
日本政府が推進する働き方改革ですが、これは大企業にかぎった政策ではなく、中小企業も対象には含まれています。大企業に比べ、資金的にも時間的にも余裕の少ない中小企業がどのように働き方改革に対応していけば良いのか、課題と具体策を考えてみましょう。
目次
働き方改革関連法案の影響とは?
働き方改革関連法案が2018年6月に参議院本会議で可決されました。これによって企業は働き方改革への取り組みが必須となっています。
働き方改革関連法案の3つの柱
働き方法案は3本の柱から構成されています。一本目の柱は残業時間の上限規制です。これまでは労働者との協定があればほぼ無制限に残業が可能でしたが、法案成立後は原則として月45時間、年間360時間に規制されます。
二本目の柱は同一労働同一賃金です。正社員やパート、契約社員といった労働形態によって賃金が変わっていたものが、労働内容によって賃金を統一するように変わります。
そして、三本目は脱時間給制度です。高度プロフェッショナル制度が導入され、コンサルタントや証券アナリストなど高年収である一部の専門職を対象に、時間ではなく成果によって給与が決められるようになります。
中小企業は施行時期が猶予されている
働き方改革法案は2019年4月に施行と言われていますが、先ほど説明した3つの柱それぞれでタイミングが異なります。もっとも早く施行されるのは、残業時間の上限規制と脱時間給制度です。
しかし、大企業に比べて中小企業は施行開始が先送りになります。脱時間給制度に関しては2019年4月で大企業と変わりませんが、残業時間の上限規制は大企業の1年後となる2010年4月から、同一労働同一賃金は2021年4月からとなり、こちらも大企業の1年後からの開始です。施行時期が猶予された背景には、制度導入準備に中小企業のほうがより時間を必要とするのではないか、という見方があったためです。
働き方改革を巡る中小企業の課題は?
働き方改革を進めていくにあたり、中小企業はどのような課題を抱えているのでしょうか。
人手不足
中小企業は、大企業と比べても人手不足に陥っている企業が多いのが特徴です。ヒューマンリソースが限られている中で、労働時間の見直しや職場環境の整備など、改革を推進していくことの大変さが浮き彫りになっています。
賃金の高騰と採用難
就職は売り手市場が続いていることもあり、中小企業にとっては人材の獲得がますます難しくなってきています。それに加えて働き方改革によって実質的な賃金の高騰は避けられないため、どのようにして人材を確保するのか、人件費を確保するための利益をどのように生み出していくのかが大きな課題です。
残業規制による失注の可能性
これまでは繁忙期などにおいて残業の規制が実質ない状態でしたが、働き方改革施行後は繁忙期であっても残業時間の規制があるため、これまで同様に仕事を受注できない可能性があります。季節による仕事受注に波がある企業では、経営戦略の見直しが必要です。
中小企業に働き方改革は必要?
働き方改革はどうやら中小企業にとっては条件が厳しく、向かい風になってしまっているのではないかという懸念もあります。日本の企業のほとんどを占める中小企業にとっては、働き方改革はしないほうが良いのでしょうか?
中小企業において、働き方改革があろうがなかろうが、いくつもの深刻な問題を抱えていることには変わりありません。大きな問題のひとつとして挙げられるのは人材不足です。不安定な経営から人材が離れていくという悪循環は、働き方改革によって改善できる可能性があります。
働き方改革をし、魅力的な職場環境を整えることによって、優秀な人材が集まることが期待できます。また、多様な働き方を取り入れることによって、出産や育児でキャリアを離れてしまった優秀な女性人材の獲得や、シルバー人材などの登用を行うことも期待できます。
中小企業の働き方改革への対応策は?
中小企業は今後、働き方改革に対してどのように対応していけば良いのでしょうか。手をつけやすい具体的な方策を4つ見てみましょう。
勤怠管理を適切に行う
働き方改革の柱のひとつでもある時間外労働の規制について対策するためには、まずは自社の現状を知る必要があるでしょう。そのためにできることは、勤怠管理を適切に行うこと。今の労働実態を知ることで、どの部署の残業が多いのか、どこをどのように改革すれば良いのかが具体的に見えてくるはずです。
主婦や高齢者など多彩な人材の活用
働き改革はライフスタイルに合わせた多様な働き方を推進しています。正社員という既成概念にとらわれない、新しい働き方を取り入れることが重要です。その手始めとして、以前はフルタイムで働いていたような能力の高い主婦や、働きたい意欲の高いリタイア層といった人材の活用を始めてみても良いでしょう。
ITツールの導入による業務効率化
労働時間制限などの規制強化が伴う働き方改革ですが、実質的な労働時間の短縮は慢性的な人手不足に陥っている中小企業にとってはマイナスです。このピンチは業務の効率化を図ることで解消しましょう。中でも、ITツールの活用は初期費用こそかかりますが、一度導入してしまえば人材不足解消と業務効率化の両方を適えることができ、長い目で見ると高い費用対効果を発揮します。
アウトソーシングの活用
最後に紹介するのはアウトソーシングの活用です。すでに一部の企業では積極的に活用している事例がありますが、アウトソーシングを活用することで、社員は、社員自身が直接取り組む必要のあるコア業務に集中することができます。社員がコア業務に集中できると作業能率は向上し、さらに残業時間も減らすことが可能です。
こちらの記事は、社員自身が直接取り組む必要のないノンコア業務を外部化することで、社員がコア業務に集中できるようになった企業事例です。あわせてご覧ください。
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まとめ
働き方改革を実行するにあたって、特に中小企業は課題も多いです。政府もそれを見越して中小企業に対しては猶予措置を取っています。しかし、時間があるから急いで対応しなくても大丈夫ということではありません。今からできることを少しずつ始めていくことで働き方改革を進めていきましょう。