長引く人材不足や働き方の多様化により、人事部など人材関連の部署の業務は膨大になりつつあります。そこで注目されているのが「採用アウトソーシング」。では、実際にどのような業務を代行依頼すると良いのでしょうか?ここでは採用アウトソーシングについて、そのメリット・デメリットや活用方法を紹介します。
目次
採用アウトソーシングとは?
まず、採用アウトソーシングや採用代行の意味や、求められている背景などを紹介します。
採用アウトソーシングの意味
採用アウトソーシングとは、エントリーや問い合わせ対応、説明会の開催など、採用に関する業務を代行サービス企業に依頼することです。「採用代行」や「RPO(Recruitment Process Outsourcing)」とも言われ、増加しつつある委託サービスのひとつです。
採用代行(RPO)が求められる背景
採用代行が増えている背景には、圧倒的な人材不足と働き方の多様化が影響しています。現在の採用市場は、新卒・中途ともに「売り手市場」であり、人材の争奪戦は過熱しています。それに加えて、優秀な人材の流出を防ぐために、人事部などは日々対策に追われているのが現状です。
また、働き方改革が本格化する中ではワークスタイルの多様化も進み、採用にまつわる制度や環境の変化はスピードアップしています。結果として、それらに対応する人事制度や評価制度、評価手法の導入などの業務量は膨れあがり、従来のように仕事をこなすことが難しくなったため、一部をアウトソーシングする採用代行が注目されているのです。
採用アウトソーシングの市場規模
日本能率協会コンサルティングが行なった調査「我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備」によると、2016年のアウトソーシング全体の市場規模は16兆円で、そのうち人事系アウトソーシング市場は800億円という結果でした。
ただし、人事系アウトソーシングには給与計算や社会保険処理、研修、人事管理、退職者支援なども含まれるため、実際の規模はそれほど大きくないと考えられます。
また、求職者1人あたりに何件の求人があるかを示す有効求人倍率は、厚生労働省のデータ「一般職業紹介状況(平成30年5月分)」によると、2018年5月で1.60倍。この数字はバブル期を上回る高水準となっています(※)。これに伴って、人材サービスの需要も高まると予測できるでしょう。
少子高齢化で今後も人材不足が続くなか、若年層や女性、シニア層を中心とする採用アウトソーシングの市場はますます拡大すると考えられます。
※出典元:日本経済新聞
採用アウトソーシングのメリット
ここでは、実際に採用アウトソーシングを行う場合のメリットを紹介していきます。
採用の質が向上する
採用アウトソーシングを請け負う会社は、豊富な実績とノウハウを有する専門性の高いプロ集団です。そのため、自社ではアプローチできなかった優秀な人材の確保や、効率の良い採用業務の遂行を期待できます。
コア業務に集中できる
採用アウトソーシングを活用すると、採用担当者が本来取り組むべきコア業務に集中できます。採用におけるコア業務とは、たとえば書類や面接においての合否判定、内定者のフォロー、人事戦略の立案など。それぞれの企業によって、自社で行う業務とアウトソーシングする業務を分けると効果的です。
こちらのAttack株式会社様のように、スカウト業務はクラウドワークス上で代行依頼し、外注する業務と外注しない業務を上手に分けている事例もあります。インタビュー記事になりますのでぜひご覧ください。
関連記事:クラウドソーシング前提の事業運営を。想像以上のワーカーと出会い、求人スカウト業務を依頼した事例を紹介:Attack株式会社
コア業務の定義や、コア業務に集中するメリットはこちらの記事をご覧ください。
関連記事:コア業務の定義とは?コア業務に集中するメリットや方法も徹底解説!
採用アウトソーシングのデメリット
メリット同様、採用アウトソーシングのデメリットも確認しておきましょう。
自社にノウハウが蓄積されない
採用業務を外部に委託することは、すなわち、自社にはそのノウハウや経験が蓄積されないということです。アウトソーシングをやめて自社で取り組もうとしても、今まで通りに進めることができる保障はありません。
委託コストが発生する
採用アウトソーシングは外部に業務を委託するため、コストがかかる点もデメリットです。社内で行った場合のコストと比較し、長期的な視点で採用業務を考えるようにして、コストパフォーマンスを検討してください。
採用アウトソーシングの料金相場
続いて、採用アウトソーシングにかかる費用を紹介します。
通常の採用にかかる費用
採用にかかるコストの内訳は、就職情報サイトへの掲載料、入社案内や採用ホームページなどの採用ツール類の制作、会社説明会の運営費などです。
マイナビの「2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」によると、2019年度の新卒採用にかかった1人あたりの平均費用は、53.4万円という結果でした。また、同じくマイナビの「転職中途採用状況調査(2017年度)」では、採用にかかる広告費だけでも営業職で1人56.8万円という結果となっています。
つまり、新卒採用にしても中途採用にしても、1人を採用するためには50万円以上の費用がかかり、仮に採用アウトソーシングを導入しないとしても、最低限これだけのコストが必要であることが分かります。
採用代行の料金相場
採用アウトソーシングの費用は、依頼する内容や、新卒採用・中途採用の違い、募集人数などによって大きく変動します。
さらに、代行会社が費用を設定する方法として、月別・内容別に固定費を請求するケースや、サービスが時間制となるケース、業務の件数に応じて課金をする従量単価制を導入しているケースもあり、会社によってさまざまです。依頼する内容によって複数社から見積りをとり、自社のニーズに合った会社を選ぶようにしましょう。
採用アウトソーシングを成功させるコツ
最後に、採用アウトソーシングを成功させるコツや注意点をまとめます。
業務分担を明確化する
採用アウトソーシングにおいて重要なのは、自社が行う必要がある業務(コア業務)と、アウトソーシングする業務(ノンコア業務)を明確に分けることです。業務分担の明確化ができていない場合、代行を利用しているにもかかわらず自社業務の負担が軽減されていない、などの問題にもつながりかねません。合否の決定などのコア業務はなるべく自社で行うようにしましょう。
ゴールを共有する
採用アウトソーシングでもうひとつ大切なのは、両者で採用活動のゴールを共有しておくことです。最終的に欲しい人材はどういうペルソナか、求職者に対して何を伝えていくか、などの企業側のスタンスを共通の認識事項として取り決めておきます。委託する会社に任せきりにせず、密なコミュニケーションが必要です。
まとめ
採用アウトソーシングをうまく活用することによって、社内の人事関連セクションの負担軽減につながり、優秀な人材確保の間口が拡がることでその可能性も高まることになります。どの業務で代行を依頼したいのかコア業務・ノンコア業務の線引きが明確にできたら、実際に活用して業務負担を軽減してみてはいかがでしょうか。