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公開日: 2024.12.11 / 最終更新日: 2024.12.23

【2024年11月施行】フリーランス新法をわかりやすく解説!企業の義務や対応とは?

フリーランス新法の施行日は、2024年11月1日です。今回は、フリーランス新法の概要や定義、発注者の義務や違反した場合の罰則、フリーランスガイドラインに関する内容などを紹介します。

※フリーランス新法の正式名称は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)ですが、本記事ではわかりやすくするために「フリーランス新法」と表記しています。

フリーランス新法とは

はじめに、フリーランス新法について簡単に紹介します。

概要

フリーランス新法とは、フリーランスに仕事を依頼する事業者に対して、業務委託における遵守事項(取引条件を明示する・報酬の支払期日を守るなど)を定めた法律です。フリーランスの労働環境を保護するために制定されたことから、フリーランス保護新法と呼ばれることもあります。

年齢による制限や、業種・業界などで限定されず、次に紹介する「定義」に当てはまる場合、フリーランス新法の保護対象になります。

定義 

フリーランス新法では、仕事を依頼する側の「発注事業者」と、仕事を受ける側の「フリーランス」について以下のように定義しています。

 

定義

特定受託事業者(※1) 業務委託の相⼿⽅である事業者で、
従業員を使⽤しないもの
特定業務委託事業者 フリーランスに業務委託する事業者で、
従業員を使⽤するもの
業務委託事業者 フリーランスに業務委託する事業者で、
従業員の使用の有無は問わない
従業員(※2)

週労働20時間以上、かつ31⽇以上の雇⽤が⾒込まれるもの

(※1)法律上では、フリーランスのことを「特定受託事業者」と呼びます。

(※2)短時間・短期間のように⼀時的な雇⽤の場合、「従業員」には含まれません。フリーランス新法では、従業員の有無がポイントになります。

一般的にフリーランスと呼ばれる方には、「従業員を使用している人」や「消費者を相手に取引をしている人」が含まれるケースもありますが、フリーランス新法における「フリーランス」には該当しません。フリーランスに該当するのは、以下のような人です。

・企業に属さず個人で働く人
・従業員を使用していない法人(一人社長など)

発注事業者は、従業員の有無によって「特定業務委託事業者」「業務委託事業者」の2種類に分かれます。例えば、従業員を使用する一般的な企業は特定業務委託事業者に該当し、フリーランスに業務委託するフリーランス(一人社長など)は業務委託事業者に該当します。

対象者

フリーランス新法で保護されるのは、あくまで仕事を受ける側の「フリーランス」のみです。また、発注事業者がフリーランスへ業務委託をするケースにのみ適用されます。

対象となるケース 企業が、フリーランスに宣材写真の撮影を委託する場合
フリーランスが、フリーランスにデザイン制作を委託する場合
対象ではないケース 消費者が、記念写真の撮影を委託する場合
(発注事業者からの委託ではないため)
フリーランスが、自作の電子ブックを販売する場合
(売買であって委託ではないため)

※委託する業務内容(写真撮影など)はあくまで一例です。

制定の目的、背景

フリーランス新法は、フリーランスが安心して働ける環境の整備を図ることを目的に制定されました。制定された背景として、フリーランスが取引上の不利益を被る機会(一方的に契約内容を変更される・報酬の支払いが遅れるなど)が少なくないことが問題視されているという点が挙げられます。

日本では企業に属することを前提として、雇用や社会保障に関する政策が発展しており、フリーランスに関する法律上の定義がなかったためです。

そこで、フリーランスを「特定受託事業者」と定義し、保護対象の条件を明確にすることで、立場の弱いフリーランスの労働環境を改善していくためにフリーランス新法が制定されたという経緯があります。

発注事業者・フリーランスそれぞれにデメリットはある?

フリーランス新法では、発注事業者の義務(遵守事項)が定められています。そのため、発注事業者からすると、仕事を外注する際の手間が増えることがデメリットです。

また、フリーランス新法に違反すると罰金が科される可能性があるため、「フリーランスへの発注を控える可能性があること」がフリーランス側のデメリットになります。

【発注事業者のデメリット】
・発注事業者の義務によって、発注する際の手間が増える
・フリーランス新法に違反すると、罰金などのペナルティを受ける可能性がある

【フリーランスのデメリット】
・フリーランスへの依頼を控える発注事業者が増えてしまう可能性がある

※発注事業者の義務や、違反した場合のペナルティなどについては、この後に詳しく紹介しています。

フリーランス新法における発注事業者の義務 

フリーランス新法は、フリーランスと発注事業者の間の「取引の適正化」を促し、フリーランスとして働く際の「就業環境の整備」を行うために制定された法律です。そのため、発注事業者の義務をそれぞれ明記しています。

「取引の適正化」に関する義務

①取引条件を明示する
②報酬の支払期日を守る
③受領拒否などの禁止行為をしない

 

「就業環境の整備」に関する義務

④求人情報を正確に記載する

⑤育児・介護等と仕事が両立できるように配慮する

⑥ハラスメント対策に関する体制を整備する

⑦中途解除の事前予告や理由の開示を行う

 

なお、以下のような要件に応じて、発注事業者が果たす義務の範囲が異なります。

 

要件 発注事業者の義務
従業員を使⽤していない場合 ①のみ
従業員を使用している場合 ①②④⑥

従業員を使⽤しており、
 ⼀定の期間以上の業務委託を依頼する場合

①~⑦のすべて

①取引条件を明示する

フリーランスに業務委託をする場合、次のような取引条件を明⽰することが義務付けられています。

【取引条件の例】
・発注事業者の名称
・業務委託日
・委託する業務内容
・報酬額、支払期日
・給付の提供場所や方法

取引条件を書⾯や電子メールなどで明示する必要があります。口頭での説明だけでは不可(明示したことにならない)とされているので注意しましょう。

②報酬の支払期日を守る

フリーランスに業務委託する場合、報酬の支払期日をあらかじめ設定し、その期日内にきちんと報酬を支払う必要があります。

具体的には、給付受領日・役務提供日(委託した成果物を受領した日)から起算し、60⽇以内のできる限り早いタイミングで報酬の⽀払期⽇を設定し、期⽇内に報酬を⽀払うことが義務付けられています。

③受領拒否などの禁止行為をしない

1カ⽉以上の業務委託をしている場合、フリーランスの責めに帰すべき事由なく、以下のような⾏為をしてはならないと明記されています。

7つの禁止行為
受領拒否 注文した物品、情報成果物の受領を拒む
報酬の減額 あらかじめ定めた報酬を減額する
返品 受け取った納品物を返品する
買いたたき 通常相場より著しく低い報酬額にする
購⼊・利⽤の強制 指定する物・役務を強制的に購入・利用させる
不当な経済上の利益の提供要請 協賛金を提供させる、無償で関連作業を任せる
不当な給付内容の変更、やり直し 費用を負担せず、受領後にやり直しをさせる

④求人情報を正確に記載する

広告などで求人情報を掲載する際に、以下のような虚偽の表⽰(あるいは誤解を招くような表⽰)をしてはならないと定められています。

【虚偽表示の例】
・意図的に、実際の報酬より高い金額を記載する
・発注事業者とは別の企業名で募集をかける

【誤解を招くような表示の例】
・報酬が確約されているかのように誇張する(報酬額の一例という旨を記載しない)
・すでに募集が終了している古い情報を削除しない

求人情報の内容は、正確かつ最新のものである必要があります。ただし、当事者の合意がある場合、求人情報の募集内容から取引条件等を変更することは可能で、フリーランス新法における違反行為にもなりません。

⑤育児・介護等と仕事が両立できるように配慮する

6カ月以上の業務を委託している場合、フリーランスからの申し出に応じて、以下のような配慮を行うことが義務付けられています。

・⼦どもの急病で作業時間の確保が難しい場合、納期を延長する
・妊婦検診を受けるために、就業時間などのスケジュールを調整する
・介護の時間を確保するために、⼀部業務をオンラインに変更する

なお、このような配慮を⾏うことが難しい状況の場合、配慮を⾏えない理由についてフリーランスに説明する必要があります。

⑥ハラスメント対策に関する体制を整備する

フリーランスに業務委託する場合、ハラスメント対策のための体制整備等の措置を講じることが義務付けられています。

例えば、ハラスメントにあたる言動等を明確化して周知徹底したり、トラブルの相談窓口を作るなど、フリーランスからの相談・苦情があった際に迅速に対応できるような体制を整備する必要があります。

⑦中途解除の事前予告や理由の開示を行う

6カ月以上の業務委託を中途解除する(あるいは更新しない)場合、原則として30日前までに、中途解除について書面や電子メール、ファックスなどで予告する必要があります。

また、解除⽇までにフリーランスから「中途解除の理由を開⽰してほしい」と請求された場合、理由の開⽰を⾏わなければなりません。

フリーランス新法を違反した発注者への罰則

フリーランス新法に違反した場合、行政(公正取引委員会、厚生労働省など)による指導や立入検査などが行われ、命令違反・検査拒否があると50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

また、発注事業者の従業員が違反行為を行った場合、違反者だけでなく、事業主も罰則の対象になるので注意が必要です。

違反した発注者へフリーランスができることとは

クライアント(発注事業者)が故意に違反とされる行為をしている可能性がある場合、公正取引委員会・厚生労働省・都道府県労働局などに相談が可能です。

なお、フリーランス新法を理解しておくことで、「自身の置かれた環境ではどのような対応が必要なのか」をクライアントにきちんと伝えることができるため、結果としてトラブルを未然に回避できるケースもあります。

フリーランス新法に関する注目のトピック

ここでは、フリーランス新法の注目トピックをいくつか紹介します。

①違反報告の相談窓口の開設

フリーランス新法の制定にともない、契約上のトラブル(あいまいな契約内容・ハラスメント・報酬の未払いなど)について、弁護士に無料相談できる窓口が開設されました。メールや電話、ビデオ通話、対面などによる相談が可能で、メールや電話での相談は匿名でも対応してもらえます。詳細については、フリーランス・トラブル110番をご参照ください。

また、厚生労働省にも相談窓口があります。フリーランスから申し出があった場合、違反の事実を調査し、違反する事実があった場合には違反を是正するよう措置を講じてくれます。詳細については、厚生労働省の相談窓口をご確認ください。

②フリーランス新法に関する説明会の開催

公正取引委員会は、フリーランス新法の普及や啓発活動として、発注事業者・フリーランスの双方を対象に、説明会を行ったり親しみやすい動画を制作したりしています。

説明会では、フリーランス新法の「取引の適正化」や「就業環境の整備」に関する内容だけでなく、下請法との違いにも触れながら解説しており、職員が個別に質問などに回答してくれる時間も設けています。なお、先着順・事前予約制というケースが多く、注意事項もあるため、詳細については公正取引委員会の公式ページをご確認ください。

③フリーランス新法に対応したレビューツールの開発

既存の契約書レビューツールなどもフリーランス新法への対応が進んでおり、フリーランス新法に準拠した契約書の作成をサポートする機能などが追加されています。

例えば、契約者の立場に応じて確認すべきポイントや必要事項の有無を提案してくれたり、チェック項目に弁護士監修の詳しい解説が付いていたりするため、契約書のレビュー・作成をスムーズに進めながら、法的な観点からの理解を深めることができます。

【関連知識】フリーランスガイドラインとは

フリーランスガイドラインとは、フリーランスと発注事業者が取引する際に、法律面でどのような点に留意すべきかや、労働基準法における「労働者性」の判断基準などを整理したものです。正式名称は「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」で、2021年3月26日に施行、2024年10月18日に改定されました。

フリーランス新法との関連性として、独占禁止法・下請法に関する内容を扱っていることが挙げられます。「発注事業者が優越的地位を利用し、フリーランスに対して不当に不利益を与えるような行為は、独占禁止法・下請法の規制対象となる可能性がある」という旨が記載されています。

独占禁止法(優越的地位の濫用)や下請法上問題となる行為の事例、労働関係法令との関係などについては、公正取引委員会の該当ページを参照してください。

クラウドワークスを利用するメリット 

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・イラストやデザイン制作:1点あたり3万円~
・アプリやシステム開発:10~30万円程度

一般企業とは違い、クラウドワークスには「事務局」という相談窓口があるため、トラブルが起きた際に相談したり、事前に問い合わせて確認したりすることもできます。そのほか、フリーランス新法の違反を防ぐ注意喚起も行っています。

 

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