マーケティングや集客に関する業務を担当している人ならば、ペルソナマーケティングをご存知のはずです。実際に設計部分に携わったことがない人でも、いざ導入となればスムーズに進めていくための知識が必要となります。そこで、ペルソナマーケティングの概要や設定すべき項目例、作り方、企業の成功事例を紹介します。
ペルソナマーケティングとは?
そもそもペルソナマーケティングとは何でしょうか。ペルソナマーケティングについての理解を深めていきましょう。
ペルソナマーケティングの概要
ペルソナマーケティングとは、企業の商品やサービスを使う具体性のある架空のユーザー像(ペルソナ)を作り、マーケティングに活かす手法です。ペルソナマーケティングによってユーザー情報を具体化することは、その分析に沿って商品やサービスをどのように売っていくかを考える手立てとなります。
ペルソナ設定に役立つ項目例
ペルソナを作成する際のテンプレートや、設定すべき項目例をまとめておくことで、商材が変わってもここに当てはめるだけで良いので便利です。たとえば、ペルソナ設定の項目としては以下のようなものがあります。
・性別(男性なのか女性なのか)
・居住地(都会なのか田舎なのか、都道府県はどこか)
・生活パターン(起床/就寝時間、休日は何曜日か、勤務時間、休日の過ごし方)
・買い物パターン(店頭で購入する人なのか、ECサイトで購入する人なのか)
・趣味(どのようなことに興味があるのか、もっとも時間を割くことは何か)
・学歴(どのような学歴があるか)
・家族(恋人や配偶者の有無、子供の有無、1人暮らしなのか実家なのか)
・収入(収入や貯蓄はどのくらいか)
・情報源(よく利用するメディアやサイトは何か)
・服装(流行をとりいれるタイプか、おしゃれなのか)
・交通手段(車で移動するのか、電車で移動するのか)
さらにほかにも、「ものの考え方」「悩み」「決定権」「健康状態」などもあります。属性・行動・志向といった多岐にわたる情報をテンプレート化してまとめておくことで、価値観やライフスタイルなどの見えにくい部分も見えてくるようになります。
ペルソナマーケティングのメリット
マーケティングにおいてペルソナを設定するメリットには、以下のようなものがあります。
関係者間での共通のイメージ形成
マーケティングは年齢や性別の異なるさまざまな人間が関わるため、関係者間で異なる認識を持っているとターゲット像があいまいになってしまう可能性があります。ペルソナマーケティングによって、担当者だけでなく、デザイナー、ライター、プランナー、管理者なども共通のイメージを共有できるので、スムーズな実行と改善につながります。
顧客視点でものごとを考えられる
ペルソナを通して商品やサービスをとらえる目線が生まれるため、サプライヤー目線に偏りがちだった商品やマーケティングに顧客視点を混ぜることができます。つまり、ペルソナによって一人の像を決めることで、その他大勢の人々を満足させることにつながり、結果として商品やサービスの完成度を上げることにもつながるのです。
時間や工数をカットできる
商品を求めるユーザーがペルソナによって的確に見えてくれば、その後の方針がはっきりしてきてムダがなくなるのもメリットです。効果的なアイディアが出やすくなり、行うべき施策も絞られてくるので、無駄な作業に費やす時間・工数が少なくて済むようになります。
ペルソナマーケティングの作り方とは
実際に設計段階からペルソナマーケティングを行っていきましょう。
事前に市場の情報を集める
まずは、商品・サービスをとりまく現在の市場の情報を集めます。既存顧客の情報を洗い出し、インタビューやアンケートを行って情報収集をしていきましょう。必要な情報はさきほど上げたようなテンプレートに準拠して集めます。情報収集は、行動そのものではなく、その行動をした理由や動機について探るとより深みのある情報が得られます。
集めた情報を使いペルソナを形成する
集めた情報をもとに、どんな人物が商品やサービスを求めるのか、利用する可能性があるのかなどのペルソナを形成していきます。ぜひ上で紹介した項目例も参考にしてください。複数のペルソナを同時に作る場合は、年齢・家族構成・年収・役職・1日の過ごし方・価値観・悩み・商品やサービスを利用する動機・情報源など、共通項をつくってまとめていくのもコツです。
ペルソナにストーリー性をもたせる
ペルソナは、ただ単にモデルとなる人物を想像して設定すればいいものではありません。想定した人物のストーリーテリングが必要です。これによってペルソナがより具体化し、実際の顧客がイメージしやすくなります。
BtoB向けのペルソナの作り方
BtoB向けの商材を扱う会社の場合、人物ではなく企業のペルソナを作る必要があります。というのも、BtoBの場合は指示者・選定者・決裁者・利用者がそれぞれ異なり、関わる人数も複数になるケースがあるため、ルートが複雑だからです。加えて、ユーザー調査も難しいため困難が多くなります。
ただし、結局は人が商品を選び、人が決済することには変わらないので、ペルソナマーケティングの利用は間違いではありません。BtoB向けの商材を扱う会社がペルソナマーケティングを実行する際は、以下のようなペルソナ設計が必要です。
ペルソナの基本情報(役職、組織)・ペルソナの業務内容・ペルソナの持つゴール・ペルソナの情報源・接触のタイミングや方法・製品やサービスの選び方・よく利用するオンラインツールなどで構成するようにしてください。
関連記事:ペルソナの作り方とは?詳細な作成方法やBtoB向けの注意点を解説
ペルソナマーケティングの成功事例
Soup Stock Tokyo
Soup Stock Tokyoは、慌ただしく働く女性がホッとできるファストフード店をコンセプトにしたスープのお店です。設定したペルソナは37歳の女性で、独身または共働きで経済的に余裕があり、シンプルでセンスのいいものを追求するタイプ。社交的だけれども自分の時間も大切にして人生を楽しみたい、都心で働くキャリアウーマンの「秋野つゆ」という女性像を掲げました。
「秋野つゆ」という架空の消費者像が満足できるものを徹底して追求し、商品開発やマーケティングを行いました。高めの価格設定、かつ、出店場所はオフィス街や駅チカの店舗というペルソナに従った強気の設計を行ったことで、自社のブランディングにも繋げることができ、創業10年で売上高42億円を達成するなどの大きな成果を得ています。
日立アプライアンス株式会社
業務用空調機を手がける日立アプライアンス株式会社は、BtoB向けの製品がメインです。設備店1,800社以上にアンケート、直接インタビューを行いながら「旭立信彦」というペルソナを設定しました。「旭立さんはどういう情報が必要なのか」という視点で販促ツールの見直しを行うなど、ペルソナに沿ったマーケティングを進めていった結果、ある製品モデルのエアコンの市場シェアは9.8%から11.1%へと伸びたそうです。
ペルソナマーケティングの失敗例
ペルソナはターゲットとは異なるため、架空とはいえ「本当に実在しているような一人」にまで落とし込んでいかないと意味がありません。最後に、ペルソナマーケティングで注意しておきたいポイントや失敗例を紹介します。
属性のみを考えて深掘りできていない
年代や性別といった大まかな属性しか設定せず、ペルソナを深掘りしなかった場合、対象となるペルソナが広すぎてしまい、商材に対して関連性の薄い人たちもターゲットとなってしまう可能性があります。
一度作成したら変更せずそのまま
商材を取り巻く環境は時代の流れと共に変わり、求める人々も変わっていく可能性があります。トレンド性のある商材ならなおさらですが、一度作ったペルソナは絶えず作り直してブラッシュアップしていくことが必要です。
作成時にターゲットを絞ってしまう
ペルソナの設定=ターゲットの絞り込み、ではありません。ターゲットがわかっている・想定されているからこそ、最初からターゲットの絞り込みができるのかもしれないですが、それでは意味がありません。ペルソナ設定時は絞り込まず、スタンスを広くとるべきです。
まとめ
ペルソナマーケティングの概要やターゲットを決める項目、ペルソナの作り方などを解説してきました。ペルソナマーケティングは今まで見えてこなかった顧客ニーズをあぶり出し、より効果的なマーケティングを進めていくための手段になります。ぜひペルソナ設定で成功した企業事例なども参考に、ペルソナマーケティングを検討してみてください。