AWS(Amazon Web Service)を利用すると、コストを抑えながらさまざまなITリソースを活用することができます。今回は、AWSの費用の内訳や料金が決まる仕組み、AWSの料金を見積もる際の注意点、AWSの導入事例、2025年10月に発生したAWS障害についての情報などを紹介します。
目次
AWSの費用・料金体系
AWS(Amazon Web Service)とは、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスのことです。クラウドコンピューティングサービスを利用すると、パソコン1台とインターネットの接続環境があれば、さまざまなITリソース(サーバー・ストレージ・データベースなど)を必要なときに・必要な分だけ利用できます。
一方で、AWSの料金体系は利用した分だけ料金が加算される「従量課金制」なので、利用料金がどのくらいになるか把握しづらく、社内稟議が通せないと悩む方もいるでしょう。
AWSの導入を検討する際は、概算料金の見積もりが必要になるため、以下で紹介するAWSを利用する際にかかる費用や、AWSの料金体系を事前に理解しておきましょう。
AWSの概要や基本的な情報については、以下の記事をご参照ください。
関連記事:AWSとは何か?初心者向けに基礎から徹底解説!
①サーバー(コンピューティング)の料金
サーバー(コンピューティング)の料金は、1時間あたり約2~4円です。基本的に時間単位で料金が加算され、AWSのサービスを利用したときの実稼働時間(リソースの起動から停止まで)によって料金が決まります。利用するサーバーのコア数やOS、メモリの容量などを選択でき、選択内容によっては1時間あたり30~60円程度になる場合もあります。
仮想サーバーやファイルサーバーを構築する場合の料金体系についてはのちほど詳しく紹介します。
その他、サーバー関係の費用について詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:サーバー関連費用の相場をまとめて紹介
②ストレージの料金
ストレージの料金は、1カ月あたり約2~5円です。ストレージの容量に応じて1GB単位で料金が加算されます。また、利用するAWSのサービスや用途(ローカルハードディスクとして利用する・オンラインストレージとして利用するなど)によって、1カ月あたりの利用料金が異なります。
③データ転送の料金
データ転送の料金は、容量1GBあたり約10~15円です。AWSのサービスを利用してデータ転送する際にかかる料金で、AWSからインターネットへデータ転送する場合に発生します。一方で、AWSを利用する際に契約したデータセンターへ転送する場合や、AWSのサービスへデータ転送する場合は無料で利用できます。
AWSの費用・料金が決まる仕組み
ここでは、AWSの費用が決まる仕組みを紹介します。利用するサービスの種類や料金体系によってコストが変わるため、AWSの料金の決まり方を事前に確認しておきましょう。
従量課金制
AWSの料金体系は、サービスを利用した分だけ料金を支払う「従量課金制」です。時間単位(あるいは秒単位)で料金が加算され、水道料金や電気代のように月ごとの請求金額が変わります。例えば、仮想サーバーをレンタル・構築できる「Amazon EC2」は、利用時間に応じて1秒単位で料金が加算されます。
そのため、サービスを利用しない時間帯(休日・夜間など)は利用を停止するなど、稼働時間を調整すれば余計なコストを削減できます。
契約するサービスで料金が異なる
AWSは200種類以上のサービスを提供しており、利用するサービスや契約内容によって料金が異なります。例えば、「Amazon EC2」とストレージサービスの「Amazon S3」では、以下のような要素で料金が決まります。
【Amazon EC2の料金の決まり方】
・サーバーの台数
・ストレージの容量
・データ転送量
・インスタンスの種類(※詳細は次の見出しで紹介します。)
【Amazon S3の料金の決まり方】
・ストレージの容量
・データ転送量
・リクエスト数(※データのダウンロードや複製などの読み込み・書き込みの回数)
AWSの複数サービスを組み合わせて使うことも可能ですが、従量課金制は利用するサービスが増えるほど料金が高くなります。そのため、必要なサービスを必要なタイミングのみ利用する使い方のほうが、高い費用対効果が期待できるでしょう。
AWSの料金を見積もる際のポイントや注意点
AWSの料金を見積もる際は以下のような注意点や、より正確な見積もりを算出するためのポイントがあります。(各種サービスの具体的な料金については、1ドル=150円換算で計算しています。)
サーバー
AWSで仮想サーバーを構築する場合は、Amazon EC2を利用するケースが一般的です。サーバーの用途によりますが、AWSの利用料金の大半を占めるのが「サーバー利用料」で、EC2は以下の契約方法(インスタンスの種類)によって料金が大きく異なります。
【オンデマンドインスタンス】
・概要:スタンダードな料金体系
・特徴:構築した仮想サーバーの数などによって料金が決まる
・用途:お試しでAWSを利用したい場合など
【リザーブドインスタンス】
・概要:1年分(または3年分)を前支払いすると最大72%割引される料金体系
・特徴:全額前払い、一部前払い、前払いなしを選択できる
・用途:長期間、仮想サーバーを使う予定がある場合など
【スポットインスタンス】
・概要:オークション形式の入札で料金が決まり、比較的安く利用できる料金体系
・特徴:他ユーザーが高値で応札すると、利用が停止されるので注意が必要
・用途:一時的に、仮想サーバーを安く利用したい場合など
【Dedicated Hosts】
・概要:物理サーバーを占有できる料金体系
・特徴:他の契約方法と比べると料金は高い傾向にある
・用途:セキュリティやパフォーマンスを重視してサーバーを利用したい場合など
ストレージ
AWSの主なストレージサービスは、以下の3種類です。利用するストレージサービスによって料金体系(1GBあたりの月額料金)が異なるため、事前にチェックしておきましょう。
【Amazon EBS】
確保したストレージ容量によって料金が変わりますが、1GBあたりの月額料金は0.08USD(12円)前後です。
【Amazon S3】
実際に利用したストレージの容量によって、以下のように料金が変わります。
・最初の50TB:0.023USD(3.45円)
・次の450TB:0.022USD(3.3円)
・500TB以上:0.021USD(3.15円)
【Amazon S3 Glacier】
実際に利用したストレージ容量によって料金が変わり、0.004USD(0.6円)程度から利用できます。ただし、アーカイブデータを取り出す際にも課金されるので注意が必要です。
データ転送
データ転送の料金は、転送したデータ量が多いほど割引(ボリュームディスカウント)される料金体系です。例えば、Amazon S3からインターネットへデータを転送する場合は、以下のように転送量が10TBを超えると割引が適用されます。
【Amazon S3】
100GBまで:0.00USD(無料)
最初の10TB:0.09USD(13.5円)
次の40TB:0.085USD(12.75円)
次の100TB:0.07USD(10.5円)
150TB以上:0.05USD(7.5円)
AWSの導入事例とそれぞれの費用
ここでは、AWSの導入事例をいくつか紹介します。それぞれの事例でかかる費用の目安についても紹介するのであわせて参考にしてください。なお、AWSの料金表は米ドル表記で記載されていますが、日本円での支払いも可能です。
仮想デスクトップ(VDI)環境
AWSを利用して仮想デスクトップ(VDI)環境を構築する場合は、以下のようなAWS関連サービスを利用します。
【利用するサービスの例】
・オンプレミスとの接続:AWS VPN
・仮想デスクトップの構築:Amazon WorkSpaces
・仮想デスクトップの認証:Active Directory Connector
上記のAWSサービスを利用する場合、月額料金は320ドル(4万8,000円)程度です。例えば、リモートワーク(在宅勤務)で働く社員のために仮想デスクトップ環境を整える場合などで利用されています。
Windowsファイルサーバー構築
AWSを利用してWindowsファイルサーバーを構築する場合は、以下のようなAWS関連サービスを利用します。
【利用するサービスの例】
・オンプレミスとの接続:AWS VPN
・ファイルストレージ:Amazon FSx for Windows File Server
・アクティブディレクトリ:AWS Directory Service for Microsoft Active Directory
上記のAWSサービスを利用して、容量2TBのWindowsファイルサーバーを構築する場合、月額料金は400〜900ドル(6万円~13万5,000円)程度です。大量のデータを保存・バックアップしたり、社内などでデータを共有したりする際に利用されています。
動的Webサイト
動的Webサイトを構築する場合は、以下のようなAWSサービスを組み合わせて利用します。
【利用するサービスの例】
・データベース:Amazon RDS
・ロードバランサー:Elastic Load Balancing
・ネットワークアドレス変換:NAT ゲートウェイ
・SSL/TLS証明書の管理:AWS Certificate Manager
・サーバーやストレージ:Amazon EC2、Amazon EBS
上記のAWSサービスを利用して、動的Webサイトを構築する場合、月額料金は760ドル(11万4,000円)程度です。アクセスの負荷を分散したり、セキュリティ対策を施したりできるため、ECサイトや会員制サイトなどを構築する際に利用されています。
社内業務アプリ環境構築
社内業務アプリ(Windowsアプリ)環境を構築する場合は、以下のようなAWSサービスを組み合わせて利用します。
【利用するサービスの例】
・オンプレミスとの接続:AWS VPN
・ロードバランサー:Elastic Load Balancing
・サーバーやストレージ:Amazon EC2、Amazon EBS
・SQL Serverのデータベース管理システム:Amazon RDS for SQL Server
上記のAWSサービスを利用して、社内業務アプリ環境を構築する場合、月額料金は2,000ドル(30万円)程度です。AWSのデータベース管理システムへ移行する場合や、アプリなどを開発する場合に利用されています。
アプリを開発する際の費用について詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
関連記事:アプリ開発費用の相場を解説!
また、アプリを含むシステム開発全般の費用相場については以下の記事にまとめてあります。
関連記事:【発注前に】システム開発費用の相場はいくら?費用を抑えるコツも紹介
AWSの簡易見積もりツールについて
Amazonは、簡易見積もりツールの「AWS Pricing Calculator」を提供しています。利用料金の見積もりをする際の操作マニュアルも用意されており、必要項目(ストレージやメモリの容量、データ転送量など)を入力すれば、簡単に見積もり金額を算出できます。AWSのサービスによって見積もりの項目や、見積もり方法が異なるため、利用したいサービスを決めたら、操作マニュアルを確認しながら見積もりを算出しましょう。
なお、利用するサービスごとに見積もりを算出し、複数サービスを合算することも可能です。料金の見積もりを算出した後に、第三者に送る(共有リンクを生成する)機能もあります。
【参考】2025年10月に発生したAWS障害について

2025年10月に起きたAWS障害は大規模なもので、Amazon社が提供するアドビ製品だけでなく、オンラインバンキングなどの重要サービスを含む2000以上の企業やサービスに影響が及んだとされています
ここでは、AWS障害が起きた原因や影響範囲、障害が発生した場合の確認方法、今後留意したい点などを簡単に解説します。
障害の原因
2025年10月に発生したAWS障害は、リージョン内の「DynamoDB」サービスエンドポイントにおけるDNS解決の問題が原因とされています。DNS(ドメインネームシステム)とは、〇〇.comなどのドメイン名とIPアドレスを変換する仕組みのことで、DNSエラーが発生すると変換プロセスが実行不可となり、接続が中断されるなどの支障が生じます。
DNSエラーはインターネット上のよくあるトラブルであり、小規模で発生するケースが一般的で、個々のサイトなどに影響する程度のものです。ただし、AWSのような非常に広範囲で利用されているツールの場合、DNSエラーが世界中のサイトやシステムに影響する可能性があり、今回のような大規模障害が発生する原因となりました。
解消までの期間、影響範囲
AWS障害は、2025年10月19日午後11時49分頃(米国太平洋時間)に始まり、米国東海岸においてエラー率の上昇が見られたとされています。早急に緩和策が適用されたことで30分程度で回復の兆しが見られたものの、DynamoDBに依存する「EC2インスタンスの起動システム」などにも問題が発生したため、一部サービスの利用を制限して復旧作業を進めました。
その後、米国太平洋時間10月20日午後3時53分(日本時間21日午前7時53分)に、大規模なAWS障害が解消したとAmazonから発表されました。AWS障害の影響は日本にも及んでおり、Web会議ツール「Zoom」や、ビジネスチャット「Slack」などが一時利用しづらくなり、オンラインゲーム「フォートナイト」、レシピサイト「クックパッド」、任天堂のネットワークサービスなどでも障害が発生した旨が報告されています。
障害が起きた際の確認方法、対応、過去の事例
AWS障害が起きた場合や遅延などが発生している場合、AWS Health DashboardにログインすることでAWSの広域障害の情報や、AWSリソースが正常に稼働しているかどうかを確認することが可能です。
また、AWSと連携しているサービス・企業(Softbankなど)がリアルタイムで障害情報を提供しているケースもあります。
障害が発生した場合、なるべく早くシステムを正常な状態に戻すことが重要です。
障害の発生から復旧までの手順を事前に検討し、詳細についてドキュメントなどでまとめておけば、障害発生時の混乱を防ぐことができ、システムの迅速な回復につながるでしょう。
なお、過去にもAWS障害は発生しており、主に以下のような事例が挙げられます。
①2019年8月:空調設備システムの異常
②2021年2月:冷却システムの障害
③2021年9月:ネットワークデバイスの異常
AWSでは、これまでに空調設備管理システムのオーバーヒートや、ネットワーク接続機器の潜在的なバグ、サーバーの冷却システムトラブルを原因とする障害が発生しています。
今後留意したいこと
AWSはインターネットの根幹的な部分を担っているため、AWS障害が発生すると多くのサービスが遅延・停止する可能性があります。今回のAWS障害によって、インターネットが同じインフラに依存していること、そして問題発生時に多くの企業やサービスに影響することが明らかになりました。
そのため、今後もAWS障害は起こる可能性があるという前提で、自社システムへの影響を最小限に抑えるための対策を用意しておくことが大切です。
例えば、監視ツール(Mackerel・Zabbixなど)を活用すれば、早い段階でシステムの異常を検知できる体制を構築できます。また、「自社が依存しているAWSサービスがあるか」や、「AWSに依存している外部サービスを利用しているか」を把握しておけば、障害が発生したときに影響範囲をスムーズに特定することが可能です。
AWSのスキル・知識のある人材探しならクラウドワークス
AWSに詳しい人材を探す方法はいくつかありますが、クラウドソーシングサービス(※)を利用する方法がおすすめです。なかでも業界最大手の「クラウドワークス」は登録ワーカー数が500万人を超えており、AWSの導入サポートや各種サービスの運用代行、AWSを活用したアプリ・システム開発などを得意とする人材が多数登録しています。
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(※)クラウドソーシングサービスとは、仕事を発注したい人・受注したい人をインターネット上でマッチングするサービスのこと
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まとめ
AWSは200種類以上のサービスがあり、利用するサービスの種類や契約内容によって料金が異なるため、一見すると料金体系が複雑に思えるかもしれません。しかし、AWSの料金の決まり方はシンプルで、見積もりツールを使えば簡単に見積もりを算出できます。
AWSの導入を検討している場合は、障害時の対応なども考慮しながら進めてみてはいかがでしょうか。







