「自己実現のマーケティング」とも言われているマーケティング4.0。2017年には、マーケティングの第一人者フィリップ・コトラーが「マーケティング4.0」についての本を刊行し、話題となりました。今回は、マーケティング4.0以前の1.0、2.0、3.0とはどんなものか、また、4Cや5Aのフレームワーク、具体的な事例についても解説します。
目次
マーケティング4.0とは
現在のマーケティングは「第四段階に入った」といわれます。この四段階目のマーケティング、すなわちマーケティング4.0は「自己実現のマーケティング」とも呼ばれています。具体的にはどんな特徴があるのでしょうか。
顧客の自己実現願望を購買につなげる
マズローは「要求段階説」を唱えたことで有名な心理学者です。マズローが言うには、人間は5段階の要求があり、まずは食事・睡眠などの生理的欲求があります。次にセキュリティを求める安全的欲求、所属・愛などを求める社会的欲求、ステータスを求める尊厳欲求が続き、最上位に自己実現欲求を置いています。
この自己実現欲求はデジタル時代のマーケティングと非常にマッチしています。今やSNSやWEBなどのデジタル世界の発展により、企業側だけが情報を握っているという時代は終わりました。むしろ個人の方がさまざまな情報を握っていたり発信していたりする時代といえます。
つまり、発信=自己実現を目指している消費者に購買を促し、消費者による情報の拡散を通じて顧客を増やすことを目指すマーケティングへと変わってきています。
「Wow!」という驚きを作りだす
人はどんな時に商品やサービスを人に紹介し、伝えたくなるのでしょうか。それは「Wow!」という驚きや感動の体験です。SNSなどで何万回も拡散されている情報の多くは、思いもかけない驚きの体験や、誰もが共感するストーリーを持ったもの。
みんな、「Wow!」を共感したいのです。マーケティング4.0ではこうした「Wow!」を戦略的に作り出すことによって、拡散され、認知や購買行動につながることを目指しています。
著者はマーケティングの父、コトラー
マーケティングに関わる人であれば、フィリップ・コトラーを知っている人も多いかもしれません。コトラーはマーケティングの父とも、マーケティングの神とも呼ばれています。
マーケティング・マネジメントの概念を生み出したのも、マーケティングの基本戦略の一つであるSTP分析を生み出したのもコトラーです。
そのコトラーが2017年に刊行した本が『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』。2010年に出された「マーケティング3.0」の続編と言えます。この本では、マーケティングは3.0から4.0へどのように変化したのかが詳しく解説されています。
前時代のマーケティングとの違いは?

では、マーケティングは時代の変化とともにどのように進化してきたのでしょうか。
製品中心のマーケティング1.0
初歩のマーケティングである1.0は、「製品中心のマーケティング」と言われています。コストを抑えて製品を作り、多くの人に宣伝して販売するという単純明快なものでした。大量生産・大量消費という時代の中で育まれ、「作ったものをいかに売るか」がテーマであり、人の感情や欲求については注目されていません。
消費者志向のマーケティング2.0
マーケティング2.0になると、消費者のニーズを満たすための商品開発が行われるようになります。これは多くの商品が市場に流通するようになり、「差別化」が重要になっていったためでした。
商品のポジショニングや顧客のロイヤリティを高めることが重視されるようになったのも2.0からです。この時点では4.0のように発信者は個人ではなく、すべて商品を開発する企業側でした。
価値主導のマーケティング3.0
マーケティング3.0は精神的な充足感を満たすマーケティングに変化しました。2.0では表面的な商品の必要性であって、機能的な部分での差別化でしたが、3.0になると選択した商品の背景にある価値に注目されるようになってきました。
環境保護や社会貢献への意識など、商品そのものではなく、企業自体の姿勢や社会との関係性を重視したものを消費者が求めるようになってきたのです。4.0と異なるのは、3.0でもまだ発信の主体は企業側であり、発信する企業と受信する消費者という二極構造のままという点です。
マーケティング4.0の新しいフレームワークは?

出典元:Aduer Times
マーケティング・ミックスは4Pではなく4C
マーケティング・ミックスといえば、Product、Place、Price、Promotionの4つのPを表す4Pです。しかし、マーケティング4.0において、コトラーは4Pから4Cへとマーケティング・ミックスを改訂しました。
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- Co-creation (共創)
これまでは製品は企業が開発して製造していましたが、これからはコンセプト作りから顧客を巻き込んで開発するというスタイルに変わります。顧客がカスタマイズしたり新しい活用方法を提案したりすることによって価値が広がっていきます。
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- Currency(通貨)
定価として売られていたものが、デジタル時代になると市場の需要によって価格が変動するものに変わります。企業は顧客の様々な情報を統合して顧客にあった価格提案を行い、収益性を最適化することが必要になります。
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- Communal activation(共同活性化)
インターネットで検索すればすぐに情報が手に入り、ボタン一つで購入ができることです。インターネットを通してすぐに顧客が商品やサービスなどにアクセスできることが求められます。
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- Conversation(会話)
これまでの情報発信は企業が一方的に発信していくものでしたが、ソーシャルメディアの普及によって顧客自身が反応したり、発信したりすることが容易になりました。企業は顧客と直接的な会話ができることが必要になります。
スマホ時代のカスタマージャーニー、5A
これまで、顧客の購買行動はAIDMAやAISASといったフレームワークが使われてきました。スマホ時代はこれが5Aに変わります。
AIDMAはアクション、つまり購買行動を起こさせることがゴールで、AISASはシェアされることでした。5Aにおいては推奨されることがゴールとなります。
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- AWARE(認知)
商品やサービスについて知っているという状態です。最近では広告ばかりでなく友人・知人からの推奨によって知る場合が増えています。
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- APPEAL(訴求)
たくさんの情報の中から自分自身が好ましいと思う商品やサービスを選別する段階です。商品にとってはいくつかの候補の中の一つとなることが重要です。
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- ASK(調査)
絞った候補の商品がどのようなものなのか、追加情報を得ようとする段階です。友人にアドバイスを求めたり、口コミ情報を探したり、企業と直接コミュニケーションをとる顧客もいます。
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- ACT(行動)
店舗もしくはオンラインでの実際の購入行動です。
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- ADVOCATE(推奨)
購入した商品に対してのロイヤリティを育み、口コミやSNSなどを使って他者へ推奨する段階です。他の顧客のAWARE(認知)につながります。
カスタマージャーニーについておさらいしたい場合は、下記記事を参考にしてください。
関連記事:カスタマージャーニーとは?活用メリットとマップの作成方法を解説
自己実現を達成させる事例とは?

マーケティング4.0の特徴でもある「自己実現」。以下では、自己実現を利用したマーケティング事例をいくつか紹介します。
仲間を増やすマーケティング「レッドブル」
エナジードリンクという市場を作り出したオーストリアのレッドブル。様々なスポーツのスポンサーをしていることでも有名です。レッドブルは自己実現の達成をサポートする企画を行っています。
2016年にはレッドブルを通貨としてヨーロッパ中を旅する「Red Bull Can You Make It!?」というイベントを立ち上げ、50カ国以上から165の学生チームを集め、彼らの自己実現をサポートすることに成功しています。
要因として、世界にインパクトを与えるというプロセスを参加者とともに「共創」したという点が挙げられます。
所有が自己実現につながる「ベンツ」
高級車と聞いて多くの人がイメージする車は「ベンツ」ではないでしょうか。インタビューの中で、「いつかベンツに乗りたい」「ベンツを乗ることを目標にしてきました」と答える経営者やプロ野球選手も強い印象があります。
ベンツはこれまで自社のブランディングとして、ベンツを所有する喜びや自己実現の提供を価値にしてきました。それがマーケティング4.0に非常にマッチした戦略となっています。
憧れのアスリートに「ナイキ」
シューズメーカーのナイキはアスリートとのコラボレーションを行うことで自己実現を達成させるマーケティングを行なっている企業です。ナイキのシューズを最も世に知らしめたのは、マイケル・ジョーダンでしょう。日本でもエアジョーダンが人気商品になりました。
また、サッカーでもネイマールやクリスチアーノ・ロナウドがナイキのシューズを履いています。サッカー少年たちは、憧れの選手に少しでも近づきたくてネイマールモデルやロナウドモデルのスパイクを購入します。これもマーケティング4.0の自己実現モデルと言えるでしょう。
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まとめ
自己実現を目的とするマーケティング4.0は、現代のマーケティングにおいて非常に重要かつ有効的な考え方です。しかし、多くの日本企業は未だマーケティング2.0のままであるという指摘もあります。マーケティング4.0の新しいフレームワークを活用し、前時代的なマーケティング手法からの脱却を図ってみてはいかがでしょうか。







