「自分の店を持ちたい」という夢の実現のため、調理師学校に通ったり修行したりすれば、飲食店開業はもうすぐです。では、飲食店を開業するにはどのような準備が必要なのでしょうか。今回は、飲食店開業の流れや開業資金の相場、必要な資格や届出・申請の一覧、飲食店開業で使える助成金・補助金などを紹介します。
目次
飲食店開業までの流れ
はじめに、飲食店を開業する流れについて紹介します。
①お店のコンセプトを決める
お店のコンセプトは、「どのような飲食店にするか」という根本的なテーマのことです。コンセプトをきちんと設計すれば、店名・内装・家具・立地・価格・営業時間など、さまざまな要素が決まっていきます。
例えば、ファミリー層向けのレストランを開業する場合、家族連れが訪れやすい価格や営業時間を設定し、子どもが楽しめるような景品・サービスを用意するなど、コンセプトをもとに「こんなお店にしたい」というイメージを具体化します。
②出店エリアを絞り、物件を探す
コンセプトが決まったら、出店エリアを絞り込んで物件を探します。物件の間取りによっては、必要な設備や席数を確保できないケースもあるため、施工業者に同行してもらい、希望どおりの内装工事を行えるか、費用はどれくらいかかるかなどを相談しましょう。
なお、物件探しは「資金調達の前段階」で行います。物件を確保していることを、資金調達を行う際の事業計画書に記載する必要があるためです。
③開業資金を調達する
資金調達を行う場合、まずは自己資金を用意し、不足分を融資で補うというケースが一般的です。開業資金を調達する際は、家族や親戚から借りる、民間の金融機関から融資を受ける、日本政策金融公庫の融資制度を利用する、といった方法があります。
飲食店の開業・経営で使える助成金・補助金については、記事後半で紹介しています。
④メニューを開発する
お店のコンセプトをもとに、提供する料理のラインアップやメニュー表のデザイン、レシピ表のマニュアルなどを作成します。目玉商品やサイドメニュー、トッピングの種類、それぞれの価格、調理の手順・使う分量などを具体化していきましょう。
なお、最初からメニューの種類を多くしてしまうと、想定よりも仕入れコストがかかったり、食材が廃棄になるリスクがあるため、メニューの品数は経営が軌道に乗ってから少しずつ追加していくほうが良いでしょう。
飲食店のメニュー開発(レシピ開発)のコツや注意点、外注する場合の費用相場などについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:レシピ開発で企業を活性化!費用の相場や注意点、主な外注先も紹介
⑤必要な資格を取得し、届出・申請を行う
飲食店を開業する場合、必要となる資格があります。また、飲食店の業態によって届出・申請の種類が異なるため、飲食店開業の事前準備としてそれぞれ取得・提出しましょう。
飲食店開業に必要な資格、届出・申請については、この後に詳しく紹介します。
飲食店を開業するために必要な資格
次に、飲食店開業に必要な資格について、それぞれの特徴や取得費用を紹介します。
食品衛生責任者 | 必要 |
防火管理者 | 必要 |
調理師免許 | 必要ではない |
食品衛生責任者
飲食店を開業する場合や、小売店を営業する場合、「食品衛生責任者」の資格が必要です。食品衛生責任者は店舗の衛生管理を行い、従業員に対して衛生管理について指導・管理する役目で、資格保持者を店舗に1名以上在籍させる必要があります。
資格取得には、都道府県が実施する講習会を受講する必要があり、費用は約1万円です。詳細については、最寄りの食品衛生協会(または保健所)に問い合わせて確認してください。
防火管理者
従業員を含めて収容人数が30名以上の店舗の場合、「防火管理者」の資格が必要です。日本防火・防災協会が実施する講習を受講すれば、資格を取得できます。
【防火管理者の講習の種類】
・甲種防火管理講習(延床面積300㎡以上の場合)
・乙種防火管理講習(延床面積300㎡未満の場合)
費用は7,000~8,000円程度で、講習期間は甲種が2日、乙種が1日です。詳細については、最寄りの消防署に問い合わせて確認してください。
調理師免許は必要ではない
意外に感じるかもしれませんが、飲食店を開業する際に「調理師免許」は必要ではありません。ただし、調理師免許は国家資格なので自店の信頼度が向上すること、調理師免許を取得している人は食品衛生責任者の講習が免除になるなど、取得するメリットがあります。
都道府県が実施する調理師試験に合格すれば、調理師免許を取得可能です。詳細については、調理技術技能センターの公式ページで確認してください。
飲食店の開業に必要な届出や申請
続いて、飲食店開業に必要な届出・申請をまとめて紹介します。
届出・申請の種類 | 必要なケース |
飲食店営業許可申請 | 飲食店を営業する場合 |
深夜酒類提供飲食店営業開始届出書 | 深夜0時以降も酒類を提供する場合 |
火を使用する設備等の設置届 | 火を使用する設備などを設置する場合 |
開業届/青色申告承認申請書 | 個人事業として飲食店を開業する場合 |
風俗営業許可申請 | 店内で接待行為を行う場合 |
菓子製造業許可申請 | パンやケーキなどを製造・販売する場合 |
各種保険の手続き | 従業員を雇う場合など |
飲食店営業許可申請
食品の調理や飲食する店を営業する場合、「飲食店営業許可申請」を保健所に提出する必要があります。提出期限は、店舗が完成する10日前までです。厨房機器、手洗い場などの設備面で細かな決まりがあるため、店舗の設計者と保健所に出向いて相談しましょう。
深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
深夜0時以降も酒類を提供する場合、「深夜酒類提供飲食店営業開始届」を警察署に提出する必要があります。届出書が受理された10日後から深夜営業を開始できるため、営業開始日の10日前までには申請しておきましょう。
火を使用する設備等の設置届
火を使用する設備(固体燃料を使用する炉など)を設置する場合、また建物や建物の一部を新たに使用する場合は、「火を使用する設備等の設置届」「防火対象設備使用開始届」を消防署に提出する必要があります。提出期限は、設備を店内に設置する7日前までです。
開業届/青色申告承認申請書
個人事業として飲食店を開業する場合、「個人事業の開業届出」を税務署に提出する必要があります。提出期限は、開業日から1カ月以内です。
また、最大65万円の控除を受けられる青色申告にする場合、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。提出期限は、開業日から2カ月以内です。
風俗営業許可申請
店内で接待行為を行う場合(スナック・キャバクラなどの社交飲食店を営業する場合)、公安委員会の許可を得なければならず、管轄する警察署に「風俗営業許可申請」を行う必要があります。認可されるまでに55日ほどかかるため、営業開始日の2か月前までには申請しておきましょう。
菓子製造業許可申請
パン・ケーキ・アメ菓子などを製造・販売する場合、「菓子製造業許可申請」を行い、保健所からの許可を得る必要があります。申請期限は、検査希望日の1週間前までです。食品衛生法に基づいており、違反した場合、2年以上の懲役(または200万円以下の罰金)が課せられるので注意しましょう。
各種保険の手続き
飲食店を開業し、従業員を雇う場合は「労災保険」と「雇用保険」の手続きが必要です。社会保険(健康保険など)の場合、法人は強制加入、個人は任意加入になります。
保険の種類 | 提出先 | 申請期限 |
労災保険 | 労働基準監督署 | 雇用日の翌日から10日以内 |
雇用保険 | ハローワーク | 被保険者となった日の翌月10日まで |
社会保険 | 事務センター | 雇用開始日から5日以内 |
そのほか、飲食店向けのPL保険(生産物賠償責任保険)もあります。PL保険は、製造・販売した商品などが原因で、他人の物を壊したり死傷させたりした場合の賠償金を補償する保険です。
例えば、自店が販売したメニューで食中毒が起きてしまった場合、多額の損害賠償を負うリスクがあるため、PL保険にも加入しておいたほうが安心でしょう。
飲食店開業資金の相場
お店の規模や業態、出店する場所、設備や内装のグレードなどによって異なりますが、飲食店の開業資金は1,000万円が相場です。居抜き物件でキッチンなどの設備をそのまま利用すれば、比較的少額でも開業することができます。
【飲食店の開業資金の内訳】
①運転資金(最低でも2~3カ月分の資金)
②設備資金(内装工事費、厨房機器の購入費、消耗品費など)
③不動産取得費用(前家賃、保証金、礼金、仲介手数料など)
店舗物件の場合、賃料の約10カ月分の保証金が必要で、これがもっとも大きな出費になります。出店エリアの不動産相場を確認し、賃料の目安を把握しておきましょう。
飲食店開業の際に使える助成金・補助金
ここでは、飲食店開業で使える助成金・補助金をいくつか紹介します。
助成金・補助金の種類 | 上限金額 |
創業助成金 | 最大400万円 |
小規模事業者持続化補助金 | 最大200万円 |
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 | 最大8,000万円 |
事業再構築補助金 | 最大6,000万円 |
そもそも助成金・補助金とは?
金融機関からの「融資」は返済する必要がありますが、助成金・補助金は返済義務がない「もらえるお金」です。ただし、定められた要件を満たす必要があり、申請期間も限られるため、よく調べたうえで必要な書類などを提出しましょう。
助成金・補助金は、開業希望者向けではなく、開業後の事業者が対象という場合が多い傾向にあります。そのため、飲食店の開業前に用意して進めること、開業後に補助金等のサポートを受けながら進めていくことを分けて、事業計画を立てると良いでしょう。
なお、助成金・補助金の申請は複雑な要件などがあるため、書類作成や手続き代行を行政書士へ外注するケースも少なくありません。行政書士に依頼できることや費用相場などについては、以下のページを参考にしてください。
関連記事:行政書士への依頼費用相場
創業補助金
創業助成金は、都内での創業(飲食店開業)に限定される助成金です。創業を予定している、もしくは創業して5年未満のうち一定条件を満たす場合、最大400万円が支給されます。詳細については、東京都創業NETのホームページで確認してください。
東京以外の道府県に関する創業者向け補助金・給付金については、以下のページにまとめてあります。
創業者向け補助金・給付金(都道府県別)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、日本商工会議所が運営している補助金制度です。商工会議所の管轄地域内の小規模事業者が対象となり、最大50万~200万円が支給されます。詳細については、小規模事業者持続化補助金のホームページで確認してください。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、新商品・サービスの開発や、設備投資などを支援するための補助金制度です。最大750万~8,000万円が支給されます。詳細については、ものづくり補助事業のホームページを確認してください。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、事業転換や新分野の展開、販路開拓などを行う事業者を対象とした補助金制度です。従業員数などによって補助金の金額が異なり、最大1,500万~6,000万円が支給されます。詳細については、事業再構築補助金のホームページを確認してください。
飲食店開業時に押さえておきたいポイント
自分のお店を開業・経営する際は、以下のようなポイントを押さえておきましょう。
店名の商標権を確認する
自店の店名を付ける際は、類似した店名が登録されていないかどうか特許庁のデータベースで事前に確認しましょう。オリジナルの店名であっても、すでに他店が商標登録をしていると商標侵害になってしまうためです。
なお、商標登録を行う場合、出願から11カ月ほどかかるため、開業準備の中でもとくに早めに行動に移す必要があります。
飲食店の収益構造を理解する
飲食店を経営する際は、原価計算や売上管理などのように数字を扱うシチュエーションが多くあります。自店の収益とコストを把握・管理しないと、得られるはずの利益を目減りさせてしまうため、飲食店の収益構造や原価率などをきちんと理解しておきましょう。
飲食店の収益構造や原価率の計算方法などについては、以下のページでまとめています。
関連記事:【メニュー別・業態別に解説】飲食店の原価率は?計算方法やコストダウンのコツも紹介
クレジットカードを作成しておく
会社員ではない場合、クレジットカードの審査に通らない可能性が考えられるため、個人名義のクレジットカードを開業前に作成しておきましょう。飲食店の開業後は、事業用のクレジットカードを作ります。プライベートとの支出を分けたほうが経理作業が楽になり、法人の確定申告などをスムーズに進められるためです。
飲食店の販促に役立つツール
自店の集客につなげるために、以下のような販促ツールを用意しておきましょう。
ホームページ
チラシやSNSなどでお店のオープンを知った人が、最初に検索して見るのがホームページです。まずは、無料ツールで自店のホームページを作成し、経営が軌道に乗ったらお金をかけてしっかりとした内容にリニューアルする方法がおすすめです。
ホームページに入れるべき内容や、作成での料金相場はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:飲食店のホームページは超重要!制作料金の相場やホームページに必須の内容も解説
SNSアカウント
Instagram、X(旧:Twitter)、FacebookなどのSNSアカウントを開設し、情報発信を行う方法もあります。スマホが普及している現代では、利用者からの口コミ拡散も期待でき、SNSを有効活用して集客力を高めることができます。
飲食店の公式SNSの運用代行(アカウント開設や投稿作業、コメントへの返信、広告運用など)を外注する方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
ポイントカード
飲食店では、固定客を増やすことが重要です。自店のファンを増やし、来店回数を上げるためにポイントカードやスタンプカードを用意するケースも少なくありません。リピート率を高めるための施策として、ポイント制・会員制サービスの導入を検討することも効果的です。
飲食店での集客イベントやキャンペーンのアイデアは、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:飲食店の集客方法とは?客数を増やすには何をするべきか徹底解説!
DMやチラシ
顧客リストを作成し、DM(ダイレクトメール)を通じて会員や見込み顧客にお得な情報やクーポンなどを配布する方法も有効です。また、自店の周辺住民や駅前など、人通りの多いところでチラシ配りをすれば、ネット情報が届かない高齢者世代もカバーできます。
チラシ作成のコツや作成方法はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:飲食店のチラシ作成のコツは?効果を高めるデザインや作成方法を解説
飲食店開業のサポートなら「クラウドワークス」へ
飲食店の開業・経営のサポートを依頼したい場合、クラウドソーシングサービス(※)を利用する方法がおすすめです。なかでも業界最大手の「クラウドワークス」は登録者数480万人を超えており、さまざまなスキル・実績を持つ人材が多数登録しています。
SNSマーケティングや販促ツールの導入、メディア運営代行など、飲食店の開業・経営に関する幅広い仕事を外注できます。飲食店コンサルタントに開業前のサポートを依頼したり、経営の悩みなどを相談してアドバイスを受けることも可能です。また、行政書士などの有資格者も探せるため、助成金・補助金などの申請代行を依頼することもできます。
【クラウドワークスの発注事例】
・飲食店のメディア運営代行:時給1,000~1,500円
・飲食店のホームページ制作:10万円~
・自店の公式SNSの運用代行:月額3万円~
・飲食店のコンサルティング、事業計画のアドバイス:要相談
・飲食店の補助金や助成金の申請代行:要相談
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