マーケティング
公開日: 2023.06.26 / 最終更新日: 2024.01.15

PPM分析をマーケティング施策に活用する手順をわかりやすく解説

PPM分析とは、企業がどの分野の事業にどのくらいの経営資源を分配するかを検討するために用いる分析フレームワークです。正式名称はプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(Product Portfolio Management)と言います。本記事では、PPM分析をマーケティング施策に活用するまでの具体的な手順を解説します。

PPM分析とは

PPM分析は、経営資源の効率的な分配を検討する際に用いられる経営戦略フレームワークです。主に多角化企業や複数の事業を行う企業で取り入れられています。具体的には、事業を「花形」「問題児」「負け犬」「金のなる木」の4つに分類して、市場でのポジションや事業の将来性を把握していきます。

PPM分析を始めるために必要な準備

PPM分析を始めるためには相対的なデータの準備が必要です。具体的には「市場成長率」と「マーケットシェア」を軸に、自社が展開する事業を4つのフェーズに分類し、「人」「物」「金」「情報」といった経営資源の分配を決めます。ここでは2つの軸について解説します。

市場成長率=(本年度の市場規模/前年度の市場規模)

市場成長率とは、市場規模が前年比でどれくらい成長したかを示す数値です。「本年度の市場規模÷前年度の市場規模」という計算式で算出できます。

マーケットシェア=(売上高/市場規模)

次に、座標となるマーケットシェアを求めましょう。マーケットシェアは「売上高÷市場規模」という計算式で算出できます。

PPM分析のゴールは「投資リターン」

PPM分析を実施する際に重要なのは、「リターンを得られるプロダクトへ優先的に投資する」という観点です。短期的・中期的な視点で事業を成長させつつも、未来の事業の軸となる事業には投資を続けなくてはいけません。そのため、常に以下のような点を検討しながらPPM分析を行う必要があります。

・自社のプロダクト・ポートフォリオはどのような状態が理想か
・どのプロダクトに最も投資をすべきか
・コア製品はどのように改善すべきか
・隣接する市場にスライドできるか
・急成長する市場にどのようにシフトするか
・どうやってシェアを拡大するか

PPM分析を実施する際の注意点

PPM分析を正しく活用して事業を見直すと、より効率よく収益を上げるための選択と集中ができるようになり、利益拡大につながります。一方でPPM分析は、規模の経済や製品のライフサイクルを前提として分析されるフレームワークであるため、限界や欠点もあります。ここではPPT分析を実施する際の注意点を紹介します。

事業間の間接的効果・相互影響が考慮されない

PPM分析の限界として挙げられるのは、事業間の間接的効果や相互影響が無視されていることです。PPM分析では商品や事業単位で分析するため、相互に与える影響については考慮されません。事業には、一見利益や成長性が見込めなくとも間接的に企業全体の収益に貢献していることがあります。たとえば「負け犬」に分類された事業を切り捨てることで、「花形」や「金のなる木」への影響が失われ、ともに衰退してしまうということもあるのです。

クリエイティビティやイノベーションが活性化しにくい

PPM分析は、既存のビジネスや製品しか分析することができません。PPM分析だけに頼ってしまうと既定路線から離れられず、クリエイティビティが損なわれたり、革新的なイノベーションを見落としたりする危険性があります。

分析指標となる数値によって結果が左右される

PPM分析は前提となる指標の数字をどこから採用するかで分析結果が変わります。マーケットシェアも市場成長率も、絶対的な数字を使い続けるべきではありません。1つの製品や事業が複数の分野にわたる場合は特に、競合他社や市場を慎重に選びましょう。

PPMの実践型代表例

PPMは、1970年代にアメリカ戦略系コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)が開発したものです。ボストンコンサルティンググループの提唱以降も、さまざまなプロダクト・ポートフォリオのフレームワークが生まれています。ここでは代表的な3つの例を紹介します。

アンゾフマトリクス

アンゾフマトリクスとは、アメリカの経済学者であるIgor Ansoff氏が1960年代に提唱したフレームワークです。提唱者であるアンゾフ氏の名前にちなんで「アンゾフマトリクス」、または「アンゾフの成長マトリクス」、「事業拡大マトリクス」と呼ばれます。
アンゾフマトリクスでは、市場を既存の市場と新しい市場の2つに区分し、製品も既存の製品と新しい製品に区分することで、事業成長の可能性を4象限に分類します。非常にシンプルな考え方ではあるものの、アンゾフ以前ではこのように切り分けて考えるフレームワークが存在しなかったため、当時は画期的な手法として受け入れられました。

アンゾフマトリクスの4象限をリスクの小さいものから順に下記に紹介します。

・第1象限「市場浸透」 既存製品×既存市場
・第2象限「新製品開発」 新規製品×既存市場
・第3象限「新市場開発」 既存製品×新規市場
・第4象限「多角化」 新規製品×新規市場

BCGマトリクス

BCGマトリクスとは、ボストンコンサルティンググループが提唱したプロダクトポートフォリオマネジメントです。BCGマトリクスは、市場成長率とマーケットシェアを2軸として、製品や事業を「花形」「問題児」「負け犬」「金のなる木」という4つのフェーズに分類します。

GEビジネススクリーン

GEビジネススクリーンとは、ゼネラルエレクトリックス(GE社)とマッキンゼーアンドカンパニー社によって開発されたPPMです。GEビジネススクリーンは縦軸を「業界の魅力度」、横軸を「業界の地位」として分析します。上記2つのフレームワークが2×2の4象限であったのに対し、GEビジネススクリーンでは3×3の9象限に分類するのが特徴です。また、指標軸を評価者が選定できるため目的に合わせて柔軟に活用することができます。

縦軸の「業界の魅力度」に活用する指標には下記のような例が挙げられます。

・マクロ環境(政治、経済、社会、技術)
・市場規模と成長率
・収益性
・競争環境
・参入障壁の高さ

横軸の「業界の地位」に活用する指標には下記のような例が挙げられます。

・市場シェア
・成長の可能性
・ブランド認知度
・ビジネスの利益率
・顧客ロイヤリティ
・製品、サービスの独自性
・自社の強み

それぞれの指標は「高、中、低」のように分けられます。適切な指標を設定するのは容易ではないためマーケティング中級者以上に適したフレームワークと言えます。また、製品やサービスの種類が多い大企業にとって活用しやすいでしょう。

PPM分析のさらなる活用には専門人材の活用を

マーケティング戦略は学問として学んでも現場で実践できなくては意味をなしません。本記事で紹介したフレームワークは、理論や方法について学ぶだけで終わらせず実践の場で経験を積むしか活用できる道はありません。PPM分析を活用し、どのプロダクトに経営資金を投じるべきか、またどのプロダクトを早期撤退させるべきか見極めるのは経営者であっても容易ではありません。そのためPPM分析を行う際は、訓練を重ねた専門人材の活用を検討しましょう。

クラウドソーシングTimes編集部
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