印刷会社には、実店舗をかまえて営業する事業者とインターネットを通して注文を受ける事業者(ネット印刷)があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、印刷依頼の流れなども異なるため、自社に適した依頼先を事前に比較・検討しましょう。今回は、印刷会社の選び方や料金相場、おすすめの印刷会社などを紹介します。
目次
実店舗とネット印刷どちらがいい?
まずは、実店舗とネット印刷のメリット・デメリットを紹介します。
実店舗のメリット・デメリット
実店舗のメリットは、様々な印刷物(パンフレット・ポスター・シールなど)に対応していることです。また、印刷に関する要望や方向性(適した紙の種類・印刷方法・デザインなど)を担当者に相談できるため、専門的なアドバイスを受けながら印刷物を仕上げることができます。
一方で、ネット印刷に比べて人件費がかかるのでコストが割高となる点、印刷会社の繁忙期は納品までに時間がかかる点はデメリットといえます。
ネット印刷のメリット・デメリット
ネット印刷のメリットとして、365日24時間いつでも発注できること、依頼料金が安いこと、少ない枚数でも依頼できること、短納期にも対応していることなどが挙げられます。ネット印刷では担当者がいないため、相談の時間がかからず、相手のスケジュールに合わせる必要もありません。
一方で、担当者がいないと印刷のアドバイスを受けることができない点、印刷用のデータに不備があると受け付けてもらえない(デザインソフトなどで印刷用のデータを自作する必要がある)点などがネット印刷のデメリットです。
印刷依頼の流れ
次に、実店舗・ネット印刷それぞれに依頼する際の流れを紹介します。
実店舗へ依頼する場合
【実店舗に依頼する流れ】
1. 相談・打ち合わせ
2. 見積もり
3. データを送付
4. 印刷・加工
5. 内職・配送
まずは、印刷会社の公式サイトを通じて担当者に連絡し、依頼内容(必要な部数・サイズ・用紙の種類・印刷方法など)を伝えます。詳細が決まっていない場合、依頼内容について事前に相談することも可能です。相談の際には、印刷物の完成イメージを共有するための色見本や印刷見本を用意するとスムーズです。
その後、依頼内容をもとに費用・納期などの見積もりを担当者が提示し、双方が合意したら契約を交わすという流れです。
契約後は、依頼側が印刷物のデータを送付します。このとき、依頼内容と実際のデータに相違があった場合は、担当者による確認・修正が行われます。データのチェックが終わったら試し刷りを行い、問題ない場合は印刷を行って納品完了となります。印刷会社によっては、デザイン制作から印刷・配送までワンストップで対応していたり、印刷にくわえて内職(小分け・ラベル張り・セットアップなど)を依頼できたりするケースもあります。
ネット印刷の場合
【ネット印刷に依頼する流れ】
1. データを作成
2. 依頼内容の入力
3. データを送付
4. 入金
5. 印刷・配送
ネット印刷を利用する場合、各社の公式サイトにある「注文受付ページ」の指示に従って手続きを進めるケースが一般的です。ネット印刷では、完全データ(※修正なしでそのまま印刷できる状態の原稿)を依頼側が用意する必要があるため、まずはデザインソフトなどを使って印刷用のデータを作成します。
次に、印刷物のサイズや発注部数、印刷方法、仕上がり予定日などの項目を入力し、印刷用のデータを送付しましょう。このとき、印刷物のサンプルを事前に確認できる場合もあります。入力項目に過不足がなければトータルでかかる料金が提示されるため、クレジットカード払いなどによって入金を行うという流れです。依頼先が入金を確認した時点で受付が確定し、入力した内容のとおりに印刷(必要であれば加工・配送など)が行われ、納品完了となります。
3Dプリントを依頼する場合
【3Dプリントを依頼する流れ】
1. データ作成・入稿
2.コンサルティング(必要に応じて)
3.3Dプリンターで出力
4.納品
まずは、3Dデータ(3D設計データ)を作成します。きちんと見積もりを取るために、3Dデータを入稿する必要があるためです。入稿する際は、3Dデータをメールに添付するか、オンラインストレージで受け渡すケースが一般的です。3Dデータがない場合は、3Dプリンター用のデータ制作から依頼することもできます。
3Dデータの修正が必要な場合は、3Dプリント制作のコンサルティング(デザインの形状や耐久性、どんな素材が適しているかといったアドバイス)を依頼できるケースもあります。その後、3Dプリンターの機種などを選択し、見積り金額や納期を確認しましょう。注文内容や見積もりに問題なければ、3Dプリンターで出力・配送され、納品完了となります。
印刷を依頼する際の料金相場
印刷を依頼する際には、色の調整などにかかる固定費(基本料金のようなもの)が発生します。固定費を含めた料金相場は以下のようになっており、印刷物の種類や印刷方法、サイズ、部数、紙の種類などに応じて変動します。
【料金相場の例】
・名刺(片面・モノクロ・100部)=約500円~
・封筒(通常サイズ・特殊印刷・500部)=約5,000円~
・チラシ(A4・片面・カラー・5000部)=約2万円~5万円
・パンフレット(A4・両面・カラー・100部)=約2万円~
3Dプリントの料金相場は、1点あたり数千円~数万円ほどが目安です。造形サイズ(幅・奥行き・高さ)や形状、出力する素材、プリンタの機種などによって料金が大きく異なり、数十万円以上になるケースもあるため、事前に見積もりを相談しましょう。
印刷物のデザインにこだわる場合、DTPデザインを依頼するケースもあります。DTPデザインの料金相場やデザイン制作の流れについては、以下のページで詳しく紹介しています。
関連記事:DTPデザイン料金の相場を解説
印刷会社の選び方
続いて、印刷会社を選ぶ際のポイントをいくつか紹介します。
自社工場を持っているか
印刷会社には、「自社工場を持つ会社」と「工場を持たずにブローカーとしてサービスを提供する会社」があります。自社工場を持っている印刷会社に依頼する場合、ブローカーに支払う手数料がかからないため、比較的に料金が安い傾向にあります。
また、自社工場を持っていれば印刷の全工程(データチェック・印刷・製本・加工など)に対応でき、きちんと印刷物の品質管理ができる環境であるともいえます。
印刷以外にも対応しているか
印刷会社には、印刷のみに特化している会社と、印刷以外の業務にも対応している会社の2種類があります。
印刷物の企画・デザイン・製版・内職などをそれぞれ別の依頼先に頼むより、印刷をあわせて依頼できる印刷会社へ頼んだ方が費用対効果が期待できます。
得意分野は何か
印刷会社には、「高クオリティなパッケージ印刷」「商業印刷の実績が豊富」「印刷から内職まで対応可能」「他社と比べてリーズナブル」など、それぞれに得意分野があります。
そのため、依頼先の強みを事前に把握し、自社の要望とマッチしているかを確認してから依頼を行うことがポイントです。
情報の取り扱いがきちんとしているか
印刷物の中に個人情報・社外秘の情報などの記載がある場合は特に、情報の取り扱いがしっかりしている印刷会社かどうか確認してから依頼を行う必要があります。
情報関連の資格(プライバシーマークなど)を取得している、CSR(企業の社会的責任)の取り組みを重視しているなど、信頼度の高い印刷会社を選びましょう。
おすすめの印刷会社7選(3Dプリント対応あり)
ここでは、おすすめの印刷会社についてそれぞれの特徴を紹介します。
三晃印刷株式会社
「三晃印刷株式会社」は、創業90年以上の実績・ノウハウを活かして多彩な事業(出版企画・デザイン制作・漫画制作・映像制作など)を展開する印刷会社です。自社工場による高品質な印刷を提供しており、デジタルメディアのカラーリング(電子書籍などをモノクロからフルカラーにする作業)なども依頼できることが強みです。
株式会社新晃社
「株式会社新晃社」は、様々な印刷物(ポケットフォルダ・DM・ポスター・ポストカードなど)を取り扱っており、小ロットからの依頼も可能です。また、特殊印刷(箔押し・抗菌・スクラッチなど)や、特殊加工(エンボス・デボス・型抜きなど)にも対応しており、見る人の興味を惹くデザインに仕上げたい印刷物の依頼に適しています。
BEST PRINT
「BEST PRINT」は、様々な紙(上質紙・光沢紙・再生コートなど)を扱うネット印刷です。FSC®(森林管理協議会の認証マーク)が付いた再生紙による印刷も可能なため、環境に配慮した印刷物の依頼におすすめです。
短納期の印刷に対応しており、ネット印刷の中ではデザインのサポート体制(フルサポート・簡易修正)も充実しているため、ネット印刷が初めての人でも利用しやすくなっています。
東京カラー印刷通販
「東京カラー印刷通販」は、安く・早く・美しくをモットーに業界最安値に挑戦しているネット印刷です。例えば、チラシ・フライヤーは、A4・片面フルカラー・100部・当日仕上で2,000円前後から発注できるため、低料金で印刷を依頼したい人に向いています。
また、東京23区限定の特急サービス(3時間で印刷&即配送するなど)や、関東近辺限定のサービス(19時までの依頼は翌日の18~21時頃に配送など)も展開されています。
ラクスル
「ラクスル」は、印刷物や広告物のデザインから印刷・配送までを一貫して依頼できるネット印刷サービスです。無料のデザイン制作ソフトを提供しており、デザインのテンプレートを使えば簡単に印刷データを自作することもできます。チラシ印刷1枚1.1円~依頼でき、無料で印刷サンプルを取り寄せられるため、仕上がりを確認してから印刷・配送を行えます。そのほか、新聞折込やポスティング、ノベルティ・グッズ制作なども依頼可能です。
3Dayプリンター
「3Dayプリンター」は、約3日で3Dプリントを出力・配送してくれるサービスです。3Dデータがない場合でも、3Dデータ制作から出力・配送まで一貫して依頼でき、塗装や研磨などの豊富なオプションも用意されています。また、イラストや写真、CAD画面から3Dデータを制作してもらい、そのデータをもとに3Dプリントを依頼することも可能です。
DMM.make
「DMM.make」は、大手企業のDMM.comが提供する3Dプリントサービスです。低コスト&高品質の3Dプリントを依頼でき、専任スタッフによる各種サポート(個別見積り・3Dデータの修正など)を受けることができます。シリコンゴム・アクリル・チタンなど、50種類以上の素材から選択でき、複雑な造形や大型造形の3Dプリントにも対応しています。
幅広い印刷依頼ができる「クラウドワークス」
印刷・デザイン制作を外注する際は、比較的安くスムーズに依頼できるクラウドソーシングサービス(※)を利用する方法がおすすめです。なかでも日本最大級の受注実績を誇る「クラウドワークス」は登録者数480万人を超えており、経験豊富なデザイナーや、デザインと印刷をまとめて請け負うフリーランスなどが多数登録しています。
依頼先が個人になるため、印刷会社には頼みづらい内容(小ロットの印刷・デザインにこだわった特殊な印刷など)も発注でき、詳細な要件や納期、料金をオンラインの打ち合わせで相談することも可能です。また、NDA(秘密保持契約)を締結できるため、個人情報・企業情報などを掲載する印刷物でも安心して依頼できるという利点もあります。
そのほか、家庭用プリンターで3Dプリントを請け負う個人も探せるため、3Dプリンター用のデータ作成や出力を依頼できます。3Dデザイナーにイラスト制作のみ依頼したり、3D-CAD制作やモデリングを依頼したりなど、関連作業を部分的に任せることも可能です。
(※)クラウドソーシングサービスとは、仕事を外注したい人・受注したい人をインターネット上でマッチングするサービスのこと