一般的に、期間を定めないで雇用する正社員は「正規雇用」、アルバイトや契約社員などの雇用形態は「非正規雇用」と分けられます。しかし法律上ではその地位に差はありません。アルバイトと契約社員を採用する時の違いや、そのほかの非正社員の種類、それぞれの雇用時の注意点などを紹介します。
目次
アルバイトと契約社員の定義とは
まずは、一般的に知られているアルバイトと契約社員のそれぞれの定義を確認しましょう。
アルバイトの定義
アルバイトという言葉は、実は一般的な呼称で、法律用語ではありません。そのため、アルバイトの明確な定義はなく、「短時間勤務で働く雇用形態」として認識されています。雇用期間が定められ、労働日数や労働時間が正社員よりも少なく、業務の負担や責任も軽いものが、一般的に知られている「アルバイト」です。
法律上では、労働法が適用される「短時間労働者」であり、パート労働者もこれに含まれます。雇用契約に基づく労働者であるため、要件を満たすことで年次休暇の取得が可能です。さらに、雇用保険や健康保険、厚生年金の支給対象となります。
契約社員の定義
契約社員もアルバイトと同様、一般的な呼称です。雇用期間を定めて雇用される点ではアルバイトと同じですが、労働時間や日数は正社員と変わらないことがほとんど。正社員と大差がなく、特定のスキルを提供して重要な業務を行う従業員、というのが契約社員の一般的なイメージです。
法律上では「有期雇用契約者」のひとつであり、最長3年を目処に、労使双方の合意で決めた契約期間で働きます。ただし、有期労働契約が繰り返し更新され、通算5年を超えると、労働者の申込みで無期労働契約への転換が可能です。アルバイトと同様に労働法が適用されます。
アルバイトと契約社員の違い
次に、アルバイトと契約社員の法律上の違いについて説明します。
法律上は有期雇用契約と無期雇用契約のみ
上で紹介したように、日本の法律ではアルバイトや契約社員という「立場」を規定する法律はなく、正社員やパートという言葉も法律上では同様に存在しません。
民法で定められる雇用契約は、雇用期間の定めのある・なしで分類する「有期雇用契約」と、「無期雇用契約」の2種類しかありません。正社員やパートと呼ばれる従業員すべてがどちらか一方に分類されます。つまり、正社員も契約社員もアルバイトもパートも、法的な地位に差はないのです。
どの名称で募集するかは会社側の自由
通常、企業が従業員を募集する場合、「正社員募集」や「短期アルバイト若干名募集」など、呼称を使うのが一般的です。しかし法律上では、有期契約か無期契約のどちらにするかだけを決めればよいので、どの名称で募集するかは企業の自由裁量によります。つまり、会社が意図する定義で、それぞれの労働条件や地位を決めることができるのです。
契約社員で募集する会社が多い理由
アルバイトと契約社員の法的地位に違いはないものの、実は「アルバイト募集」ではなく「契約社員募集」とする企業が多いのが現状です。これは、契約社員という言葉に「社員」が含まれており、アルバイトよりも地位が高いイメージが定着しているため、「契約社員募集」のほうが多くの応募が集まるからです。
このように、有期雇用契約者であるアルバイトと契約社員を同じような意味で使っているケースが少なくありません。応募者に誤解を与えないためにも、契約条件(契約期間・業務内容・賃金・休日休暇・労働時間等)を明示することが重要です。
アルバイトや契約社員以外の非正社員とは
アルバイトや契約社員以外の「非正社員」「非正規雇用」についても確認しておきましょう。
嘱託社員
嘱託社員とは、有期の労働契約で雇用される、非正規雇用形態のひとつです。明確な定義が存在しないため、企業の採用条件や待遇によってその内容は大きく異なります。定年退職者の再雇用労働者や、特別な技能の提供を前提とした契約者など、さまざまなケースがあります。
契約社員との違いは明確ではありませんが、契約社員はフルタイム勤務が多いのに対し、嘱託社員には独自のルールが組まれることが多くなっています。
業務委託(請負)
業務委託とは、企業から仕事を受注し、その完成・納品によって報酬を受け取る雇用形態です。企業との雇用契約がなく、「事業主」として扱われるため、労働法に定められる労働者としての保護を受けることができません。ただし、働き方の実態によって「労働者」であることが認められれば、労働法規の保護を受けることが可能です。
業務委託で採用する場合には、企業側が注意しなくてはいけない点もあります。業務委託なのに雇用契約だと裁判所から判断された場合は、それなりの対処が必要となるためです。以下の記事では注意点も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:アルバイトと業務委託の違いを解説!採用側からみたリスクとは?
家内労働者
家内労働者とは、企業から物品の製造や加工などの仕事を受託し、個人でそれを行う労働者のことです。いわゆる内職的な仕事をする人となります。業務委託と同様に「事業主」として扱われますが、「家内労働法」が適用され、委託者には家内労働手帳の交付や最低工賃の遵守が求められます。
在宅就業者
在宅就業者とは在宅ワーカーとも言われ、企業などから委託を受けて、パソコンなどを利用したWebサイトの作成やプログラミング、グラフィックデザイン、ライティング、データ入力などを行う人のことです。
企業が副業を認める現代の流れに合わせて増えているワークスタイルですが、業務委託と同様に「事業主」として扱われるため、労働法規による保護は受けられません。委託する側は、厚生労働省がルールをまとめた「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」に沿った対応が求められます。
業務委託や在宅就業などのように外注をする場合、給与ではなく外注費として報酬を支払います。給与とは税務上での違いがあるため、併せて把握しておきましょう。
関連記事:外注の意味や特徴は?外注費と給与の違いや判断基準も解説!
雇用する以外で人材確保する方法とは
企業が人材を確保する際、正社員やアルバイト、業務委託などのような雇用以外に、クラウドソーシングを活用する方法もあります。クラウドソーシングには、特化したスキルの保有者や、専門知識や実績を有するその分野のプロなどが多数登録しており、自社が必要とするスキルや人材を見つけやすいのが大きな特徴です。
また、数カ月単位ではなく、スポット的な仕事の依頼もでき、企業に依頼するよりも費用を抑えることができます。さらに、アルバイトや契約社員の雇用と同様、人件費を固定費ではなく変動費化できるので、利益を生み出しやすいこともメリットです。
まとめ
正社員やアルバイト、契約社員などは、法律上ではその地位に違いはありません。法律上は有期契約か無期契約かの違いしかなく、雇用する側も、それらを正しく認識した上で募集要項や条件を決める必要があります。労働法適用外の非正規雇用者でも、独自の法律や国が定めるガイドラインが存在する雇用形態もあるため、注意が必要です。非正規雇用での人材確保を検討している場合はぜひ参考にしてください。