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公開日: 2025.12.02 / 最終更新日: 2025.12.16

【令和8年1月から】下請法は「取適法」へ!改正のポイント・義務・罰則や実務への影響をわかりやすく解説!

今回は、下請法の概要や適用されるケース、下請法が改正された背景や施行日、具体的な改正内容、下請法の改正後に発生する義務・禁止事項などをまとめて紹介します。
下請法の改正は、形式的な法令条文の修正ではなく、構造的な制度改正です。
契約・支払・物流などの実務面に広範囲で影響を及ぼすこともあり、早急な対策が求められるため、内容をきちんと把握しておきましょう。

そもそも下請法とは

はじめに、下請法とはなにか?という点について簡単に解説します。

下請法の目的・役割

下請法とは、優越的立場にある大手企業との取引において、中小企業が不当な扱いを受けることがないように制定された法律で、正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」といいます。
不公平な行為(支払の遅延や減額など)から中小企業を保護し、事業者間取引の適正化を促進するという役割があります。

独占禁止法との違い

独占禁止法は、公正・健全な競争を促進するための法律であり、原則として「すべての事業者間の取引」を対象としています。一方、下請法の対象となるのは「親事業者と中小事業者における取引」に限定されるため、その点が異なります。
下請法は独占禁止法の補完的な位置づけと言うことができ、違反行為を迅速に取り締まるための具体的なルールが定められています。

下請法が適用されるケース

下請法の対象となる取引は、主に以下の4つに分類されます。

①製造委託
②修理委託
③情報成果物作成委託
④役務提供委託

適用基準(資本金や取引内容など)にもよりますが、たとえば大手自動車メーカーが中小企業に部品製造を委託するケースなどが該当します。
下請法の改正後は適用範囲が拡大されるため、従来は適用外であった事業者間取引が対象に含まれる(親事業者として義務を負う・下請事業者として保護される)可能性がある、という点がポイントです。

下請法改正の背景とスケジュール

下請法が改正された背景として、近年の急激なコスト上昇が挙げられます。人件費や原材料費、エネルギーコストは上昇しているものの、取引価格に反映されない「据え置き価格の固定」が慣行化しており、中小企業などに負担が集中していることが課題でした。

また、下請法は主要な改正が行われてから20年ほど経過しており、現在の実態や今後の経済状況にあわせた法整備が求められています。
今回の下請法改正の施行日は、2026年(令和8年)1月1日であり、企業は2025年中に対応を完了させることが前提とされるため、契約書の見直しや取引先の再確認などを早急に済ませる必要があります。

下請法改正の内容・ポイント

下請法の改正内容として、次の10点が挙げられます。それぞれの点について、改正された理由や具体的な変更点、実務への影響などを紹介します。

大項目 小項目 影響度
①法律用語の変更
②価格協議の義務化
③発注書の電子交付の柔軟化
支払の厳格化
④手形払が全面禁止
⑤遅延利息の対象範囲の拡大
適用範囲の拡大
⑥従業員数基準を追加
⑦特定運送委託を追加
⑧金型以外の型等の製造委託を追加
執行の強化
⑨面的執行の強化
⑩勧告可能範囲の拡大

※影響度の目安は、◎=非常に高い、〇=高い、△=中程度、✕=低い

①法律用語の変更

下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」ですが、改正後は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変更されます。略称として「中小受託取引適正化法」、通称では取適法(とりてきほう)と呼ばれる予定です。

また、従来の「親事業者」「下請」という言葉には上下関係を連想させる響きがあるため、用語が以下のように変更されます。

改正前(下請法) 改正後(取適法)
親事業者 委託事業者
下請事業者 中小受託事業者
下請代金 製造委託等代金

【実務に影響するポイント】
・法律用語の変更にともない、旧名称が記載された書類(社内規程やマニュアル、契約書、記帳類など)を確認し、文言を修正する必要があります。

②価格協議の義務化

下請法では、買いたたき(通常支払われる対価に比べて、著しく低い価格で発注する行為)を禁止していましたが、不当性を立証するのが困難であることが課題でした。

取適法では「協議を適切に行わず、一方的に価格を決定する行為」そのものが禁止されます。これは、従来の対価水準にもとづく規制ではなく、「交渉プロセスの不備自体を問題視する構造」であり、実質的な価格交渉の義務化を意味するものといえます。

【実務に影響するポイント】
・価格協議を求められた場合、交渉の内容等を記録し、議事録や見積書、提示価格の根拠資料などを保存する必要があります。(※法令遵守の証左として重要な役割を果たすため)

③発注書の電子交付の柔軟化

下請法では、電子メールなどの電磁的記録で発注書を交付する場合、下請事業者の事前承諾が必要でしたが、取適法では要件が緩和され、事前承諾なしで電子交付が可能となります。

ただし、あくまでデジタル化の促進を目的とした「手段の緩和」であり、「義務の免除」ではないため、交付義務が軽減されるわけではありません。口頭発注や曖昧な依頼によるトラブルを防止するために、発注内容を通知する義務は従来の通り厳格に求められます。

【実務に影響するポイント】
・デジタル化の促進にともない、書面フォーマットのPDF化や電子保管体制の整備、電子メール(あるいはEDIなど)を通じた交付記録のログ保存などの対応が求められます。

④手形払が全面禁止

下請法では、支払手段に一定の制限があるものの、手形払いによる「実質的な支払遅延」が横行していました。また、手形を現金化する際に、手形を受け取った側(下請事業者)が割引料を負担することになる点も問題視されていました。

取適法では、支払手段として手形を用いることが全面禁止となります。これは単なる支払手段の変更ではなく、企業の支払に関する体制や信用管理に影響するもので、契約書の見直しやキャッシュフロー全体の再構築が求められます。

【実務に影響するポイント】
・手形払を利用している場合、代替の決済手段(銀行振込やオンラインの決済システムなど)を検討する必要があり、会計処理などのフローを見直す必要があります。

⑤遅延利息の対象範囲の拡大

下請法には、遅延利息の支払義務が課されています。ただし、代金を不当に減額する場合や返金・支払などが遅れた場合の遅延利息については明記されていませんでした。

取適法では、遅延利息の対象範囲が拡大され、返金・支払などが遅れた場合の遅延利息も明文化されます。具体的には、支払期日までに未納の場合、受領日から60日を経過した日から、実際に支払う日までの日数に応じて、年率14.6%の遅延利息を支払う必要があります。

【実務に影響するポイント】
・新しい基準にもとづいて社内の発注や支払に関するフローを見直し、期日までの支払を徹底する必要があります。

⑥従業員数基準を追加

下請法は、親事業者・下請事業者の資本金によって適用範囲が決まりましたが、資本金は意図的に操作が可能で、事業規模の実態を示していない点が課題でした。

取適法では、従来の資本金基準に加えて、新たに「従業員数基準」が追加されます。

委託取引の類型 適用対象となる従業員数
製造・修理・情報成果物作成など 300人超
役務提供・運送など 100人超

上記の基準により、資本金が適用基準以下であっても一定以上の規模(従業員数)を有する企業は、委託事業者として取適法の義務を負うことになります。

【実務に影響するポイント】
・適用の有無を判定するために、従業員数の正確な把握が実務課題となります。従業員数は変動するため、取引先に従業員数確認通知を定期的に求めるなどの対策が必要です。

そのほか、従業員数基準に関する内容や定義、適用対象などについては、公正取引委員会のガイドブックをご参照ください。

⑦特定運送委託を追加

下請法では、物品を運送する「役務提供委託」は適用対象でしたが、自家使用役務(自社のために用いるサービス等)の委託は対象外となっており、実務上の不整合が生じていました。

取適法では、発荷主が運送事業者に対して行う配送業務の委託が「特定運送委託」として追加されます。ただし、すべての運送委託が対象ではなく、取引の目的物を運送する場合のみに限定されるため、自社間運送・工場間移動のような用途は対象外となります。

【実務に影響するポイント】
・発注書や契約書のテンプレートに「運送業務」が含まれる場合、委託内容(運送区間や方法、日時)を明記するなど、取適法に準拠した形式に改定する必要があります。

⑧金型以外の型等の製造委託を追加

下請法では、製造委託の対象が金型(金属製の型)に限定されています。一方、取適法では、金型以外の型(木型・樹脂型等)や治具(じぐ)等の製造委託も対象に追加されます。
この改正により、商慣行として行われていた木型・治具の無償製作依頼や、不当な割引要求などが法令違反となるため、契約内容や発注プロセスを見直す必要があります。

【実務に影響するポイント】
・下請法の対象外として管理していなかった「木型」などの取引について、取引先の資本金や従業員数を個別に確認し、取適法の適用対象となるかを確認する必要があります。

⑨面的執行の強化

下請法に違反した場合は、公正取引委員会・中小企業庁による勧告や立入検査、報告徴収命令などの行政手続が執行されます。

取適法では、上記に加えて「事業所管省庁の主務大臣」に指導・助言等の権限が与えられます。主務大臣が通報先として追加されることで、違反行為の摘発や指導が「面的に展開される」体制が整備されました。

【実務に影響するポイント】
・報復措置と取られかねない行為を抑制するために、通報があった場合の対応フローを策定したり、コンプライアンス研修を実施したりなどの対策が求められます。

⑩勧告可能範囲の拡大

下請法では、支払遅延などの違反行為がすでに終わっている場合、後から勧告することができませんでした。

取適法では、違反行為が終了している場合(違反行為がなくなっている場合)でも、公正取引委員会が承認すれば、再発防止のために勧告できるようになります。
勧告・通報した場合の報復措置(取引停止や減額など)も禁止されるため、従来の契約・支払等のフローを見直しつつ、違反リスクを軽減するための対策が必要です。

【実務に影響するポイント】
・法令遵守のために、優越的地位の濫用となるような行為が発生しないようにマニュアルを作成したり、相談窓口を設置したりなどの対策が求められます。

下請法改正後に発生する義務や禁止事項

下請法の改正後(2026年1月1日以降)は、委託事業者に4つの義務が生じます。

①書類作成や保存義務
・取引に関する一連の内容(委託した業務内容や支払状況など)を記録し、2年間保存する必要があります。

②発注内容の明示義務
・契約の重要事項(委託内容や納期、報酬額、支払期日など)を記載した書面、あるいは電磁的方法による記録を、発注する際に直ちに交付する必要があります。口頭での発注や、曖昧な依頼内容は認められなくなるので注意しましょう。

③支払期日に関する義務
・成果物を受領した日(役務提供の場合、役務の提供を受けた日)から起算し、60日以内のできる限り早い期間内で「支払期日」を定める必要があります。

④遅延利息の支払義務
・支払期日までに未納の場合、受領日から60日を経過した日から、実際に支払う日までの日数に応じて、年率14.6%の遅延利息を支払う必要があります。

また、委託事業者の優越的な地位の濫用を防ぐために、中小受託事業者に責任がない(あるいは正当な理由がない)場合、次のような行為を「禁止事項」として定めています。

禁止事項 概要
①受領拒否 発注した物品等の受領を拒否すること
②代金の支払遅延 支払期日までに代金を支払わないこと
③代金の減額 発注時の代金を発注後に減額すること
④受領後の返品 発注した物品等を受領後に返品すること
⑤買いたたき 通常より著しく低い代金を不当に定めること
⑥購入・利用強制 指定する物品等を強制的に購入・利用させること
⑦報復措置 違反行為を知らせたことを理由に、
不利益な取り扱いをすること
⑧有償支給原材料等の対価の早期決済 支払日より早く原材料等の対価を支払わせること
⑨不当な経済上の利益の提供要請 金銭や役務等を不当に提供させること
⑩不当な給付内容の変更・やり直し 発注の取消しや無償で追加作業をさせること
⑪協議に応じない一方的な代金決定 価格協議の求めがあったにもかかわらず、
一方的に代金を決定すること

禁止事項の詳細については、公正取引委員会の資料をご参照ください。

下請法改正に備えるためのチェックリスト

以下のチェックリストを参考に、下請法改正に伴う準備をしておきましょう。

チェック項目 対応状況
①自社の従業員数が300人/100人を超えているか 済/未
②取引先の従業員数を把握しているか 済/未
③従業員数通知義務などの契約条項を追加したか 済/未
④契約書・発注書に必要な記載事項(支払期日など)を追加したか 済/未
⑤価格交渉に対応する体制・フローを準備しているか 済/未
⑥手形などを利用している場合、決済の代替手段を用意しているか 済/未
⑦減額時の遅延利息に対応するための社内処理ルールはあるか 済/未
⑧書面交付記録の電子化やログ保存体制を整備しているか 済/未
⑨通報・報復対応に関する相談窓口や対応マニュアルがあるか 済/未
⑩部門間(経理・営業など)の連携体制の構築は進んでいるか 済/未

下請法改正に関するQ&A

最後に、下請法改正によくある質問をいくつか紹介します。

Q. 改正された下請法はいつから施行される?

A. 下請法改正の施行日は、2026年1月1日です。

【下請法の改正内容】
①法律用語の変更
②価格協議の義務化
③発注書の電子交付の柔軟化
④手形払が全面禁止
⑤遅延利息の対象範囲の拡大
⑥従業員数基準の追加
⑦特定運送委託を追加
⑧金型以外の型等の製造委託を追加
⑨面的執行の強化
⑩勧告可能範囲の拡大

上記の変更点は、2026年1月1日以降に発注される事業者間取引から適用されるため、2025年中に対応を完了させる必要があります。

Q. 下請法の改正によって企業はどんな対応が必要になる?

A. 支払の厳格化や適用範囲の拡大などの影響により、契約や支払といった実務領域での見直しが求められます。一時的な対応ではなく、恒久的な体制として構築できるように、法令モニタリングの常設化や、弁護士などの士業にリーガルチェックを依頼する方法が有効です。

具体的な対応については、前述の「下請法改正の内容・ポイント」や、公正取引委員会の特設ページをご参照ください。

Q. 下請法に違反したら罰則はある?

下請法(取適法)に違反した場合、公正取引委員会や中小企業庁などによる勧告や立入検査、報告徴収命令などの行政手続が執行されます。また、違反行為をした委託事業者の企業名が公表されたり、50万円以下の罰金が科されたりする可能性があります。

下請法の改正により、企業が意図せず違反してしまうリスクが高まっているので注意が必要です。

クラウドワークスを活用して下請法改正に備えよう

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