マネジメントにおける「当事者意識を持て」という言葉の死

Qに1度開催しているマネージャー合宿を続けて1年が経ちますが、今回の合宿で組織の価値観を話し合っていた時に、我々の中ではマネジメントにおける「当事者意識を持て」という言葉の明確な死、終わりを感じました。s_Image from iOS (1) (1)

と言っても、当事者意識という言葉自体を否定しているわけでありません。今でも当事者意識を持つことは重要だと思ってはいます。

あくまで、現在のクラウドワークスのマネジメントにおいては「当事者意識を持て」という言葉は死んだと感じた次第です。その経緯と理由を以下にまとめておきます。

(また、弊社株主を始めとして当事者意識という言葉でマネジメントしている会社があると認識していますので、他社についてとやかく言うつもりもありませんし、他社は他社でそのようなマネジメントで成果を出しているのだと思います。現在の日本社会を背景としてゼロから組織を作っているクラウドワークスでの話が原則です。)

■1.不確実性の時代における組織戦略が求められている


言わずもがなですが、改めて今の日本の状況を整理してみます。

・2018年段階で65歳高齢者が4人に1人を超え、28.1%
・人口減少により国内市場は2020年をピークに縮小する(人口オーナス)
・全労働力のうち48.9%が既に正社員以外の労働形態へ
・個人にとっての報酬源の多様化(仕事・生活×役務・モノ):仕事×役務ならクラウドワークス、生活×役務ならココナラ、生活×モノならメルカリなど

これらは20世紀的な「長期に保証された枠組み」の効果が急速に縮小し、個人や企業にとっての不確実性が増していることを示しています。

情報の流通が早まり、ある固定的な一つのやり方が通じる期間が非常に短くなっている中で、クラウドワークスでは不確実性の時代における組織戦略として、ソフトウェア開発の概念として知られている「アジャイル型組織」を全社において実行することを決め、2019年9月期は「Be Agile」というスローガンを掲げることにしました。
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■2.個人を指導する時代から、個人を認め高める時代へ


私がサラリーマン時代に受けたマネジメントは、「あなたは物事を知らない人」としての扱いでした。

例えば、
「あなたは、まだこの仕事の仕方を知らないから教えるね」
「あなたは、まだ考え方を知らないと思うので教えるね」
といったものでした。

ところが、クラウドワークスの組織スコアであるエンゲージメントサーベイでAAAを取っているマネージャー達へヒアリングを重ね、共通する傾向を導き出したところ、それとは真逆の傾向が見られました。

例えば、(相手が新卒であったとしても)
「あなたの考えたとおりに自由にやってみてください」
「わからなければ私なりの考えは持っているので聞いてください。その上で参考にしてもいいですし、自分の思うやり方でやってみても良いです」
といったものです。

エンゲージメントスコアAAAのマネージャーに共通した考え方として、
・目標の合意プロセスを経た上では、
・一人一人の手段は一切の制限無く自由を持たせる
というものがありました。
(これらはスクラム開発やアジャイルの考え方とも共通しています)

また「目標に対する考え方」も違いが見られました。

私がサラリーマン時代に受けたマネジメントでは、
「目標を達成したらあなたは認められる。達成しなければあなたは認められない」
といったものでした。

一方でAAAを取っているマネージャーたちの傾向は
「あなたは認められた存在であり、あなたが自分で考えたあらゆる手段を実行できる状態をサポートします。そこであなたがワクワクしていれば自然に目標も達成しているでしょう」
あるいは
「目標を達成することは大事ですが、それ以上に、自分の考えで試行錯誤することが大事です。それが当たり前になれば、自然に目標も達成されていくでしょう。」
といったものでした。

そして驚くべきことに、これらは実にエンジニアサイドやビジネスサイドといった職種の垣根が無く共通している傾向だったのです。
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■3.これからのマネジメントに必要な「組織の持続性」という観点


ビジネスサイドの中ではもちろん管理型のマネジメント、具体的には、目標を分解したKPIのロジックツリーを作り、マネージャーが1人1人のKPIを日次で管理して達成へ導くやり方で目標達成をしているチームもありました。

ではそれはクラウドワークスにおいてはどのように評価しているのでしょうか?

ここで重要な視点が「組織の持続性」という観点です。

目標へ向かう時に、社員一人一人レベルでのKPI管理のみに「手段を固定化し、全員を管理することは、成果をあげることはできるが、組織の持続性の点で疑問が残ると考えています。

クラウドワークスの中では、そのKPI管理についていけるメンバーが限られていること、そして、ついていけるメンバーも時として燃え尽きてしまうケースがあることなどがわかってきています。

※補足として重要なことは、エンゲージメントスコアAAAのマネージャーも全員がKPIのロジックツリーは持っていて、メンバーレベルでどうしたらよいかという仮説自体は持っています。

ですが、そのKPIマネジメントをメンバーに要求すること無く、手段を自分やチームで考えさせ、それをサポートして、手段が自由な状態を担保している、という点が大きく異なりました。

その中でメンバーが日次のKPI管理を選択するのももちろん自由です。手段が固定化されていないことが重要であり、特定の手段を否定するものではないことを追記しておきます。

【組織の持続性の観点から優れているセールスフォースのOhanaカルチャー】

ここで他社の例として、セールスフォースのOhanaカルチャーの事実を紹介します。

私がサンフランシスコでOhanaカルチャーに衝撃を受け、日本でも訪問してOhanaカルチャーだけを再度説明してもらったのですが、強烈な透明性とフィードバック文化を兼ね備えているものでした。

Salesforce の Ohana 文化
https://trailhead.salesforce.com/ja/modules/manage_the_sfdc_way_ohana

以下の"Why It’s Important for Companies to Embrace Culture"のくだり
https://trailhead.salesforce.com/content/learn/modules/manage_the_sfdc_way_ohana/msfw_ohana_culture_matters

私なりに要約すると、

「現代はインターネットにより透明性の時代となり、社員が不満を持った状態だとそれが外部に漏れる可能性が高くなっていて実際にYelp(日本で言う食べログ)を見て飲食店を選ぶように、Glassdoorを見て企業を選ぶようになっている。

また既存の社員もGlassdoorを見て、プライドを高めたり傷ついていたりする。魅力的な文化は、社員の体験を魅力的なものにして社員が誇りを持ち、その結果、ユーザーにもよりよい顧客体験を届けるようになる。

それらはGPTW(Great Place To Work、社員満足度調査の一つ)と株式市場のリターンの相関関係の事実としても証明されている」

といった流れかと思います。

つまり、メンバー1人1人のレベルまで徹底したKPIマネジメントを全社で固定的に行うような経営は、成果をあげられる可能性があるが、手段を固定化しているがゆえに「メンバーの体験を魅力的なものにしているか」という点では疑問が残り、メンバー一人一人が誇りを持てる仕事や組織としての持続性という観点からはネガティブに働く可能性がある、と現状では仮説立てています。

個人的に、この現段階の仮説は、これまでの私自身のビジネスキャリアの否定と感じるぐらいに衝撃的でした。

少なくとも営業(ビジネスサイド)については「体系だったやり方で全員が同じやり方をして拡大再生産することが有効な状況はあるはずだ」と私自身がまだ思っていたところがあるのですが、成果をあげていて、かつ、エンゲージメントスコアAAAのビジネスサイドのマネージャーが、スクラム開発やアジャイルと共通した「目標に合意したら手段はフリーである」といったやり方でマネジメントしていることに驚くとともに、20世紀的な日本企業のマネジメントが終わりを告げていることを痛感しました。
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■4.マネジメントにおける「当事者意識を持て」という言葉の死


「当事者意識を持て」この言葉は私自身何回というか何千回言ってきたかわかりません。

経営者としてメンバー間の意識の差に焦るたびに「当事者意識が重要だ」「当事者意識を持ってください」「当事者意識があれば変わる」「当事者意識を持てばわかるはず」と言ってきたと思っています。

ですが、ここ1年特にこの言葉に違和感を持っていて、その理由が最近わかりました。

「当事者意識を持て」という言葉は、現段階のメンバーの思考を否定するニュアンスを含んでいると感じています。今のあなたではなく、もっと意識を引き上げろ、もっと高みを目指せ、今のあなたよりもっとできるはずだ、というニュアンスですね。

それは高度経済成長期に未来という時間軸で働いていた時代の産物のように思います。未来のために今を否定する働き方、「当事者意識を持て」にはそういったニュアンスが含まれていると感じます。

「当事者意識を持つと幸せになれるが、当事者意識を持たないと幸せになれない」という条件付きの承認。

今の時代は未来が不確実である以上、現在という時間軸で今のメンバーを承認、肯定するマネジメントが求められているのだと考えています。

その意味において、今のあなたを否定するニュアンスを含む「当事者意識を持て」という言葉は死んだ、と感じています。

その中で先日、スターバックスの組織文化に触れる機会がありました。スターバックスのパートナー(働く人全員をこのように呼びます)全員に求めるスタースキルの最初の一文が「自信を保ち、さらに高める」であること、またスターバックスにおいてはパートナー全員を「学習者」と定義して、学習、つまり成長し続けることへの支援を約束していることに感動を覚えました。

A:「あなたは当事者意識を持ってください」
B:「あなたの学びや成長を支援させてください」

どうでしょうか、現在のあなたを承認し、力を持たせる言葉という意味ではBのほうが有効だと私は考えています。

■5.「Be Agile」我々は個の力を最大限活性化するアジャイル型組織を実現します


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・メンバーへ「当事者意識を持て」と伝えて意識を引き上げるのではなく、

・メンバーを承認し、自由を与えて力を引き出し、結果として「当事者意識を持っている」状態を導く

それがまさにアジャイル型組織の一つの要素であると考えています。
そしてこの組織戦略が情報の流通が早い現代における組織の持続性という観点でも有効であると確信を持っています。

ちなみにアジャイル型組織については、ハーバードビジネスレビュー2018年7月号特集「アジャイル人事」が詳しいので興味がある方はご一読ください。

018年7月号 目次 | 特集:アジャイル人事 俊敏な組織に進化する
http://www.dhbr.net/ud/backnumber/5b0f81ef77656132ca000000

クラウドワークスは創業当初から一貫して掲げている言葉があります。

「個の力を最大限活性化し、社会の発展と個人の幸せに貢献する」

これは時としてミッションになったり、ビジョンになったり、現在はバリューになっていますが、常に変わらない言葉として掲げています。

この1年のマネージャー合宿を通して導いたマネジメント仮説であるアジャイル型組織は必ずメンバー一人一人の承認から力を引き出し、それが結果として今後クラウドワークスが「個人のための新しい就業インフラ」となっていくことを確信しています。


2019年9月期のスローガンは「Be Agile」、この組織戦略を通して我々は日本社会で最も働く価値がある職場になろうと思います。


※絶賛人材募集中ですので、お気軽にエントリーください。個人の力を引き出す全く新しい組織の在り方を一緒に創りましょう。

Be Agileな組織で一緒に働き方革命を起こしませんか!
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