カスタマージャーニーという言葉を耳にしたことはありますか?カスタマージャーニーマップと言われることもあります。この記事ではカスタマージャーニーについての基礎知識やメリットに加え、自身のビジネスにあてはめた場合の作り方を、実際の事例も踏まえて紹介します。
目次
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、一言で言うと「顧客が購買・契約などに至るまでにたどったプロセスを明確にしたもの」です。
例えばあなたは車の購入を検討しているとします。まずテレビCMがきっかけで車の購入を検討し始め、その後インターネットや口コミから情報収集をして、数種類の車種に絞り込みを行います。そして実際に試乗を行い、性能や価格、購入後のサポートを比較して最終意思決定を行う、という流れが一般的でしょう。
このような一連の「消費者の行動」「行動に影響を与えた情報源」「その時の消費者の思考」などをまとめたものが、カスタマージャーニーなのです。
カスタマージャーニーのメリットは?
カスタマージャーニーという言葉についてイメージできたと思いますが、では、具体的にカスタマージャーニーはどういった点でビジネスに役に立つのでしょうか?ここでは、カスタマージャーニーを作って活用することのメリットを紹介します。
社内で共通の認識を持つことができる
カスタマージャーニーを作るメリットの1つ目は、社内で関わる人たちの間で消費者行動の共通認識が持てることです。マーケティングを進める際には、社内のさまざまなチームの協力が求められます。社内の人たちが購買に至るプロセスについて同じ認識を持つことによって、プロモーションやコンテンツのクオリティ、ターゲットリサーチなど、さまざまな面でよい効果を発揮するでしょう。
ユーザーの目線でものごとをみることができる
マーケティングの世界では消費者の立場に立って考えることは鉄則とされていますが、誰しもが自社に都合のよい方向に解釈してしまうことがあります。その結果としてトライアル率やリピート率など見誤り、業績にも影響を与えます。カスタマージャーニーを活用するメリット2つ目として、このような自社都合ではなく「ユーザー目線」で消費行動をみることができる点が挙げられます。
スムーズに企画・制作できる
カスタマージャーニーは、購入までの消費者情報をひとつのチャートに凝縮した内容の濃いものです。カスタマージャーニーを用いて説明することによって、関係者間の消費者への認識が統一化されます。そのため、意見が分かれやすい企画や制作をする際でも、選択する際の基準として活用することでスムーズな意思決定ができる点もメリットとして挙げられます。
カスタマージャーニーの作り方は?
カスタマージャーニーは、情報の整理・認識を統一化する点で活用度が高いチャートです。では、どのように作っていけばよいのでしょうか。ペルソナ作り、フレームワーク作り、ユーザー情報のインプット、マップ化という4つのプロセスで詳しく紹介します。
ペルソナを策定する
ペルソナとは、ターゲットの中でも最もコアとなる人物像を想定して、その人物の思考や行動などを設定することです。ペルソナを作る際に重要な点は、「1人の人物」を具体的にイメージできるようになるまで細かく設定すること。名前・年齢・居住地・職業・性格などの項目を設定していきましょう。
ペルソナの作り方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:ペルソナの作り方とは?詳細な作成方法やBtoB向けの注意点を解説
フレームワークを作る
次にフレームワークを作っていきます。横軸には、消費者が自社の商品・サービスに接触する「最初」の段階から、購入・契約など自社のゴールに至るまでの道のりを明記していきます。よく使われるものを挙げると、認知・興味関心・比較検討・購入・シェアなどです。
縦軸には、コンタクトポイント(どのように接触したか)、行動、思考、インサイト(消費者さえ気づいていない無意識な思考)、課題、上記に対する自社の施策を記載していきましょう。
ユーザーについて知る
次は作成したフレームワークに必要な消費者情報をまとめていきます。過去に行った調査や社内で持っている情報を再度見直して、不足している部分については追加調査を行ってもよいでしょう。ここで収集する情報は、カスタマージャーニーに入れ込むことによって社内の基準となります。多少費用をかけてでも正しい情報を集めることをおすすめします。
マップを作成する
フレームワークに集めた情報を入れていくマッピングの作業を行います。複雑で多様な消費者の行動を一連の流れにまとめることは、想像している以上に苦労します。立ち戻るのはペルソナ像と集めた事実です。時間をかけてでも社内の関係者の意見を取り入れながら、納得感のあるマップを作っていきましょう。
カスタマージャーニーの注意点は?
カスタマージャーニーの作り方は一見すると簡単なようですが、ひとつのマップ、道筋に消費者情報をまとめていくのは頭を悩ませることも多くあります。ここでは作る際の注意点をお伝えします。
企業の都合の良い妄想になりかねない
カスタマージャーニーを作るうえで陥りやすいのは、自社にとって都合の良いマップを作ってしまうこと。集めた情報から客観的に作ることを意識しましょう。現在の自社の施策がマップに沿っている必要はありません。作ったものを基準にして修正していくことが目的のため、事実ベースで作成していきましょう。
はじめに詳細に作りすぎない
マップに入れられる情報は限られています。最初から全ての段階で細かすぎる情報を入れ込むと、全体の流れを把握するためのマップとしては機能しなくなります。はじめから細かく作りすぎず、全体感をつかむという感覚からスタートしましょう。
見直したり改善したりしない
一度作ったカスタマージャーニーでも、大きな変化や欠けているポイントを見つけたらアップデートを行っていきましょう。消費者の行動は、受けるメディアや新しいテクノロジーによって影響を受けるものです。カスタマージャーニーは指針になるため、変化があれば見直し、一度完成したものでも疑う癖をつけましょう。
カスタマージャーニーの事例は?
ここでは、カスタマージャーニーを作って実際に活用した事例を2つ紹介します。1つ目は人材会社のために作成された就職活動のカスタマージャーニーマップとなり、2つ目は鉄道の乗車体験の流れが可視化されたカスタマージャーニーマップです。
就職活動の場合
出典元:Web担当者Forum
株式会社ロフトワークは株式会社パソナ パソナキャリアカンパニーのWebサイトリニューアルに関わっており、新卒採用のWebサイトを新しくする際に作ったマップがこちらになっています。
横軸に「選考前」「エントリー~面接まで」「内定~決定まで」、縦軸には「STORY」「DOING」「THINKING」「FEELING」「PROBLEM」を置いて、自社のWebサイトが就活生にとってどういう存在であるべきかを導き出しています。
鉄道会社の場合
出典元:Adaptive Path
ヨーロッパの鉄道会社・Rail Europeで鉄道旅行を計画する際に消費者がどのような行動をとるか、Adaptive Path社によってまとめられたものです。「調査」「比較検討」「予約」「旅行」「旅行後」という横軸と、「STAGES」「DOING」「THINKING」「FEELING」「EXPERIENCE」の縦軸でマッピングしています。「Opportunities」で自社のチャンスを明確にしている点も参考にしてみてください。
まとめ
今回はカスタマージャーニーの意味、メリット、作り方や注意点を紹介しました。カスタマージャーニーを作ることによって、今持っている情報の整理に加え、足りない情報が何かを明確にできます。消費者情報の整理や社内の認識を共通にするために、事例なども参考にしながら、カスタマージャーニーマップに一度挑戦してみてはいかがでしょうか?