで、さらに多角的な戦略の立案につなげることができます。

分析の順番にこだわりすぎない

STP分析は、STPの順(セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順)で行われるのが一般的ですが、その順番にこだわりすぎる必要はありません。STP分析のステップ同士は連動しているおり、どこから分析を始めても結果が大きく変わらないケースもあります。そのため、分析の手順にこだわりすぎず、臨機応変に進めるようにしましょう。

結果の定期的な見直し・改善を続ける

STP分析はあくまで分析手法のひとつです。一度行って成功か失敗かを問うものではなく、分析結果を踏まえてマーケティング施策を実行し、成果の定期的な見直し・改善を続けることが重要です。思うような効果が得られなかった場合には改めてSTP分析をやり直し、市場の設定や施策を変更するなど、絶えず修正を続けていくことが重要です。

フレームワークのさらなる活用には専門人材の登用を

STP分析に限らず、フレームワークを活用した分析結果をもって事業展開をするためには、分析結果を有効活用できる人材を登用することが求められます。フレームワークが机上の空論で終わることのないよう、顧客目線を忘れず市場で活かせるかどうかはその分野における専門的な知見も必要となります。

クラウドソーシングTimes編集部
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